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第757話 内務省娯楽広報部2

 娯楽広報部は内務省の一部署ですが、実態は芸能事務所、番組制作会社であり、他の省庁と比べ、異彩を放っています。王国の所属ですが、その活動は連邦全土に広がっています。責任者はハークレット部長(元吟遊詩人)です。第268話(内務省娯楽広報部)の続編。

~ハークレット視点~


内務省、娯楽広報部、応接室


 ギルフォード商会のバーモ副部長が来訪されたので、商談しているところ。内務省の娯楽広報部とギルフォード商会は番組制作者と広告主の関係であり、極めて良好な関係を維持している。商談と言っても肩肘張らず、何でも気さくに話せる間柄だ。役職も付けず「バーモさん、ハークレットさん」で呼び合っている。


「バーモさん、聖王陛下のご説明会による影響力は凄いですね」


「ええと、『芸能の館』で芸能人向けに開催したものですね? ハークレットさん」


 あれ? 反応が微妙だぞ。


「そうそう、あの後、うちの芸能人達が、何人も住宅購入を決めましたよ」


「そうでしたか? それは、それは、毎度ご注文ありがとうございます」(にっこり)


 ああ、そう言えば、バーモさんはあの説明会には出席していなかった。

 出席していたのは、バーモさんの部下だったか。


 この件は配下である住宅事業課が担当してるから、重役の副部長であるバーモさんは下からの報告待ちで、ワンテンポ遅れて知る感じかな? まあ、多くの案件を抱える大商会だしな。重役の耳に入るのは時間がかかるか。


 とりあえず、バーモさんに合わせつつ、話しを続けよう。


「ははは、どういたしまして。聖王陛下のお話によると、大きなお屋敷の場合、メイドを雇うのが通例だとか。 そちらは王国職業紹介所のお世話になりそうです。おっと、バーモさんはそちらの所長もされていましたね?」


「そうです。メイドさんの紹介ですね。承りました」(にっこり)


「そう言えば、先日、少し驚くことがありまして……」


「何でしょうか?」


「聖王陛下に『ちょっと来てくれ』と言われて行ったんですが……」



~回想~



「こ、これが、ニナッタ・カナッタ記念館ですか……!」


「ああ、僕の方でつくっておいたから、中の方はお父さんと打合せして、決めていってよ」


「は、はい……」(いきなりだなぁ)


 聖王陛下に連れられ、ニナッタ・カナッタ姉妹の故郷であるカイス領に来てるが、なんと二人の記念館をつくったと言われる。何でも住宅説明会で思い付かれたらしく、「トップ歌手なんだから、記念館ぐらいあってもいいだろう」とのことだった。


 姉妹が故郷に住宅を建てるにあたって、地元ファンの集まる場所として提案されたようだが、よくよく考えたら、娯楽広報にもなるからと、娯楽広報部の責任で運営する運びとなった模様。


「住宅はともかく、記念館まで自己負担は可哀想だからな」


 となり、聖王陛下が御力で記念館をつくられたのだ。


「しかし、立派な記念館ですね……」


「そうかい? こんなものだろう」(あっけらかん)


 中には展示品を置けるスペースの他、ファンが語り合える談話室もあり、二人が関わった商品の販売所まである。そして、凄いのはシアタールーム。二人のライブの様子を映像で見ることが可能だ。


「あれ? あの男性は?」


 できたての記念館で作業している男性がいるが、あの人は……


「ああ、あの人は姉妹のお父さんだよ」


「ああ、お父さんでしたか。(どうりで見覚えのある顔だ)」


「二人にとって、一番のファンだからな。ここの責任者にぴったりだ」


 いつも思うが、聖王陛下の行動力は常人のそれを超えているなぁ。



~回想終了~



「なるほど、ニナッタ・カナッタ姉妹の記念館ですかぁ。面白そうです」


「聖王陛下の御力によるものですが、展示場、談話室、売店もあるし……」


「ほう、ほう」


「シアタールームまでありました」


「シアタールーム?」


「姉妹が歌う映像を観て楽しむお部屋です」


「それは凄いですね……」


「地元ファンはきっと喜ぶでしょう」


「でしょうね」


 しかし、あれだけの施設、王都につくれば、もっと繁盛するのに。と思ってしまうのは娯楽広報部長である私のうがった見方だろうか?


