プロローグ編042/【田村 写樂(たむら しゃらく)サイト0】/写樂の事件簿8
翌朝、【汐音】は、
「ありがとうございます。
まさか、生き残る方がいらしたなんて・・・」
とお礼をした。
彼女には影が薄く付いている。
恐らく【一影】の分だろう。
彼女の影が濃くなった時、全てが終わると言う事を意味していると言う事だ。
【写樂】は、
「一番、濃い影を倒したら【夫婦】になってくれると言う約束・・・
自分にも適応されるでしょうか?
・・・どうやら、自分は貴女に惚れてしまったらしい。
付き合っても居ないのになんだと思われるかも知れないが、一緒になれないだろうか?」
と言った。
【汐音】は、
「私で・・・よろしいのですか?」
と尋ねた。
【写樂】は、
「貴女が良いのです」
と笑いかけた。
「でも、私は・・・
町中から嫌われて・・・」
「それなら自分も同様です。
自分は戦場でたくさんの命を奪ってきましたから。
恐らく多くの人間に恨まれているでしょう。
自分はそれでも人のために生きようと思っています。
どうか、それを共にしていただけないでしょうか?」
「私、出来ますでしょうか?」
「わかりません。
自分も出来るかどうかわからず、出来ることだけでもと思ってやっております。
それで良いのではないでしょうか?
どうせ、人には疎まれているのです。
自分達の自己満足で少し良いことが出来たなら、少しだけ徳を積む事も出来るかと・・・
自分はそう思います。
共に歩んではいただけませんか?」
「はい。
ふつつか者ですが・・・
あ、でも影は後、6つもありますし」
「大丈夫ですよ。
自分が全て斬りますので。
自分は異能を理解すると斬る事が出来る力を持っております。
訳あって、【芦柄 吟侍殿】と呼ばれる方の【後継者】となっておりますが、これを次の【後継者】に譲渡せねばなりません。
それまでは死ねませんよ。
だから何が何でも生きてやります。
もちろん、貴女も死なせません。
今まで倒せなかった【一影】も倒せたのです。
【二影】だろうが、【三影】だろうが一緒です。
大船に乗ったつもりでいて下さい。
ところで【二影】が出るのは何時ですか?
今夜も出ますか?」
「ごめんなさい。
わかりません。
・・・知らないのです。
私の影が倒されたのは昨夜が初めてですので。
私は突然、【影殺姫】になったので、事情が全くわからないのです」
「そうですか。
わかりました。
無理な質問をして申し訳ありませんでした。
今夜も様子を見ましょう」
と言う話になった。
だが、この夜は黄色い月が出ていた。
赤い月にならないと出てこないため、今夜は出てこないと言う事だろう。
それを良しとして、【写樂】と【汐音】は初めて肌を重ねたのだった。
お互い感じる相手の体温。
熱い夜だった。
翌日も月は赤くならなかったため、今夜も【二影】は出てこない。
この日は身体を重ねたが添い寝という事になった。
そしてその翌日に、月の色が変わった。
【赤】・・・では無い。
【青】だった。
【青い月】と共に、【二影】が現れる。
【写樂】は、
「出たな【二影】・・・
今夜はお前の番だ。
倒させてもらうぞ」
と啖呵を切った。
【二影】の【異能】は2つあるはずだ。
1つでは無いので注意が必要だ。
1つはすぐに解った。
【重力】だ。
【重力】を何倍に・・・
と言う単純な話ではない。
場所によっては【重力】が軽く、
場所によっては【重力】が重く、
なっているため、自分の動きに予想が付けられない。
これでは下手に動けない。
それに加えてもう1つ。
それは、【動物の魂を持った火】だ。
【炎】が生きた動物の様に動くため、予想が付きにくいのだ。
この2つの厄介な【異能】が【二影】の力となる。
【写樂】は、
「【はの型】/【歯車斬り】」
と言うと、2つの異能を一辺に斬った。
と、同時に【二影】も薄くなり、消えて、【汐音】の影がまた少し濃くなった。
【写樂】は、
「これで2つ。
後、5つ・・・」
とつぶやいた。
その声には少し不安が混じっていた。
それは、【二影】の強さが思ったよりもあった事だ。
【三影】以降はもっと強くなる。
それで、【七影】まで自分は勝てるのか?
そう言う不安である。




