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リュユージュがベネディクトの主眼で在る様に、アリュミーナもまたルーヴィンの筆頭従者なのだ。
聖戦の折、世界宗教 ヴェラクルース神使教の宗主として君臨していた国師、ルーヴィンとベネディクトの祖父であるジークフリート・クロイツァーは、一切抗う事はせず、速やかにダーヴィッドに膝を折った。
全ての信者と属国の、生命・自由・平等などの基本的人権の保証を条件に。
ルード家は、遥か往昔よりクロイツァー家に忠義を尽くして来た従属血族の一つである。
その息女であるアリュミーナは、神に最も近い存在である国師に仕えし清らかなる聖女として、世界中の信者から崇められている存在なのだ。
故に、状況によっては軽々しく彼女に触れただけで罪に問われる場合もある。
リュユージュはカップが跳ね上がる程、右手でテーブルを強く叩いた。
「君は馬鹿か?立場をわきまえろ!」
「分かっております!私はどんな懲戒でも受けるわ!」
その怒声にも負けない程に、アリュミーナは毅然たる態度で言い返す。
彼女は乗り出した体を元に戻し、大きく息を吐いて感情を落ち着けると、説明を続けた。
「城下町は凄く込み合っていて全く身動きが取れず、引き返そうにも出来なかったんです。」
雪崩を打った様な人々の流れに逆らう事を諦め、アリュミーナは暫くの間その場に留まる事にした。
するとその時、再び群衆から喝采が沸き上がった。
一生懸命に爪先で立ち、人々の隙間からどうにか様子を見た。
「喝采は最後尾の貴方へのものだったわ、レオンハルト。だからせめて貴方に祝福を、と思って。」
彼女は壁際で直立不動の姿勢を取っているレオンハルトに、視線を向けた。




