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(ファーブラ・フィクタイズム4)【エーウェントゥス・アウディーティオ】プロローグ編  作者: 羽絶 与鎮果


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プロローグ編005/【田村 写樂(たむら しゃらく)】と元戦友

「よぉ、元気でやってるか?」

 男性が声を掛けてきた。

 話しかけられた男性の名前は、【田村(たむら) 写樂(しゃらく)】。

 話しかけて来たのは【写樂】の元戦友【磯村(いそむら) 周作(しゅうさく)】だ。

 【写樂】は、

「まぁ、細々とやっていますよ」

 と答えた。

 【周作】は、

「細々ねぇ・・・

 あの【戦場の極悪夢(きょくあくむ)】と言われた【写樂殿】がねぇ・・・」

 と言った。

 【戦場の極悪夢】・・・

 それはどういう意味か?

 それは絶対不利とされた戦場をたった1人でひっくり返す事から付いた【写樂】の異名である。

 【周作】は【写樂】と共に戦場に居て何度、命を拾ったかわからない。

 【周作】にとって【写樂】は返しても返しきれない大恩ある恩人だった。

 だから、【写樂】は評価されて然るべきと考えていた。

 だが、【写樂】は、【軍】を退いた。

 出世する事を自ら拒否し、【世捨て人】の様に暮らす事を選んだのだ。

 何がそうさせたか?

 それは正義と信じていた【軍】のあり方に疑問を覚えたからだ。

 正義と思っていたことが正義では無かった。

 少年兵として今までやって来た【写樂】は、疑問に思った。

 彼が所属していた【軍】では、手柄は譲渡する事が出来た。

 【写樂】は自分が築き上げた数多の戦果を【周作】や、他の戦友達に分配し、彼は軍を去ったのだ。

 とはいえ、奪ってしまった命の事を思うと、自分の出来る範囲で償いを行いたいと思い、ボランティアなどに参加し、日々を過ごしている。

 そんな彼を心配して、【周作】は訪れたのだ。

 【周作】は、

「【写樂殿】・・・

 【軍】に戻るつもりはないのか?」

 と聞いた。

 【写樂】は、

「えぇ・・・

 残りの人生は奪ってしまった命に対して、少しでも償えると思える事をしたいと思っています。

 自分は、余生はそれで良いと思っています。

 いや、良くはないか。

 残りの人生で何処まで償えるか・・・」

 と言う。

 【周作】は、

「貴殿は忘れている。

 奪ってしまった命もあるだろうが、救われた命はそれ以上にある。

 貴殿は多くの者に感謝されているのだ。

 それを忘れて欲しくはない。

 貴殿がやった事を否定すると言う事は救われた命も否定すると言う事に他ならない。

 【軍】のやり方に疑問を持つのは仕方がない。

 どの存在も完全正義など無い。

 どこかしら不正はあるのが常だ。

 だが、一部の不正に目を向けて多くを見ないのは間違っている。

 これだけはわかって欲しい。

 貴殿を必要としている者は多いのだ。

 貴殿の力を使わないのは私は罪だと思っている。

 そして、貴殿が正統に評価されないのも。

 私達、貴殿から手柄を譲り受けた者は皆、貰ったとは思って居ない。

 貴殿が軍に復隊した時、貴殿に返すために一時的に預かっている。

 そう思っているのだ。

 貴殿は、若かった。

 若かった故に、少しの不正が見過ごせなかった。

 だから、世の中を見てくると良い。

 世の中をしかと見て、それで、自分のあり方を模索しなさい。

 年長者として私が言えるのはそれだけだ。

 【クエスター】・・・

 【冒険者】の事をそう言うらしい。

 それで、自分を見つめ直すと良い」

 と言った。

 【写樂】は、困った様な笑みを浮かべ、

「かたじけない。

 忠告、承る」

 と答えたのだった。

 世捨て人、【写樂】。

 彼もまた、【吟侍】の後継者の1人である。

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