第763話 新緑の探究者(ボース村)5
夜のとばりが下りました。旅先ですが快適な環境です。
~ミア視点~
「さあ、みなさん、どうぞ食べて下さい」
「「「わあ! いただきま~~す!」」」
三人が狼追い払い作業から帰ってきましたので、これから皆さんと一緒に夕食を頂きます。今晩は大勢いて、まるで晩餐会のようです。
「わっ、料理が温かい!」
「うまい、うまい!」
「遠征先でこんな美味しい食事が頂けるなんて!」
聖騎士隊、警備隊の皆さんも料理に満足してくれてるみたいで
良かったです。三人はどうでしょうか?
「どうですか? 料理は?」
ラーシャ「お母様、美味しいです」
メヌール「(はむはむ)お、美味しいれふ」
ビローチェ「(はむはむはむ)」(前の二人に合わせて頷くだけ)
「そう、良かったです」(にっこり)
シチューは大鍋に入れ、パンとサラダは大皿に乗せて、
テーブルの上に置きました。(もちろん水瓶も)
「皆さん、おかわりもありますからね」
「「「は~~い!」」」
ふふふ、いい返事ですね。
しかし、こうして皆さんと一緒に食事を頂くと、普段の彼らの素顔が知れていいものですね。最初は大人数でちょっと戸惑いましたが、賑やかなのは悪くないです。楽しげで、いい雰囲気ですね。
そうだ。ちょっと三人に聞いてみましょう。
「ビローチェ、あなたはどうやって、狼を追い払ったのですか?」
「わらわは戦闘オーラを出しただけじゃ」
「ああ、そう言えば、あなたはそれだけで獣を寄せ付けない力がありましたね」
「だから、実際の戦闘はまったくしておらん」
「ふふふ、いいですね。不殺生バッチリです。偉いですよ」
「主人から褒められると、なんかこそばゆいのう」(照れる)
今度はメヌールに聞いてみましょう。
「メヌールはどうですか?」
「はい、私は邪眼で麻痺させることができますが、夜間で使えそうもなかったので、【隠蔽】と【転移】を繰り返して、無力化していきました」
「無力化? まさか?」
「あ、ご心配には及びません。手加減の体術により気絶させただけです」
「まぁ、そんな器用なこともできるんですね?」
「いや、それ程でもございません」(少し得意げ)
この二人はまったく心配していませんでした。
むしろ、狼の方が心配だったぐらいです。
さて、我が娘、ラーシャはどうでしょう?
「ラーシャはどうでした?」
「私は火魔法を使いました」
「火魔法? どうしたのですか?」
「荒地で、まわりに火が広がる心配がありませんでしたので、ファイヤーボールで威嚇しました」
「なるほど、野生の獣は火を怖がりますものね」
みんな、首尾よくできたようですね。良かったです。
これなら、屋敷まわりの警備も安全でしょう。
それに言うまでもないですが、三人とも無事で良かったです。いくら格下が相手でも、何があるか分からないですからね。戻ってくるまでは冷や冷やしました。
――――
――――――
その晩、私とラーシャ組、メヌールとビローチェ組で部屋割りしました。部屋に入り、早速、着替えてベッドに潜り込みましたが、同時に【自動着替え】スキルにより、寝衣に早変わりです。この間、一瞬。
「お母様、このスキル、本当に便利ですね」
「ええ、本当に」
実は『新緑の探究者』のメンバー四人とも、このスキルアイテムを持っており、着替えの手間も労力もかからない。流石に自宅(法王城・王殿離宮)では普通に着替えてますが、こういう外出先では重宝されますね。
明かりを消して、静かな部屋、ふかふかベッド、柔らかい枕、
う~ん落ち着きますね。狼の遠吠えが無いから、安心して寝れます。
今日は隣のベッドにラーシャがいます。
思い返せば、この子とサラを養女に引き取ってから、本当の意味で家族というものを知りました。当時未婚の私が躊躇なく二人を引き取れたのは、私自信がマザーに引き取ってもらった経験があるからです。きっと育ててもらった恩を返したいという気持ちがあったんでしょうね。
二人のお陰で親になること、家族を持つことに慣れ、やがて、陛下と結婚し、出産することにつながったんだと思います。現在、私はメルーシャ、カルエスと一緒に住んでますが、巣立った二人の娘も忘れたことはありません。
ちょっと声をかけましょうか。
「あなたと一緒に寝るのは久しぶりですね」
「ええ、お母様」
現在、私は自宅(王殿の離宮)と勤務地(法王城)の二拠点生活ですが、最近は自宅で寝る割合が多くなりました。自宅にはメルーシャとカルエスがいますからね。やはり子供達と同じ家で寝起きすると安心します。
「どう、王妃様の暮らしは?」
「そうですね。最初の頃は大変でしたけど、もう慣れました」
「そう」
そう言えば、ラーシャは王妃、冒険者以外に、教員の顔もありましたね。
「教員のお仕事はどうなの? 魔法学園の副学長でしたよね?」
「ええ、以前、レネア様から指名されて、魔法学園の副学長になりました」
「王妃をしながら、教育の仕事をするなんて、立派ですよ」
