第755話 住宅説明会
主人公のお節介発動!
現在、ヨウス領で富裕層向け住宅開発を進行中だ。道路をつくり、区画を整理し、モデルハウスを準備してるところだが、現場の土木工事は王国陸軍に動いてもらい、ギルフォード商会の住宅事業課がうわものの建築工事をする分担だ。
王国では土地は領主のもの、建物は施主(建築主)のものとなるから、土地を王国陸軍等の公的機関が開発するのは何の問題もない。土地付き住宅を購入した場合も、前世(日本)の感覚では借地権付き住宅のようなものだろう。
だが、住宅に土地代金が含まれないため、格安で住宅を購入できるのは大きなメリットだし、領主にとっても、利益を生まない未利用地が土地使用料を生み出すようになるのだから良い話である。
僕の(国王)時代に、王国陸軍はインフラ工事の経験を積んだので、道路工事や基礎工事はお手の物だ。これができるのも王国と商会の連携が密であり、お互いのトップが兄妹というのもうまく作用している。
ちなみに現在、平和が続いており、王国陸軍の仕事はこのインフラ工事が主体となっている。以前は公共の道路、橋、学校、港等が多かったが、現在は民間住宅にも進出してるし、他国の案件も受けるようになった。今や王国陸軍は連邦最大の土木工事部門なのだ。※参考※第377話(王軍隊の活用)
さてさて、住宅の準備は着実に進んでいるが、そこに住んでもらう平民富裕層へのアプローチはまだしていなかった。全体の計画も順調に進んでいるし、もう動いていいだろう。
よし、芸能人達に提案するか。
どうせなら、説明会形式がいいな。高額商品だし、丁寧に説明しないと。
本来は住宅事業課の範疇だろうが、今回は僕がサポートしよう。
実態はサポートに名を借りた僕のお節介みたいなものだがね。(笑)
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芸能の館、会議室で、複数の芸能人達が集まる。事前に「聖王陛下のお話しがある」としか聞かされてないため、集まった者たちは気になってしかたない。
ニナッタ「聖王陛下のお話しって何だろう?」
カナッタ「さあ?」
ニナッタ「でも、聖王陛下のお話しなら、いいお話しに決まってるよね」
カナッタ「まあ、そうだろうね」
まわりをよく見ると、芸歴の長いベテランばかり。
マーミヤ「なんか、そうそうたるメンバーだわね……」
ルシャラ「本当ね」
そこへ聖王陛下が入ってきた。
「「「あっ、聖王陛下だ!!」」」
ここにいる者は売れっ子ばかりであり、忙しい者が多いが、聖王陛下が直接、話しをされるということで、キャンセルしたり、スケジュール調整して集まった者ばかりである。
通常なら仕事最優先だが、聖王陛下が来訪されるとなれば、話は別である。
聖王陛下以上に優先する事案など存在しないのだ。
早速、聖王陛下が話しを始める。
アレス「みんな、わざわざ、集まってくれてありがとう。今日はみんなの生活に関して、重要な提案をするために来たんだ」
ニナッタ(え、生活についての提案?)
アレス「みんなは、現在、ここで暮らしているよな? だから、この『芸能の館』が唯一の自宅になってることだろう」
カナッタ(それはそうだけど……)
アレス「だが、もうそろそろ、自分の家を持ってみたいと思わないか?」
マーミヤ(自分の家!?)
アレス「急に言われて驚いた者もいるだろうが、自分の家を持つというのは、ある程度、人生経験を積んだ者なら、選択肢に入ってくるものなんだ」
ルシャラ(自分の家……人生の選択肢……)
◇ ◇ ◇
~アレス視点~
ここにいる面々は売れっ子芸能人だから、これまで仕事優先で、自分の家を持つなんて、考える暇もなかっただろう。こういう場合、自分から動くのは中々難しいかもしれない。
だからこそ、僕のような者が働きかける必要があるのだ。まあ、お節介成分が大いに混入してるのは否定しないけどね。ははは。要は後ろから背中を押す役ってことだ。特に住宅購入では、こういう役が必要だと感じる。
アレス「なぜ、君達に住宅購入を提案するかと言えば、君達に購入する資格があるからだ。それは仕事に成功し、資金を十分に持っていることを意味する。ここのみんなは全員、ギルフォード商会で資金保管をしているが、住宅を購入するのに十分な資金を持っている。その点はまったく心配していない」
ニナッタ「あの……」
アレス「何だい?」
ニナッタ「私達でも買えるんですか?」
アレス「当然だ。何の問題もなく買える」
マーミヤ「どんな家が買えるんでしょうか?」
アレス「君達なら、一般の家より、大きくて広くて立派な家が買える。高級住宅と言っていいだろう」
マーミヤ「高級住宅……」
アレス「実は現在、ヨウス領に平民富裕層向け高級住宅を開発中でな。君達にぜひ紹介したいと思ったんだよ」
ルシャラ「ヨウス領ですか?」
