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(ファーブラ・フィクタイズム4)【エーウェントゥス・アウディーティオ】プロローグ編  作者: 羽絶 与鎮果


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プロローグ編015/復讐鬼【井上 笑媛】

 【井上 笑媛】は復讐のためならば、何でも使う。

 何でもだ。

 例えば、【主人公】としての立場、【芦柄 吟侍の後継者】としての立場もだ。

 【笑媛】は、【橋田(はしだ) 一樹(いつき)】と言う男に近づいた。

 この男は、直接の【祥吉】の仇では無いのはわかっている。

 ただ、【大槻家】の襲撃のための情報を流した男だと言うのもわかっている。

 あの惨殺のきっかけの1つを作った男。

 それだけで、復讐の対象としては十分だ。

 【笑媛】は、

「ねぇ、貴方・・・

 私って綺麗?」

 と声をかけた。

 【一樹】は、

「そりゃ、君は、天下の若手の超有望株と言われる女優だし。

 お近づきになりたいって思うのは自然な事じゃないか?」

 と言った。

 【笑媛】は、にっこり笑いながら、

「・・・私と付き合いたい?」

 と言った。

 【一樹】は、

「出来るものなら・・・

 俺と付き合ってくれるの?」

 と聞いた。

「・・・今のままじゃ無理ね・・・

 でも、条件次第では・・・

 考え無くもないわね・・・」

「それはどんな?」

「私はね・・・

 英雄に憧れているの。

 偉大な英雄にね。

 貴方はなれるかしらね?」

「俺が?

 無理無理・・・絶対無理だって」

「それがそうでも無いのよねぇ~って言ったらどうする?

 挑戦する?

 それとも私なんかと付き合うのにそんな事出来ないって思う?」

「そんな事無いって。

 君と付き合えるなら命の1つや2つ、賭けられるって。

 ホント、マジでそう思ってるから。

 付き合えるなら何でもするよ。

 教えてくれ。

 どうすれば付き合って貰えるんだ?」

「・・・そう。

 なら、これは【術式】による契約になるんだけど、後戻りは出来ないわ。

 それでも出来る?」

「出来る。

 君と付き合えるなら」

「・・・そう。

 それは良かったわ。

 実はね、私・・・【伝説の勇者】/【芦柄 吟侍】から、【後継者の証】ってのを貰っているの。

 でもね、私・・・女優だし・・・危ない事出来ないから、代わりにやってくれる人、探しているんだ。

 ちょっとしたクエストの2つや3つでも良いから、【クリア】してくれれば、私の役目も果たせるんだけどなぁ・・・

 代わりにやってもらえないかな?

 【後継者の証】を手にすれば、【誰でもそれなりに力】は付くんだよ。

 でも、私、女優だから・・・

 顔を傷つける訳にも行かないし・・・

 代わりにやってくれる人が居たら助かるんだけどなぁ・・・」

「か、代わりにやったら付き合ってくれるの?」

「あらっ・・・

 付き合うだけで良いの?

 その後、何をしたいとか無いの?」

「き、キスとかエッチも良いの?」

「お望みとあれば・・・

 どうしよっかなぁ・・・」

「やらせてくれるの?

 君とやれるなら死んでも良い」

「本当に?」

「本当だ。

 神に誓っても良い」

「そう・・・

 じゃあ、本当に契約してくれるのね?」

「あぁ。

 もちろんだ」

「じゃあ、クエストを1つクリアしてくれたら、ご褒美にキスしてあげる。

 2つクリアしてくれたら、愛撫してあげる。

 3つクリアしてくれたら・・・

 その後はご想像にお任せするわ」

「ホント?

 ぃやったぁ~っ」

「じゃあ、契約の儀式を済ませましょう」

「あぁ。

 わかった。

 すぐしよう。

 すぐにクリアするから」

「そう・・・

 ありがとう・・・」

 と言った感じで、まんまと【笑媛】は【一樹】と【後継者譲渡の契約】を結んだ。

 特殊な文字での【契約】なので、【一樹】には契約の内容がわからないが、内容としては、

 【超難関クエストを突破するまで戻れない】

 【死亡したら前契約者に後継者の権利は戻るものとする】

 と言った文言が入っている。

 つまり、【一樹】には到底不可能な【クエスト】をあてがい、【一樹】は死ぬまで元に戻れない契約をし、彼が死んだら、【芦柄 吟侍】の【後継者】の権利は【笑媛】に戻ると言うものだ。

 人には器というものがある。

 同じ、【クエスト】でもクリア出来る者も居れば、クリアは絶対に不可能な才能の無い者も居る。

 【笑媛】は、【吟侍】の後継者として相当高いレベルの【クエスト】を任せてもクリア出来るだけの素質があると判断されている。

 対して、【一樹】は才能は皆無である。

 他者の嫌がる情報を流して、暴利を貪る様な小者であり姑息な悪党に過ぎない。

 そんな悪党が、【笑媛】のレベルの【クエスト】をクリア出来るはずもない。

 そう。

 これは、【笑媛】の【クエストレベル】を使った【殺人】である。

 【笑媛】から、【後継者の資格】を譲渡された、【一樹】は、【主人公/後継者】として、【超難関クエスト】に挑んだ。

 が、全く語る事も無いまま、瞬時にそこに居た小者モンスターの餌となって人生を終えた。

 悲鳴もなかった。

「・・・え?」

 と言う言葉を発したのが最期だった。

 【一樹】の絶命により、【主人公】/【後継者】の権利が戻った【笑媛】は、

「・・・気持ち悪い。

 想像でもあんな男(【一樹】)と付き合うと思われた事が不快だわ・・・

 空しいわね・・・」

 とつぶやいた。

 そこに死者に対する畏敬の念は全くない。

 純粋なる嫌悪。

 それしかない。

 彼女は、【復讐鬼】と化している。

 復讐のためならば何でもする。

 何でも利用する。

 【人生】でただ1人、愛する男性を失った彼女にとっては復讐する事でしか、生の実感が得られない。

 悲しき存在となっていた。

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