 単に地元ファンを喜ばすためなら、あそこまでする必要はなさそうな気がする。何か聖王陛下の思惑を感じますね。長い付き合いですから、いろいろ勘繰ってしまう。


――――

――――――


 バーモ副部長が帰られた後、デスクに戻り、最近の芸能人の動向を整理する。ニナッタ・カナッタ姉妹については先程の話の通り、二人の故郷であるカイス領で『ニナッタ・カナッタ記念館』を開設することになり、その運営を聖王陛下から当部に任せられた。


 カイス領は割と長閑な場所であり、王都から距離があるので、たぶん、そんなに人は来ないだろう。来るとしたら地元ファンぐらいだろうか。だから、大して心配してない。現地の方も姉妹の父親が担当してくれてるので、たまに商品補充に行くぐらいかな。


 並べてる商品は過去に姉妹が広告に関わったもので、実は結構ある。二人が宣伝すると、明らかに売り上げがあがるもんだから、次々に依頼が来てしまってね。今では制限をかけてるぐらいなんだ。一定額以上の商品で、宣伝費、いくら以上ってね。


 変な話だが、姉妹が家を買えば、それだけで相当な宣伝になると思う。本当にギルフォード商会はやり方がうまい。うちも「芸能人お宅拝見」と銘打って番組制作の企画を検討しようかな。ふふふ。


 姉妹は両親思いだし、故郷思いだから、きっとカイス領で住宅を建てるだろうが、記念館とどう関わってくるのか、注視する必要があるな。


 マーミヤはヨウス領の住宅購入に最も前向きだった。たぶん、このまま決まるだろう。プライベートな話になるが、彼女は恋人のハレッツと同居を考えているんだろうな。


 公ではあくまで、マネージャー(兼護衛)という関係だが、それ以上の関係なのは周知の事実だ。二人きりの時間をつくりたい彼女にとって、住宅購入は渡りに船の話だろう。『芸能の館』じゃ逢い引きは無理だもんな。ハレッツも官舎住まいなので、こちらはもっと無理。自宅を欲するのも無理からぬ話だな。


 ちなみに聖王陛下が結婚賛成派であることから、芸能人の恋愛はタブーではない。仕事に差し支えなければ、誰と恋愛しても自由だ。だが、流石にマーミヤのクラスになると、熱狂的なファンも多いし、余計なさざ波を立てないよう、外部に伏せているのだ。(だが隠蔽まではしてない。悪事をしてるわけじゃないしね)


 ルシャラは美術品集めが趣味だったな。今でも『芸能の館』にある自室と倉庫にたくさん保管してるから、「そろそろ何とかしないと」と思っていたが、家を買ってくれるなら都合がいい。これで館長の「マーミヤさんが~」の愚痴を聞かなくてすむようになるな。ふふふ。


 聖王陛下の弁じゃないが、芸能人は人々に夢を与える仕事だ。その芸能人が仕事で成功し、地位、名誉、お金を得るのは、庶民に夢を与えるだろう。


 そんな芸能人が夢を叶えた証として、大きくて立派な家を買うのは、庶民から見て、分かりやすい成功事例になるんだろうな。「〇〇成功物語」なんて企画もいいかもしれんな。


「ごほんっ」(咳をする)


 まわりに誰もいないな。(周囲を見渡す)


 少し歌うか。息抜きだ。ハープを出してと。


 ポロン、ポロン、ポロロ~ン♪


「ああ~ 偉大なる聖王陛下~ 貴方様の撒いた種は~ 次々と芽を出しております~ その芽はやがて成長し~ 大きな花を咲かせます~ 芸能人は~ 庶民に~ 夢と希望と活力と~ 楽しみと癒しを与えます~~♪」


 ううむ、事務仕事ばかりで、少し声量が落ちたかも。

 早起きして自宅で隠れ練習でもするかな。


※補足※ 

ハープは吟遊詩人が手に持って、胸の前でひく小型のもので、持ち運び可能なタイプです。また、ハークレット部長は騎士爵位を叙爵された際、王都にお屋敷を与えられています。


――――

――――――


「何ですか、これは!?」「実物みたいです!!」


「これはポスターだ」


「「「ポスター!?」」」


 娯楽広報部の課長達を集め、会議をしてるところだが、先日、聖王陛下と『ニナッタ・カナッタ記念館』に同行した際、これを渡されたのだ。



~回想~



「こ、これはニナッタ・カナッタ姉妹じゃないですか! しかも実物そっくりです。どうしたら、こんな絵が描けるんですか?」


「これは絵じゃない。写真だ」


「えっ、シャシンですか?」


「シャシンだが、それを拡大したもので、ポスターといった方がいいかもしれんな」


「ポ、ポスターですか?」


 これまでも聖王陛下には驚かされ続けてきたが、本当に底知れぬ御力を秘めた御方だ。ポスターを見た瞬間、まるで本人が閉じ込められているのかと勘違いする程だった。


「記念館は姉妹本人の代理で、ファンに対応するんだから、展示品だけじゃ弱いと思ったんだ。本人の代理なら、本人そっくりがいいんじゃないかと思ってね。それでポスター掲示を思い付いたんだ。ポスターを見たら、ファンはまるで本人が目の前にいると思うことだろう」