アレス「意外に思うかもしれないが、ヨウス領は昔から知る人ぞ知る名所でな。僕ら王侯貴族が、自宅や別宅を持つケースが増えているんだ。土地はまだまだ余っているし、今後、君達のような平民富裕層も積極的に迎え入れようと思っているんだ」
ルシャラ「ヨウス領にそんな経緯があったんですね」
アレス「ヨウス領は自然豊富で水も空気もおいしい。仕事で疲れた後に帰ったら、さぞかし癒されるだろう。それに中心街と違って、人も少ないし、有名芸能人だからといって騒がれることも少ない。防犯面もしっかりしてるぞ。富裕層向け住宅地は周囲を柵で囲むし、領主と打合せして領兵を巡回させる予定だ」
突然の話だが、みんな真剣に聞いてくれているな。
もう一押しするか。
「今回は特別に、住宅地に『転移門』を設置し、『芸能の館』と簡単に往来できるようにしよう」
「「「転移門!!」」」
「転移門はくぐるだけで、即座に目的地に着く。防犯のため住宅地の住人しか使えないよう設定するが、友人等を連れたい場合もあるだろうから、その場合は手を繋げば、同行できるようにしておこう。だから、ヨウス領といっても、隣に引っ越すのと同じ感覚で大丈夫だ」
「「「す、凄い!!」」」
「君達は有名芸能人で、顔が庶民に知られている。だから、王都近郊の場所だと、騒がれて落ち着かないだろう。だから、人の少ないヨウス領なんだ。それにヨウス領は人が少ない割には商店があって買い物も便利だし、療養所があるから、有事(怪我・病気)の際も安心だ」
よし、みんな、聞き入ってるな。
「君達は一生懸命頑張り、今日の地位と名誉とお金を得た。自分へのご褒美として、住宅を買ってもバチは当たらないだろう。むしろ成功者として、住宅を持つことを積極的に検討していいと思うぞ」
最後に持論をちょっと。
「君達は芸能人として立派に成功し、既に富裕層になっている。これまで大変だったろうし、賞賛に値するだろう。だが、それで終わったらダメだ。君達は多くの人達の応援の上に今があるのだ。だから、今後は人々に感謝の意味を込めて、お返ししていかなければならない。具体的に言えば、富裕層として経済を回すことだ。今回の住宅もそう。もし君達が住宅を購入すれば、それにより多くの人達に仕事が生まれ、俸給が得られるようになる。つまり社会的に貢献できるのだ。今後は自分のお金が皆の幸せにつながるよう意識して使ってもらえれば幸いだ」
これで、だいたい一通り言いたい事は言ったかな? 僕の脇(端の方)では、娯楽広報部のハークレット部長、住宅事業課のベルガット課長が座っている。関係者への情報共有は大切だから、同席させたが、僕の話を聞けば、今回の趣旨が伝わるだろう。
王国専属芸能人の総責任者はハークレット部長だが、彼は芸能人達の仕事と身の回り優先優先だから、住宅の事まで手が回らない。かと言って、ベルガット課長にいきなり説明させたら、最初から、営業にありがちな「売らんかな」の話になりかねない。これではダメだ。
だから、僕はその間を取り持つため、住宅を持つ意義について、
興味を持ってもらえるよう説明したのだ。まあ、橋渡し役だね。
さて、彼らはどんな事を考えているかな? 非常に気になるけど、【読心術】を使うつもりはない。知人、関係者に対し、そんな野暮で失礼なことはしないし、スキル自重三原則にも反するしな。
※補足(スキル自重三原則)※
・仕事だけで使う。(働く→傍楽→みんなの幸せのため)
・興味本位で使わない。(面白半分、無責任はダメ)
・身内に使わない。(信義に反する行為はダメ)
「もし、意見や質問があれば、何なりと言ってくれ」
みんな、じっくりと考えてるな。ふふふ。
真剣に住宅購入について検討するなんて、きっと初めてだろうな。
◇ ◇ ◇
~ニナッタ視点~
住宅かぁ。私達でも買えるんだ。もし大きな家に住めたら最高だろうな。
でもヨウス領というのが……
私達は故郷のカイス領に思い入れがある。でも故郷の人もちょっと過干渉かな。
~カナッタ視点~
姉さんも家に興味を持ってるみたい。大きな家は憧れだ。
でも、ヨウス領はちょっとね……
できれば、カイス領で両親と暮らしたい。
でも、それにも心配な点が少しある。故郷に帰る度に騒がれちゃうし。
~マーミヤ視点~
富裕層向け住宅という響きがいいわね。富裕層か……ふふふ
これまで衣服を中心に買い物をしてきたけど、住宅という手があったのね。
興味があるし、ぜひ具体的な話を聞きたいわ。
自分専用の住宅があれば、恋人のハレッツと過ごしやすくなるし、
衣服の置き場にもなる。仲間達を呼んでパーティーするのもいいわね。
夢が広がるわ。
~ルシャラ視点~
自分の家か……
とにかく美術品の置き場所が欲しいと思っていたので、
面白そうな話だわね。広い部屋なら、美術館みたいにできるかしら?
もう部屋に置き場が無いので、渡りに船のお話しだわ。
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