プロローグ編035/【田村 写樂(たむら しゃらく)サイト0】/写樂の事件簿1
【写樂】は、男性の家に招かれた。
そこには、男性が【呪画】だと思っている【男の絵】が飾られていた。
【写樂】はその絵を見て、
「これは・・・
【呪画】ではない?」
と言った。
男性は、
「ど、どういう事でしょうか?」
と尋ねる。
【写樂】は、
「貴方が【呪画】だと思った原因はこの【絵】そのものにあります。
娘さんが、この【絵】の虜になったと思ったら、原因はそこにあると思うのは当然だと思います。
そこに盲点があります。
一見、呪いの品だと思われる【絵】がある事で、呪いは【絵自体】にあると思われがちですが、これは言ってみれば、娘さんを惑わせている存在が、ただ描いて娘さんに渡したものに過ぎません。
暗示の様なもので、娘さんがこの【絵】の虜になる様に思わせているだけでしょう。
娘さんの状態の元凶はそこにはありません。
娘さんをここに連れてきてください。
娘さんの魂は恐らく抜き取られていてその身体には無いと思われます。
娘さんの肉体に霊などを憑依させて、娘さんが、【絵】の虜になっている様に見せかけて、動かしているに過ぎないでしょう。
虜になっている状態を演じさせれば、多少の違和感は隠せます。
それで貴方も娘さんの魂が無い事に気付かなかったのでしょう。
原因はこの【絵】にはありません。
これはただの【絵】です。
本当の事を隠すために用いられた【トリックのための道具】に過ぎません」
と言った。
「む、娘は・・・
娘は助かるのでしょうか?」
「まずは、娘さんの身体を見せてください。
助かるかどうかは状態を見てみないと。
ですが、娘さんの身体が動いていると言う事はまだ最悪の状態ではないと思われます」
「ホントですか?」
「本当です・・・と言いたい所ですが、あくまでも自分の知識だけの情報ではです。
自分の知らない事はたくさんあります。
だから必ずしもそうだとは断言出来ません。
申し訳ない・・・」
「お願いします。
娘を助けてください。
謎を解いてください。
お願いします・・・
お願いします・・・
お願いします・・・」
「出来る限りの事はさせていただきます。
まずは、落ち着いて・・・」
と言う話をした。
【写樂】としても必ず助けられると言う訳ではない。
失敗し、依頼者や警護対象を死なせてしまう事だってある。
だからと言って手を出さない訳には行かない。
助けられる可能性が少しでもあるのなら、手を差し伸べる。
それが、戦場で奪ってしまった命に対する僅かながらの償いにでもなれば・・・
彼はそう、思っていた。
男性は娘を連れてきた。
【写樂】は、
「なるほど・・・」
とつぶやいた。
どうやら、今回は【写樂】の知識内でおさまる案件になりそうだと安堵した。
時には、助けたつもりが、
「この人殺し。
息子を返せ」
と罵られる事もあった。
それでも、助けられる可能性があるのなら、贖罪の気持ちで、手を差し伸べる。
それが、【写樂】と言う【後継者】である。
男性は、
「どうにかなりそうですか?」
と尋ねた。
【写樂】は、
「ぬか喜びをさせても申し訳ないので何とも言えませんが、お助けする事が出来る可能性は少し高くなったかも知れません。
あくまでも自分が理解出来る事だったらの話ですが・・・」
と言って少しでも男性に安心してもらえる様に微笑んだ。
今やれる事をやるしかない。
手持ちのもので事足りるか?
それはいつも不安である。
助けられる命を取りこぼしてしまうのでは無いか。
そんな不安にいつも押しつぶされそうになる。
誰かの命を奪うのは簡単だ。
心臓や脳を潰せば、大体の生き物は死ぬ。
だが、人を助けるのは並大抵の事では成立しない。
何か致命的なミスを1つでもやっていたら本来生きていたかも知れない命は儚く消え去る。
そう思うと怖くてたまらない。
誰かを殺す事よりも誰かを守る事の方が何倍も勇気がいる。
だからこそ、尊い。
戦場を引退して、【写樂】はそれを学んだ。
(死なせない。
絶対に死なせるもんか・・・)
彼は今回もそう、誓ったのだった。




