第507話 南北戦争4(収納共有スキル)
「いやぁ、なんとかなったなぁ。君達のお蔭だよ」
「いやいや、陛下のお蔭だよ」
「そうですよ。陛下」
三人(僕、テネシア、イレーネ)でお互いに健闘をたたえ合う。しかし、あの魔竜を仕留めるとは、さすがテネシアとイレーネだ。被害を抑えるため、海上に誘導したのは適切な判断だな。
検問所の襲撃、聖帝城への長距離弾攻撃、魔竜カサンドラの出現と立て続けに発生したが、一応、首の皮一枚差で何とかなった。
「それにしても【収納】の共有が役にたったな」
「本当だよ。あれが無かったら、大変だった」
「しかし、陛下の魔力値はとんでもないですね」
「そうかい? あれでも一部なんだぞ」
今回、二人を残していけたのは、事前に【収納】スキルがレベル9までアップし、【収納】(共有)が可能になっていたからだ。これは僕の収納の「一部」を共有化して、特定の者に使わせることができるというもの。今回はそこに蓄えた魔力の一部を移し、二人が使える状態にしていたんだ。
定期的に悪想念を魔力に変換して蓄えるルーチンワークをしてるから、まだまだ相当量ある。今の魔力量があれば、魔竜どころか、魔王ですら、普通に倒せるんじゃないだろうか。何せ人々の悪想念は途絶えることなく、どんどん魔力化できるのだから、実質的に無限に魔力を増やせるようなものだ。よく考えたらこれは凄いことだよね。
人々の悪想念が途絶えないのは気になるが、少なくとも「毒を以て毒を制す」になってるからコスパは相当いいんじゃないかな。
以前から魔力を一人だけで使うのは勿体ない。何かいい方法は無いか。と考えていたが、その思いが【収納】(共有)につながったのだろう。今回はテネシア、イレーネと共有したが、今後、ミア、レネアにも声をかけよう。この四人は既にアイテム無しでも【収納】(レベル1)が可能な状態だからな。そうそう、この【収納】(共有)の使用者条件があって、それは【収納】(レベル1)を素の状態(アイテム無し)で使える力が必要なんだ。
そうなると、メリッサも【収納】(レベル1)がアイテム無しでも可能になるぐらい訓練しないとな。どうせ【収納】共有するなら、四人の妃全員にしたい。僕にはスキルを【伝授】するチートスキルもあるし、なんとかなるだろう。
ちなみに【収納】スキルをまとめると、こんな感じだ。
レベル1(現物収納) レベル2(収納内で分別分解可能)
レベル3(生物収納可能) レベル4(亜空間廃棄可能)
レベル5(生物強制素材化可能) レベル6(部分収納可能)
レベル7(エネルギー収納可能) レベル8(エネルギー魔力化可能)
レベル9(共有可能)←★NEW
やはり、【収納】スキルは使用頻度も多いし、僕と相性がいいのか、レベルアップがどんどん進む。最初はレベル3ぐらいで終わると思っていたが、まさかのレベル9。
これって、絶対に現象神様のお蔭だよね。それと時空に関係するから、時空神様も共同で助けてくれてるような気がする。
二人が魔竜カサンドラを倒したのはスキルのお蔭もあるだろうが、日ごろ、地下魔法練習場で研鑽してきたのが大きいだろう。どんなにスキルや魔力のサポートがあったとしても、それを使いこなす器がなければどうしようもない。彼女達は間違いなくその器を大きくしてきたのだ。
やるな、二人とも、ふふふ。
僕が笑みを浮かべていると、テネシアが声をかけてきた。
「どうした? 主」
「ああ、悪い、二人の成長が嬉しくてな」
「そんなの主と一緒なら、嫌でも成長するよ!」
「そうかい」
そこへイレーネも声をかけてきた。
「そうですよ。アレス様、それに、魔力の共有は嬉しいです……」
「ん、そうかい?」
「ええ、アレス様と同じ魔力を共有できるなんて……」
するとテネシアも
「ああ、それは私も感じた。同じ力を共有する。一体感みたいなもの?」
「確かに魔力の共有はその部分で一体化してるものな」
「主と一体化か……」
「ああ、テネシアさん、少し赤くなってませんか~?」
「なっ! イレーネもそうだろ!」
こんな感じで戦いの後、いつもの和やかな雰囲気に戻ったが、アレが気になる。そう、長距離弾だ。今回は敵がピンポイントで僕を狙ったから、対処できたが、もし、複数個所にバラバラで攻撃してたら、どうなっていたか……
それを考えると、ゾッとするな……
そう言えば、魔竜カサンドラが依り代にしていた男、え~と、宰相カバールと言ったか、しばらくして目を覚ましたが、あまりに攻撃的な性格だったため、即、【精神支配】をかけ、シバ領の鉱山送りにした。どういう経緯か知らんが、あれじゃ、魔竜に簡単に憑依されると思ったよ。魔竜の影響により、さらに攻撃性が強くなっていたので、当分、娑婆には出せないね。
