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(ファーブラ・フィクタイズム4)【エーウェントゥス・アウディーティオ】プロローグ編  作者: 羽絶 与鎮果


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プロローグ編006/【井上 笑媛(いのうえ えひめ)】と仇

 パシャッ、

 パシャパシャッ、

 パシャパシャパシャパシャ、

 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ、

 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ・・・

「はい、【笑媛ちゃん】、こっち向いて~」

 パシャッ、

 パシャパシャッ、

 パシャパシャパシャパシャ、

 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ、

 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ・・・

「はい、じゃあ、あっちの方向いて見ようか?」

 パシャッ、

 パシャパシャッ、

 パシャパシャパシャパシャ、

 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ、

 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ・・・

 カメラのシャッター音が鳴り響く。

 カメラのレンズの前に居るのは、1人の少女だ。

 彼女はスターモードの【プロクエスター】として売り出し中の少女【井上(いのうえ) 笑媛(えひめ)】だ。

 スターモードでは【俳優】の様なこともする。

 そこで【女優】としての才能を開花して、演技力が評価されて話題になり、今、プロモーション用の写真を撮られているのだ。

 一通り撮り終えた後、

「はい、お疲れ様。

 【笑媛ちゃん】、すっごく良かったよ」

 とチーフカメラマンが言った。

 【笑媛】は、

「はい。

 ありがとうございました。

 また、よろしくお願いします」

 と丁寧に挨拶し、その場を後にする。

 満面の笑みでされたのでカメラマン達もご機嫌だった。

 もちろん、満面の笑みは作り笑いだ。

 彼女は自己暗示により、心から笑うと言う技術も身につけている。

 例え、内側にドロドロした感情を持っていたとしてもそれをおくびにも出さずに、天使の笑顔を振りまいている。

 彼女は、憑依型の演者でもある。

 腸が煮えくりかえって居ても微笑む事が出来るし、

 くだらないと思っていても感動の涙を流す事が出来る。

 憎む相手に抱擁することだって出来る。

 全ては復讐のため。

 仇を殺すためなら彼女は何でもやる。

 彼女は復讐鬼。

 目的を果たすためなら、悪事にも手を染める。

 彼女は【プロクエスター】をやりながら、一族の仇を探している。

 彼女は天涯孤独の身だ。

 家族はおろか、一族は彼女以外、全員、無惨に殺されている。

 そして、トップ女優とは不釣り合いと言われながらも彼女が唯一愛した20才以上年上の夫となるはずだった男性も・・・

 彼女はそれで本名である【大槻(おおつき) 笑姫(えひめ)】では無く、愛した男性の姓である【井上】を名乗る様になった。

(私は【井上 笑媛】。

 私は、【井上(いのうえ) 祥吉(しょうきち)】の妻として生きていく。

 私は未亡人。

 私は、【祥吉】の妻になっていた)

 と思っているが、実際には結婚していない。

 彼女が優しかった、【祥吉】の妻として生きていく事を選んだのだ。

 【祥吉】はもう居ない。

 惨殺されてしまった。

 犯人は複数名。

 証拠品は警察にあるが、それを全て警察が押収する前に確認している。

 一族でただ1人生き残った彼女は愛する男と一族を皆殺しにした犯人達を殺す事しか考えていない。

 【笑媛】の名前には【笑顔】の【笑】があるのに、彼女の心は【憎悪】の【憎】が根付いている。

 【笑媛】は、

(必ず全員見つけ出して殺してやる。

 1人も逃がさない。

 私の一族を殺したこと。

 そして、私が生涯でただ1人愛するあの人を殺したこと・・・

 たっぷりと後悔させてやる・・・)

 と思いながら、

「よろしくお願いしますぅ~」

 と愛想笑いを浮かべている。

 それは全く嘘くさくない。

 心から思っている様に見える。

 彼女は【心でウソが付ける女優】である。

 【役】に【憑依】する事により、いくらでも自分にウソが付けるのだ。

 その奥底にどす黒い復讐を想い描きながら。

 彼女は今日も演じ続ける。

 そして、彼女の復讐心は【吟侍】の眼鏡に叶っていた。

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