 確かに、これならそう思う。


「わかりました。記念館にポスターを掲示致します」


「それでさ、ニナッタ・カナッタ姉妹だけポスターをつくったんじゃ不公平だと思って、芸能人全員分もつくっておいたよ。戻ったら渡すから、宣伝に使ったらいい」



~回想終了~



「しかし、これは本当に本人そっくりですね!」


「まるで、本人が目の前にいるようです!」


「これは大いに役立ちますよ!」


 課長達が芸能人のポスターを手に取り、大はしゃぎする。これまでも芸能人の宣伝をしてきたが、受信機テレビが中心だったため、こういう静画は盲点だった。宮廷等では、王侯貴族が宮廷画家に自画像等を描かせる文化はあるが、平民である芸能人にその習慣は無かったからな。


 このポスターは聖王陛下からの贈り物だが、皆が落ち着いたら、コソッと話そう。なぜ、コソッとかと言うと、昔から、聖王陛下の御力のことを喧伝しないようお達しを受けているからだ。聖王陛下の自重精神の現れだろうが、「どうだ! 我が力を見よ!」に比べたら、圧倒的に好感が持てる。


 それに聖王陛下は「ポスターの主役は芸能人であって自分ではない」と強く謙遜されておられるのだろう。国王を退位された後も引き続き、関係部署を見守って下さるのは本当に有難い限りだ。


 ちなみに今日の会議だが、歌手課、役所課、踊り子課、道化課、語り部課、等の課長が集まっているが、皆、娯楽広報部の古株スタッフであり、私同様、元吟遊詩人が多い。娯楽広報部は内務省の所属であり、私達は立場上、省庁の役人になるが、芸能人のマネージメント、制作全般に関わっており、役人という意識はほとんどない。(と言っても行動は至って真面目だ)


 元々、自分達も芸能に携わってきたから、芸能人の「マネージャー」を名乗ることが多い。新人の教育、売り出し、スケジュール管理、対外交渉、舞台準備、制作、何でもやる。


 芸能人の人数で言えば、役者が最も多いので、マネージャーの数も役者課が最も多い。芝居は準備がたくさん必要だからね。それらのほとんどをマネージャーがやるわけだが、役者が芝居に専念できる環境を整えるのが私達の仕事だ。仕事は楽しいし、全然、苦にならないよ。


 芸能人で言えば、ファッションショーの開催以来、モデルの仕事が増えているが、モデルに関しては、歌手、役者、踊り子等、幅広く募っているので、あえて専業化していない。あと、笛や太鼓等を演奏する楽師、外見を整える化粧師もいるが、彼らも各方面からお呼びがかかるので、壁をつくらないでいる。歌手につく楽師もいれば、踊り子につく楽師もいるしね。


――――

――――――


~アレス視点~


 僕と妃達で余所行きの恰好をして壁際に立つ。

 みんな、真面目な表情で、少し緊張した様子だ。


「じゃあ、みんな写真を撮るから動くなよ!」


「「「は~い」」」


 よし、やるぞ。


「【イメージ作成】!」


 スキルを発動し、僕がイメージした構図で写真が現れる。


メリッサ「まあ、これは!」


テネシア「いいね、いいね!」


イレーネ「なかなかですね」


ミア「よく撮れています」


 これまで、あちこちで【イメージ作成】スキルを応用して、写真を撮ってきたが、僕と妃全員の写真は無かったため、撮ってみたのだ。うん、こうして集まると中々いい写真だ。このスキルの長所は撮影者も一緒に写ることができる点だ。


 今回も写真を拡大して額で飾ろう。


 僕はスキルを使う際、既存の職業にとって迷惑にならないよう常に配慮する。王宮にはお抱えの画家がいるが、写真の普及により、彼らが失業するのは避けたい。それで、他の王侯貴族から依頼があっても、最小限で留めているし、これにより宮廷画家をクビにしないよう条件を付けてるぐらいだ。


 ちなみにここ(聖王城)では宮廷画家はいないので、その心配は無い。それと、平民はお金を払ってまで、絵を描いてもらう習慣は無かったので、「平民向けなら大丈夫だろう」と思い、娯楽広報部のハークレット部長に芸能人の拡大写真ポスターを渡したのだ。きっかけは『ニナッタ・カナッタ記念館』だったが、もっと早く思いつけば良かったかもな。


 たぶん、ハークレット部長は郊外に不釣り合いな(立派な)建物を建てたと感じただろうが、その意味はそのうち分かるようになると思うよ。ふふふ。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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