プロローグ編013/EHIMES(エヒメズ)メモリー3
10年前の愛の目覚めから7年が経ち、【笑姫】は14才になっていた。
【祥吉】は37才になっていた。
通りかかる10人に2、3人は【笑姫】の事を好きというレベルまでになっていた彼女に対して、【祥吉】の見た目は恋愛経験に乏しい冴えないおじさん。
一見すると全く違った世界に生きていて、不釣り合いに見える2人。
だが、【笑姫】の愛は、7年前の比では無かった。
今では、写真でも良いから最低1日1回は【祥吉】の顔を見ないといらつくまでに彼を愛していた。
【笑姫】は、
「【祥吉】ぃ~。
美味しいお菓子貰ったから一緒に食べよぉ~」
と声を掛ける。
この頃には、【子役】から【俳優】としての転換期でもあり、【学生】が出る様なドラマなどの【主役】/【ヒロイン】を勤める事も多く、すっかり有名人となっていた。
そのため、素顔では歩けず、変装をする事もあるのだが、【祥吉】の作った【便利アイテム】/【変装セット】の助けを借りて、別人の様な姿で【祥吉】に逢いに来ていた。
【祥吉】への呼称も【祥吉さん】から【祥吉】に変わっていた。
傍目には見るからにラブラブ光線を【祥吉】に向けているのが丸わかりなのだが、恋愛に疎い【祥吉】は、自分に懐いてくれていると思っている程度だった。
【祥吉】は、
「そっか。
じゃあ、僕が作ったお団子はお役ご免だね」
と言った。
【笑姫】は、
「何言ってんのよ、【祥吉】ぃ~。
【祥吉】の作った物なら何でも食べるって言ったでしょ?
もちろん、【祥吉】のお団子がメインディッシュねぇ~」
と言った。
【祥吉】は、
「いやいやいや。
美味しいお菓子なら、そっちがメインでしょ?」
と言うが、【笑姫】は否定する。
彼女にとって、【祥吉】の作った物が最優先なのだ。
それ以外はたんなるオマケに過ぎない。
それがどんなに美味しい物でも。
もちろん、【祥吉】の作ったお団子などは正直、美味しいとは言えない。
良いとこ、3流の腕前だ。
だが、好きな男性が愛情を込めて作った料理はどんな超一流料理にも勝るのだ。
また、【祥吉】はこれまでの7年間で、全く恋愛をしていなかった訳では無かった。
23才という年の差もあり、【笑姫】に振り向いてはくれて居なかったが、彼と近しい年齢の女性に恋をしたが、
「は?
好き?
キモッ・・・」
と言われたり、
「おっさん、鏡見た事ある?
気持ち悪いんですけど?」
「興味ないです。
近寄らないでください」
と3人の女性にこっぴどく振られてた。
その度に、【笑姫】は、
「馬鹿な女・・・
男を見る目が無いのね」
「気持ち悪いのはお前だ馬鹿女。
こんないい男を気持ち悪いだなんて目が腐ってる」
「興味ない?
近寄らないで?
ふざけんな、何様だあの女」
とまるで自分の事の様に憤慨していた。
【祥吉】は、そんな【笑姫】に、
「ありがと・・・
こんな僕のために、君はいつも優しいね」
と言っていた。
【笑姫】は、
(違うの。
本当は私に振り向いて欲しいの。
だから貴方が振られるのは仕方ないかも知れない。
でも、振り方が気に入らないの。
貴方を悪く言われると酷く腹が立つの)
と思いつつ、
「あんな馬鹿女共に、【祥吉】の良さは伝わらないって。
だから、私にしておきなさい。
私なら、【祥吉】の才能を伸ばして上げられるから」
と言った。
【祥吉】は、それを本気ととらえずに、
「ぐすっ・・・ありがと。
本当にありがと。
天下の大女優にこんな事言ってもらえるなんてぼかぁ、幸せだなぁ~」
と言って泣き笑いした。
【笑姫】は、
(違うの・・・。
私は本気なの。
あぁ・・・私のバカバカバカ。
あんな言い方をしたから【祥吉】が本気だと思わないのは当たり前じゃないの。
何がトップ女優よ。
心はウソを付けるのに、【祥吉】が絡むとウソが下手になる。
【祥吉】の前ではウソをつきたくない。
そう、思う自分が居る)
と思い、笑顔が引きつった。
切ない。
こんなにも愛しているのに、それが【祥吉】には伝わらない。
23才という年齢差の壁が、【恋愛】を遠ざける。
いっそ、
「好きよ、【祥吉】。
心の底から愛している」
と言ってしまおうか?
いや・・・駄目・・・
怖い・・・
【祥吉】に振られるのが怖い。
どうしようもなく怖い。
【祥吉】が絡むとこんなにも臆病になる。
【祥吉】が欲しい。
【祥吉】を自分だけのものにしたい。
でも、自分の都合で【祥吉】を変えたくない。
【祥吉】は【祥吉】のままで居て欲しい。
そのままの【祥吉】が一番好きなのだから。
だから、無理は出来ない。
このまま、ずっと【祥吉】を見ていたい。
愛してもらえないのなら、ずっと見ているだけで良い。
それだけで私は何もいらない。
愛しています。
狂おしいほど愛しています。
貴方のためなら死んでも良いと思えるくらい。
どうしようもないくらい貴方が好きです。
思春期まっただ中の【笑姫】は、【祥吉】に対してそこまで思っていた。




