第五話 皇太子弟「ラヴィオ・バレンツァ」
タイトルにもあるラヴィオ、彼は今後ルフィアにとって重要人物になってきます。
それがトマト作りにどう影響があるのか、とは思いますが、ルフィアがどう行動するのかご注目ください。
私はスパイアさんと街に出かけた。
今私が住んでいるクレイスターとはかなり離れている場所にスパイアさんの職場がある、とのことだ。
その街の名は「ヴァルディア」。
街並みは全体的に白く、見栄えが良い街なのではあるが、裏の顔も当然持っている。
そう、貧民街だ。
※以降、貧民街は《スラム》と読みます、ご了承ください。
ここの外れには治安の悪い場所があり、裏取引や犯罪が年に100件以上も横行、警備隊もマフィアに買収されているため、殆ど機能していない状態だ。
仕事で行くとはいえ、大丈夫なのだろうか、という不安はよぎる。
何せ数ヶ月前にフェミータ王国を追放され、都落ちした私だ、迂闊に踏み込めば犯罪に巻き込まれる可能性は高かった。
そんなこんなで馬を使って送ってもらったので、割とそんな時間は掛からなかった。
到着した仕事場は、道具屋という話ではあったが、村の市場で農具を買った時とは比べ物にならないほど品質管理が良く、中古ではあろうが、今でも使えそうな物ばかりだった。
販売員として、私は仕事をすることになった。
業務開始から2時間後、店長からゴミ捨てを頼まれて、私はゴミ袋を持った。
しかし、どこに行けばいいのかが検討もつかないので、スパイアさんと共に捨てに行くことになった。
その道中にて、私はどこへ捨てに行くのかスパイアさんに聞いた。
「……何方までお捨てになられるのですか?」
「……貧民街だ。」
多少予想していたとはいえ、貧民街に捨てに行くなど危険極まりない。
特に女を連れていれば、まず間違いなく襲ってくる輩はいる。
「……貧民街……ですか……」
「……そんな心配するようなことじゃねえよ、ルナ。………第一俺は貧民街では顔はいい意味で通ってる。だから俺が引きつけているうちに捨てに行け。」
「……分かりました。」
「どのみち貧民街には農業で使えるものが少ねえ。ただゴミを捨てに行くだけだ。」
そうして5分もしないうちに貧民街の入り口に到着した。
「おー、スパイアのアニキじゃねえっすか! 久しぶりっすねぇ!!」
……と、貧民街へ入った直後、ガラの悪そうな男が陽気にスパイアさんに声を掛けた。
なるほど、こういうことか、私はそう思った。
そして、会話している隙にいそいそとゴミを捨てに行った。
「しっかし、あの子なんなんですかい? アニキと一緒に付いてって行ってやしたけど。」
男は相変わらずスパイアさんと世間話に浸っているようだった。
「……俺の弟子だ。」
「ほあー、あんな子が弟子、ですかい! そりゃまた大変なワケありって奴ですかい。この辺じゃ見ない見た目でありやすからねえ。」
確かにこの男の言う通りだ。
何せ中央から追放されてきたのだから、貧民街で見るような目付きの悪い見た目なんてしていない。
彼らにとっては本来なら都落ちした元令嬢の私など、格好のカモなのだが、スパイアさんが顔を効かせてくれているお陰で今のところは順調にゴミ捨てをすることが出来ている。
「ワケありってんなら、実際俺もそうだからな。……アイツにはどうも他人事には思えねえから手助けしてやってるだけさ。」
他人事には思えない? どういうことだろう? 私は運良く近くの方でゴミ捨てをしていたので聞き耳を立てていて会話を聞いていた。
「……アニキ、気いつけてくだせえよ? ……最近、俺たちでも敵わねえ奴がココに入り込んできてやすから。あの子を護ってやってくだせえよ?」
「そんなことは重々承知済みだ。じゃあな。」
といい、足早に男の元を立ち去って行ったスパイアさんなのだった。
業務用のマスクはしているとはいえ、慣れない貧民街の臭いだ、とても臭い。
薬品だの、腐敗されたものなど、多種多様の嫌なものがこの街には詰まっている。
そう思わざるを得なかった。
その奥の方まで頼む、と言われた私は、そこまでゴミを捨てに行った直後だった。
スパイアさんではない、男に声を掛けられた。
「お前……『ルフィア・ヴィスパーダ』だな?」
私はこの言葉に動揺を隠せなかったが、こう、はぐらかす。
「さ……さあ? ひ、人違い……では?」
焦っているのがバレバレだ。
マズイと思った瞬間、5人の男に囲まれた。
コイツの仲間だろうか。
「貧民街でこんないい格好をしてるやつはいねえからなあ……? 野郎ども、コイツから服を剥ぎ取っちまえ。」
と、男が指示した通り、部下の男たちが襲ってくる。
逃げようにも袋小路だ、私はゴミ袋を投げて抵抗したが他勢に無勢だ、なす術もなく押し倒されてしまった。
尚も悲鳴を上げ、暴れて抵抗する私だったが、最早貞操が奪われるのも時間の問題だった。
これまでか、と思われたその時。
「いくら貧民街とはいえ、女に暴行はいただけんな。」
私にとっては聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声にリーダー格の男は過剰に反応した。
「あぁ!? なんだ、テメエ!!」
といい、その声の主に殴りかかった。
すると次の瞬間。
右のハイスピンキックがリーダーの男の顎にクリーンヒットし、男は仰向けに大の字になって地面に転がった。
それを見た部下の男たちは、
「に……逃げろーーーー!!!」
といい、一目散に逃げ出したのだった。
「大丈夫だったか?」
聞き覚えのある声と、先程私は言ったが、聞き覚えのあるも何も、私とかなり関係が深い人物だったからだ。
「なんで……アンタがここに居るのよ……ラヴィオ……」
それもそのはず、私の「元・婚約者」で、「皇太子・マシュー・バレンツァ」の弟で、フェミータ王国第二王子「ラヴィオ・バレンツァ」がそこにいたのだから。
「それは私が聞きたい、ルフィ。……お前はここまで落ちぶれたのか?」
……ラヴィオは私に冗談混じりでそう聞いてきた。
私の追放と同時に婚約は破棄されたのだが、何故国でも偉い立場に居るはずの彼がこんな貧民街にいるのか、全く分からなかった私なのだった。
この超絶美形の王子との再会が、後に私の運命が大きく変わるキッカケになるのだった。
こういった人間ドラマも追放物ならではだと、僕は思いますwww
実際ラヴィオは「フェミータ王国最強の武力」を持つ男ですからね。
次回、もっと展開を動かしていきます。