「それを言ったら、お母様もいろいろお仕事されてますよね? そっちの方が凄いですよ」
「そうかしら?」
「そうですよ。私が現在、頑張れてるのも、お母様という、いいお手本があったからです」
「あらあら、嬉しいことを言ってくれますね」
「本当です。いつも感謝しています」
「そう言ってくれて、ありがとう」
今夜はいい気分で眠れそうです。
――――
――――――
メヌールとビローチェの部屋、
二人ともベッドに入り、ぼんやりと天井を見つめている。
「メヌールよ」
「何ですか、ビローチェ?」
「お主とこうして寝所を共にするのは初めてぐらいじゃのう?」
「いえ、ハーピィの里で一緒に寝ましたよ」
「あの時は四人で寝たじゃろう? 二人は初めてじゃ」
「そう言われれば、そうですね」
「ところで、お主は寝る時も人間形態なのかや?」
「ん~ そうですね。半々ぐらいですかね。そういうあなたは?」
「わらわは本体(アルラウネ)に戻るぞえ」
「でも、今は人間形態のままですよね?」
「今回は多くの人間達が同行しておるからのう」
「おっ、あなたもそんな気遣いができるようになりましたか?」
「何を言っておる。前からわらわは気遣いの達人じゃ」
「ぷっ、達人って」(笑)
「しかし、気付かんうちに主人はまた偉くなったみたいじゃのう」
「ええ、クラナス法王国の法王猊下ですからね。通常であれば、口を聞くことはおろか、近づくこともできない御方ですよ」
「なるほどのう。でも中身はまったく変わっておらん」
「ふふふ、そこがミア様の素晴らしい点です」
「分かるぞ。人間の世界で謙遜というものじゃな」
「そうそう、その謙遜です。本当に偉い人は偉ぶらないんです」
「そう言えば、お嬢もそうじゃな」
「そうですね。私達も見習いましょう」
「そうじゃな。ところで、メヌールよ」
「ん? 何です」
「先程、狼を体術で無力化したと自信満々に言っておったが」
「ええ、言いましたよ」
「お主の力じゃ、一匹ぐらい、昇天してるんじゃないのかのう?」
「な、何を言ってます! ちゃんと手加減しました!」
「は~て、どうじゃろうか?」
「あなたこそ、戦闘オーラとやらで、ショックで死んでるかもしれないじゃないですか!」
「いやいや、そんな事はないはずじゃ」
「本当ですか~?」
「本当じゃ、嘘は言わん!」
「じゃあ、信じてあげますから、私も信じて下さい」
「むぅ、そう来たか、お主、なかなかうまくなったのう」
「誰と付き合ってると思ってるんですか?」
「えっ、誰じゃ?」(あたりを見回す)
「もう、いいです。早く寝ましょう」
二人は冗談を言いながら、眠りにつくのだった。
――――
――――――
その頃、ロナンダル王国の王宮、団らんの間
~ライナス視点~
今晩はラーシャがいなくて寂しいが、それは子供達も同じようだ。
こういう時こそ、子供とのひと時も大切にしないとな。
リベルト(王子・兄)、ローレル(王女・妹)
の方に視線を送ると、二人もこちらに顔を向ける。
リベルト「母上はご旅行なんですよね?」
ライナス「うん、ちょっと法王国にね」
冒険というと刺激的だから、旅行という事にしておこう。
ローレル「お一人ですか?」
ライナス「いや、昔からの仲間と一緒にね」
リベルト「えっ、母上に仲間がいたんですか?」
ライナス「そうだよ。三人いてね」
兄妹「「三人!?」」
ライナス「一人はミアさん、内務大臣だったから分かるよね? 現在はクラナス法王国の法王だ」
兄妹「「はい」」
ライナス「それから、ギルフォード王国のメヌール要人護衛隊長」
兄妹「「へぇ、ギルフォード王国の護衛隊長ですか」」
ライナス「それと、ギースにある連邦図書館のビローチェ館長だ」
リベルト「連邦図書館の館長? あまり母上と接点が無さそうですが、どういう関係で知り合ったんですか?」
ライナス「僕も詳しくは知らないけど、冒険者をしてる時に知り合ったようだ」
ローレル「母上って本当に冒険者だったんですね」
ライナス「そうだよ。見えないかい?」
リベルト「普段は見えませんけど……」
ライナス「う~ん、そうかい?」
ローレル「でも、剣と魔法を使う時は雰囲気が変わります」
ライナス「ああ、確かにね」
リベルト「母上はお強いのですか?」
ライナス「うん、強いよ」
ローレル「どのぐらい?」
ライナス「さぁ、どのぐらいだろう?」
僕はラーシャがSランク冒険者であることは情報として知っているが、実際に戦闘を見た訳でないから、本当の強さは知らない。でも僕にとって、そのあたりはあまり感心がないからなぁ。
「二人とも、今日は一緒に寝るか?」
「「はい!」」
いつもラーシャが横にいるのが、当たり前になっているから、いない夜は寂しいけど、子供達がいるから穴埋めできる。ラーシャの方はきっとミアさんと一緒なんだろうな。久々の母娘の時間を楽しめるといいね。
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