第六話 「絶対戻ってくるから!」
ラヴィオにハッパをかけられる回です。
また、ここでスパイアの兄貴の過去が明らかになります。
まさか貧民街でラヴィオと会うなど夢にも思っていなかった私はただただ呆然としていた。
そして、ラヴィオは私と会うなり、「落ちぶれたのか」と聞いてきた。
「落ちぶれてないわよ! 仕事でここにゴミを捨てに来たってくらいで!」
「ほう。仕事で、か。興味深いな。……して、どんな仕事だ? ルフィ。」
「道具屋よ、道具屋。」
こうなるとラヴィオは止まらないので、私はそういうところをラヴィオには直して欲しいとは思っていた。
にしても相変わらずだ。
「なるほど、出稼ぎ、と来るか。……別に金に困っているわけでもあるまい。」
「しゃーかーいーべーんーきょーうーーーーー!!! ……ハア………ホント呆れるわ、アンタのボケには……」
「社会勉強なんぞでわざわざ貧民街には来ないだろう? ……私が言えたことではないがな。……他にやっていることがあるのではないか? ルフィ。」
鋭い眼光になるラヴィオ。
こうなると流石に隠し事はできないし、昔のよしみだ、ラヴィオにはバラしといて損はないと私は判断した。
「……トマト農家よ、今やってるのは。……まだ始めたばかりだけどね。」
と、ラヴィオが吹き出した。
そして、お腹を押さえて笑い出している。
「ハハハハハ! 追放された令嬢がトマト農家とは!! 想像しただけで笑けてくる! ……すまないな、ルフィ。あまりにも、可笑しくてつい、な。」
「笑いたきゃ笑いなさいよラヴィオ……てかそういうアンタはなんでわざわざ貧民街なんかに来てんのよ……アンタこういう所来なかったじゃない、昔は。」
確かにラヴィオがわざわざ貧民街なんかに来る理由がない。
理由がなければ王族の人間がこんな治安の悪い所なんぞ来る理由がないのだから。
「最近ヴァルディアの治安が異様に悪くてな。……犯罪を一件でも減らすための実態調査だ。そのために軍隊長でもある私が来たのだが……まさかルフィと出会えるなんてな。」
と、ここでスパイアさんが私のところへ駆けつけてきた。
「おいおい……結構な修羅場だな。しかもフェミータの第二王子までいるたあ、どういう状況だ? ルナ。」
「あの……その人に、助けられて……」
と、ここで何かに気づいたのか、ラヴィオがスパイアさんに声を掛けた。
「……叔父上……何故、貴方がここに?」
お、叔父上?? スパイアさんがラヴィオの?? 確かに現皇太子のマシューとラヴィオは双子で、産まれた時系列の関係上でマシューが皇太子になっているのは事実だが、叔父がいたなどという話は聞いたことがなかった。
「なんだっていいじゃねーかよ……コイツの研修だ、研修。あと、俺のトマト栽培の弟子だ。」
「なるほど、無策でルフィが農業を始めたわけではないのですね。安心しました。」
確かにスパイアさんに掛け合って知識を習得したのは間違いないのではあるが、弟子と思ってくれていることには本当に感慨深かった。
「ラヴィオ……コイツは本気だ。その内フェミータにも名を轟かせる農家になるだろうさ。」
「それは楽しみです。」
「ホラ、いくぞルナ……店長のジジイに叱られっからな。」
「は、ハイ!」
私がスパイアさんのところに駆け寄った時、ラヴィオが私に声を掛けた。
「ルフィ……どうしてもフェミータへ戻りたくば本気でやってこい。私も立場がある故手伝いには行けない。だが、お前ならやれるはずだ、ルフィ。お前の冤罪を晴らす動きも私がやっておく。……戻った時の環境は整えてやる、だからお前も全力でやれ。……この私が選んだ女だからな。」
環境を整えてくれるというのが有難い話ではあるが、売れるかどうかの世界で甘えなど要らない。
ハッパをかけられちゃ、元・名家の名が廃ると私は思った。
「ラヴィオ……!! 私! 絶対成功して戻ってくるから!!」
ラヴィオは口角を上げ、右拳を前に突き出した。
頑張れ、という合図なのは見てとれた。
そして、私とスパイアさんは貧民街を立ち去った。
そんなこんなで夜8時。
仕事も終わり、帰宅していく途中、スパイアさんにこんなことを私は聞いた。
「……王族の貴方が……なんでバナード山で農業をやられているんですか……??」
「……俺はアイツらが産まれる前からあの地で農業をやっていた。……だがな、10年前だ。フェミータの異民族、って知ってるだろ? 野蛮で有名な。」
「……『プリオ族』のことですか?」
「そうだ。俺はそいつらと結託して反乱を起こしたが……見事に鎮圧されちまってな。それで俺は『国外永久追放処分』さ。まあ俺に子供はいなかったからそこはぶっちゃけトマト栽培に専念出来るからよかったけどな。」
ただ、マシューやラヴィオが会いにくるという事実を知った以上、気に掛けられているというのは分かる。
境遇は多少違えど、スパイアさんもワケありでどこかホッとしているところは私にはあった。
「まあだが……お前に教える気になったのは……なんだろうな、プライドを捨てに来たやつに見えたから手を貸しただけにすぎないさ。……昔はこんなんじゃ、なかったんだが、出来心ってやつかな。」
確かに物凄い気にかけてもらっているし、期待されているのも分かる。
だからこそ、不甲斐ないとも思うし、情けないとすら思う。
「あと、仕事もバンバン入れているからな。この時期は。……トマトは作れねえかもしれねえが、その間に手順をイメージしておけ。出来た時の感じもな。」
「ハイ!」
こうして、私はスパイアさんのところに付いて、社会の仕組みだったり、販売員として徐々に経験を積んでいき、畑の土にも徐々に肥料撒きという手を加えることになるのだった。
ここでプリオ族の解説を。
上半身裸の腰巻きだけという戦闘民族です。(女は最低限の上は下着のようなものを着用しています。)
性格はとにかく凶暴且つ粗暴、まともに戦っても一方的に嬲られます。
ただ、基本的に学がないので、罠には滅法弱いですww
次回、また農業パートです。