他人への攻撃性が強い者は隔離するに限る。隔離することにより、他人を攻撃できなくなるが、元からある攻撃性は他人を攻撃できないと、今度はそれが自らに向かうことになる。そして自ら苦しむのだ。自ら出した原因(攻撃性)により、自ら苦しむ。こうすることによって、自分の因果(攻撃性)を知り、それを自ら解消する方向へ向かうようになるだろう。
――――
――――――
<エルメス帝国・皇帝城・支配者の間>
皇帝キース・サンドラ(魔王憑依中)と魔賢者エルライナが円卓を囲む。いつも三人だが、椅子が一つ空席になっている。
「カサンドラの反応が消えたな……」
魔王の呟きに、エルライナが反応する。
「あの魔竜カサンドラが倒されたのですか!?」
「どうやら、そのようだ……」
「するとカバール殿も……」
「いや、その男は生きてるようだが、もう使い物にならないな……」
「そうですか……」
エルライナにとって、カサンドラはこの世界で数少ない理解者であったため、気落ちした様子を隠せない。
「……しかも、もっと悪いことに奴の反応が消えてないのだ」
「聖帝ですか!?」
「ああ、長距離弾を何発もお見舞いしたが、なぜか生きている」
「聖帝城に当たったのですよね?」
「確かに当たったはずなのだが、我が目にはその瞬間の光景だけが映らんのだ……」
「では、外れたのですか?」
「いや、直後に大穴ができたのは確認している。聖帝城も消えていた」
「それなら!」
「しかし、今、我が目で見たら、しっかり聖帝城が映っておる……」
「なっ!」
「どういう術を使ったが知らんが、奴は生きてるし、城もそのままだ」
「…………」
しばし、沈黙が流れる。
「しかし、この兵器に威力があることは分かった。次こそ奴を狙い撃ちしてやる」
すると、エルライナが口を挟む。
「魔王様、聖帝への攻撃は私も賛成ですが、次回は複数個所に攻撃されるのが宜しいかと」
「んん? なぜだ? 奴を倒さねば意味がないだろう?」
「確かにそうですが、どうも聖帝は何らかの方法で攻撃を防ぐことが可能なようです」
「確かにそうだな」
「しかし、複数個所の同時攻撃なら、防ぎようがありません」
「なるほど、最新兵器で攪乱させるわけか……」
「いかな聖帝と言えど、身は一つ、複数個所を同時に攻撃したら、全てを守ることはできないでしょう」
「なるほどな。さすが魔賢者エルライナ、知恵が回るな」
「大したことはございません。それより、最新兵器の製造は順調でしょうか?」
「ああ、前回、全弾を使い切ってしまったから、急ぎ製造してるところだが、最後の工程で手間取っている」
「最後の工程ですか?」
「ああ、射程距離を延ばし、爆発力を高めるため、魔力を充填してるが、その魔力が思ったより、集まらんのだ」
「魔王様はどこから魔力を集めるのでしょうか?」
「魔界にいる間はいくらでも魔力を充填できたが、この世界では、魔界からの魔力補給に制限がかかる。そのため、この世界で魔力を吸収してるのだが、どうも吸収が悪い」
「どうしてでしょうか?」
「わからん。我は人の憎しみ、恨み、呪い、殺意等のエネルギーを糧にしてるが、最近、それが少ないのだ。しかも供物まで手に入りづらくなっているしな」
「……魔王様はこの世界に来るのは何回目ですか?」
「三回目だ。一度目はある大陸を支配する寸前まで言って、勇者に封印されてしまった。あの時はうっかりしたわ。その後、時間経過で封印が弱まり、あと少しで解除されるところで、あの男に体を消滅させられた上、最果ての世界に飛ばされてしまった。本当に酷い目にあったものよ。長年、魔力で練り上げた魔体は失うし、意識は消える寸前までいって、もう終わる間際だったが、今回、そなたが召喚してくれたお蔭で、こうしているわけだ」
「魔王様も大変、苦労されたのですね……」
「我の意識が消えなかったのは、ひとえにあの男への憎しみ、恨み、呪いの念があったからである。しかし、今回、登場したこの地はイマイチだな。通常、強力な念はさらに念を集め、どんどん渦巻いて強化するはずだが、なぜか大きくならない」
「それは不思議ですねぇ……」
「まるで、誰かがそれらの念を吸い取っているようだ……」
「えっ! ということは?」
「はっきり分からんが、我(魔王)のような存在がいるのかもしれないな……」
二人は不可解な状況について、情報共有しながらも、長距離弾の製造に集中するのであった。
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