第923話 桃太と詠、華麗なるコンビプレイ
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「よし、いける。やれるぞ!」
「このまま二人でケーキ入刀ですわあ」
額に十字傷を刻まれた少年、出雲桃太と、赤い髪を二つのお団子状にまとめた少女、六辻詠は、足元に展開したスケートボード状の衝撃刃に乗って、フィギュアスケートもかくやという華麗な回避を見せつけた。
「くそっ、くそっ、ガキどもがいい気になりおって。〝踵落とし断頭刑〟!」
蠅王鬼ベルゼブブに喰われて融合し、その使い魔である蠅と象を混ぜこぜにした使い魔、〝聖職者級人形〟に憑依した悪漢。六辻剛浚は、そんな二人の姿に激怒したらしい。
口から泡をふきながら、触腕や牙をブンブンと振り回しては、当たらぬ攻撃を繰り返し、無駄に力を消耗している。
「詠さん、ここからジャンプだ。いける?」
「もちろん。受け止めてくださいね」
詠もまた妖精のように華やかにくるくると舞っては、剛浚の攻撃を軽やかに回避。華やかなポーズをとりながら、桃太の腕の中へとおさまった。このように息のあった二人のコンビプレイだが……。
「サメエエエ。詠ちゃんに抜け駆けをされたサメエっ。マラソン大会で〝一緒にゴールしようね〟って約束したのに、いきなり加速するような暴挙なんだサメエ!」
少し離れた場所で傷ついた仲間の治療中だった、サメの着ぐるみをかぶった少女、建速紗雨の心を盛大にえぐっていた。
「キハハっ。そのたとえはどうかと思うが、アタシもこの展開はまずい気がするねえ」
また剛浚の昔馴染みであり、一度は彼を追い詰めた女傑、一葉朱蘭は、勇者パーティ〝J・Y・O〟代表を務めた経験からか、流れの不穏さを認識したようだ。
彼女は剛浚にえぐられた血まみれの上体を起こして、立ちあがろうと体を震わせた。
「朱蘭さん。動いちゃダメ、傷が開いちゃうんだサメ」
紗雨はそんな朱蘭を必死で静止するが、患者は流血も厭わず、ぐちゃぐちゃに破壊された大鎧の破片を束ねて装備を付け直す。
「いいから、アタシを放ってお逃げ。さっき結界に、〝腐敗領域ソドム〟に穴を空けたから、まだ元気なアンタ達ならここから逃げられるかも知れない。キソの里でもガッピ砦でもいい、友軍の力を借りれば建て直すことは可能なはずさ」
朱蘭とて、自身が瀕死になった今、絶望的な状況だと理解していた。
だからこそ、年若い者達のために命をかけようと奮起しているのだろう。
「ダメなんだサメエ。朱蘭さんも一緒に生き残るんだサメエ。信じて欲しい。桃太おにーさんと詠ちゃんが……必ず活路を切り開いてくれるんだサメエ」
「そうだといいんだけどねえ。あの二人、なにか致命的な読み間違いをしている気がしてならないんだ」
紗雨は嫉妬しつつも桃太と詠を信じるものの――朱蘭は不安をぬぐえない。
「クソガキどもが、ちりひとつ残さず消えるがいい。〝蟲喰らい地獄刑〟!」
視線の先にいる剛浚は、蠅の腹に浮いた顔で歯を剥き出しにして吠えたける。
どうやらイチャイチャと二人でフィギュアスケートめいた演舞を見せつける桃太と詠が、ハラワタが煮えたぎるほどに許せないらしく、〝鬼の力〟を無制限に使い、蠅の砲弾を雨あられとぶつけてきた。
「よし、狙い通り」
「しめしめですわあ」
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