プロローグ編034/【田村 写樂(たむら しゃらく)サイト0】/細々と生きる主人公
【田村 写樂】は、【芦柄 吟侍】の【後継者】の1人であり、【主人公権】を貰っている。
だが、彼は、この権利を誰かに【譲渡】するつもりでいる。
彼は、【戦場の極悪夢】と呼ばれ、戦場で余りにも多くの人命を奪っている。
その罪を背負って生きている。
今更、【主人公】になどなるつもりはない。
他に人材が居なかったと考えているから、【吟侍の後継者】と言う事を引き受けたが、忙しい【吟侍】の代わりにそれに相応しいと認められる者を見つけたら、その者に【譲渡】し、世捨て人に戻るつもりで居る。
それに自分の身体の事は自分がよくわかっている。
彼の身体は戦場での戦闘が原因で壊れている。
これ以上、強くはなれない。
後は衰えて行くのみである。
【吟侍】は言っていた。
「この世界の【主人公権】が一番脆い」
と。
つまり、【主人公】となれる者は確定的では無いと言う事だ。
だからこそ、【主人公】らしさというのが求められる。
【吟侍】は今より強くなると言う可能性よりも、人柄を見て、【写樂】に【後継者】の権利を託したのだ。
だからこそ、【写樂】は、次の【後継者】を見定めて、引き継ごうと思っていた。
だが、現時点で、【後継者】を拝命している以上、何もしないと言う事は【吟侍】の名を貶める事にもつながり兼ねない。
そこで、微力ながら、【後継者】を見つけるまで、目についた困り事を自分なりに解決する様、心がける事にしていた。
元戦友に【クエスター】になる事を勧められていたが、なるつもりはない。
華々しく【クエスター】として活躍するつもりはない。
ただ、目の前の問題を解決出来れば、それでいい。
自分は細々と生きるだけだ。
彼はそう、考えていた。
そして、【写樂】は、困った顔の男性に声をかけ、
「お困りですか?
自分で良ければ話を聞きますが?」
と声を掛けた。
男性は、
「・・・ありがとうございます。
もう、藁にも縋る思いで・・・
誰にも頼れないのです。
愚痴だけでも聞いていただければ少し落ち着きます。
話してもよろしいですか?」
と言って、身の上話をし始めた。
男性によると、
「娘が・・・
魅入られていまして・・・
怪しい男が描く、【呪画】に・・・」
と言った。
【写樂】が、
「【呪画】・・・」
とつぶやくと、男性は、
「はい。
【呪画】です。
呪われた【絵】です。
女達を虜にしていく・・・」
と答えた。
「呪いを解く方法は?」
「わかりません。
ただ、高名な導師様のお話だと、【呪画】は、斬ればただの【絵】になるそうです。
あくまでも斬れればの話ですが・・・
【呪画】は、得体の知れない力に守られているそうです。
ただの【刀剣】などでは斬れないと・・・」
「そう・・・ですか・・・
自分が出来るかどうかはわかりません・・・
ですが、こうしてお話を聞かせていただいたのも何かのご縁だと思います。
試しに斬らせていただいてよろしいでしょうか?」
「斬ってくださるのですか?
斬れるのですか?」
「斬れるかどうかはわかりません。
ただ、自分は戦場に長くいたので、【刀剣】の扱いには慣れております。
そして、【人外】を斬る術も多少は・・・」
「お願いします。
斬ってください。
お礼なら何でもします。
ですから・・・」
「お礼は結構です。
上手く行くとは限りませんし・・・
ただ、このまま見過ごすのも忍びないので・・・」
「ありがとうございます。
ありがとうございます。
ありがとうございます」
と言う話になった。
【写樂】は、【呪いの絵】くらいなら今の自分でも何とか斬れる。
そう、思っていた。
だが、これはそもそも【呪画】では無かった。
そこに問題があったのだった。




