第八話 思い出話
私はとりあえず訪問したサーリャを家に上げた。
で、紅茶だったりパンだったりを出す。
「ねえ、サーリャ……なんでここがわかったの?」
私は本当に意味がわからなかった。
何故サーリャが足を運んだのか、ここがわかったのか。
それをまず聞きたかった。
「ラヴィオ様からルフィアが農業をしているって聞いて……それでここまで来たの。」
「ラヴィオ……余計なことしないでよ……」
私はサーリャからこのことを聞いて項垂れた。
それもそうだ、「ルナ・ヴァンビィ」という偽名が「ルフィア・ヴィスパーダ」だとバレてしまえば色々と面倒くさいことになるからだ。
位置的にはクレイスター村はフェミータ王国とは国境に位置している。
ただ、サーリャは悪いやつではないのでバラされることはないだろうけれども。
「まあ見ての通りよ、サーリャ。今はトマト農家の駆け出し。そのおかげで手もボロッボロのマメだらけよ。」
事実鍬を持って作業するだけでも慣れない身からしたらマメが出来るのは当然のことなのだが、今できる全てがこれしかないのだからある程度はへっちゃらだったりする。
国外追放と農業である程度メンタルは鍛えられたなとは思う。
「……フフッ、やっぱり……本当にルフィアは行動力が凄いわね。」
「ここ、何もないからやれることがそれくらいしかなかったってだけよ。」
「……学校にいたときもね……? 私、元々村娘で右も左もわからない時に……ルフィアは率先して助けてくれたじゃない。……色々心当たりはあるのかもしれない、でも……今の私があるのは貴女のおかげよルフィア。」
正直マシューがサーリャを選んだと聞いた時はビックリしたのだが、時折からかっていたくらいでサーリャとは別段と仲が悪いわけではないし、周囲の前で強がっていただけだったので、それが災いしたのはあるかもしれない。
それでお礼を言われるのはどこか照れ臭かった。
「……いや……皇太子妃に対する名誉毀損、だか何だかで……最終的には謂れのない国家転覆罪でここまで追放だから……今更どうこう言える立場じゃないわよ、私は……」
「本当に相変わらずね。その素直じゃないところも。」
「……というか……皇太子妃様がお忍びでなんでここまで来てるのか私はよく分からない。……アンタに限ってそんなことはないだろうけど……冷やかしかなにか?」
「……ちゃんとやれてるか心配でね、貴女が……元々メンタル的にはそんな強くないわけじゃない? ルフィアって。」
「う……まあメンタルが弱いのは認めるわ。……サーリャなりの気遣いってことで受け取っておくわ。」
「で、私からも聞きたいんだけど……なんで農業を始めたの?」
本題に来た。
冷やかしではないのはわかったのだが、なんで思い立ったのかは自分でも分からないが、少なくともフェミータ王国に負い目があったのだとは今はそう思っている。
「……そうね……どうせならフェミータ王国に貢献できる形で何か始めようって思ったのがキッカケよ。……それで国の人たちの胃袋を満たす方がいいかなー……って思って……それで市場まで行って一目惚れしたのがトマトだった、ってことよ。」
「やってて楽しい? 今までルフィアはそんなことしてなかったから心境的にどうなのかなーって。」
「楽しいけど……想像以上に大変ね、農業って。カラスとか来たら追い払わないといけないし……猪とか来ても大丈夫なように罠張ったりとかするし……で、肝心のトマトは去年小さくて上手くいかなかったし……苦労ばかりよ、でも……充実はしてる。」
それは事実としてある。
楽しいし、成長していくのを見るとやっていてよかったという実感はわく。
これを聞いたサーリャは笑っていた。
「フフ、本当に面白い人ね、ルフィア。本当に頑張ってね? 応援してるから。」
そう私に告げて、サーリャは私の家を後にした。
「さて……ガレキとか片付けるか……トマトも無事だし、アレさえどうにかすれば……」
私は台風で畑に飛んできたガレキを2時間掛けて撤去して行ったのだった。
次回、2年目の収穫。




