表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
503/1933

第503話 ルカレシア聖教会樹立

<ルカレシア聖帝国・聖帝城・執務室>


イグナス神父(教会代表)より、

提案があるというので、御前会議を開くことになった。

他の出席者は僕、テネシア元帥、イレーネ宰相、

ルザン筆頭内政官、ビイネス財務官、

バハナ大将、ブリント将軍、ギラン将軍、マキシ将軍だ。



「イグナス教会の名称を変更したいと思います」



「ああ? 教会の名称変更か? 好きにしたらいいんじゃないか?」


なんだ? そんなことかと思ったが次の言葉を聞いて、二の句が継げなそうになる。


「新しい名称は聖帝陛下の聖名をとって、アレス教会、もしくはギルフォード教会等にしたいのですが、宜しいでしょうか?」


「はぁ!?」


おいおい、ちょっと待てよ!


みんなも呆れてるだろ?


しかし、周りを見ると、意外にも「いいんじゃないか」という雰囲気。

テネシアやイレーネあたりは、「ふふん、当然」とドヤ顔になってる始末。

いやいや、ダメでしょ。この流れは変えよう。


「いや~僕の名前を使うのは正直、勘弁かな」


「どうしてでしょう?」


少し狡いがここは質問返しをさせてもらおう。

こういう時に有効な交渉術の一つだよね。


「イグナス神父こそ、なぜ、僕の名前を使いたがるのだ?」


すると、イグナス神父(教会代表)は席を立ちあがり、自信を持って答える。


「それは、この聖帝国は聖帝陛下のお蔭で成り立っているからです! 元々、エルメス帝国の悪政により、民が苦しんでいましたが、聖帝陛下がお助けになりました。安全な場所、住居、衣服、食事、すべて聖帝陛下が私財を投じてご用意されたと伺っております。


 民のため、ここまで尽くしてくれる指導者は見たことがございません。まさに現人神のようなお方です。それに飛行船、防壁等、不思議な御力をお持ちです。これはまさに神の代行者たる証だと存じ上げます。教会が聖帝陛下にお付きする以上、聖帝陛下の聖名を付けるのが道理であるかと!」


 う~ん、立て板に水のようだな。さすが、教会の神父を長年やってるだけのことはある。まあ、気持ちは分かったが、ここは反論させてもらおう。


「ええと、イグナス教会長の熱い思いはよく伝わった。気持ちは有難く汲ませてもらおう。しかしながら、僕個人の名では些か都合が悪いのだ」


「どういうことでしょうか?」


「現在、僕が聖帝に就任しているが、いずれ将来は僕の子供が継ぐことになるだろう。その時、民が()()()を崇拝しきっていては、反動が生ずるだろう。つまり代替わりリスクの増大だ」


 これは現実に発生しうる問題だから、これまで長男ライナス、次男アレクへの跡継ぎの際も時間をかけて慎重に対応してきたんだよな。


しかし、イグナス教会代表より予想外の応答がきた。


「ええ!? 聖帝陛下はまだまだお若いではないですか? 見たところ二十代に見えますが、そんな先のことまでご心配されてるのですか?」


ああ、そうか……。イグナス教会代表は僕の『若返り』のことを知らなかったか。


「ふぅ~イグナス教会長、僕はこう見えて、結構、年がいってるぞ。すでに子供は十一人いるし、孫も二人いるからな」


「えっ!?」


「正直、年の話はあまりしたくないが、こう見えて、実は五十代だからな」


「えっ、冗談ですよね……」


 イグナス教会長が僕から視線を外し、周りを見回す。それを察してか、周りの者も小さく頷く。そして――


「ええええええええええええ――!!」


イグナス教会代表の絶叫が室内に響き渡るのだった。


 ロナンダル王国や連邦では僕の若返りは広く知れ渡っているため、こういう反応をされることはめっきり減ったが、ここ(聖帝国)で僕の若返りを知ってる者は側近等、一部の者だからな。今となってはこの若返りが僕の神格化に一役買っているのは想像がついてしまうよ。



 ◇    ◇    ◇



「先ほどは失礼しました……」



先程とは打って変わり、少し大人しい感じでイグナス教会長がポツリと呟く。


この間、休憩が入り、メイドがお茶を入れてくれた。


「うん、ありがとうね。このお茶はおいしいよ」


「ありがとうございます」


 ここのメイド達は現地採用した者をメリッサ(妃)やバイアス(執事)が指導したのだが、だいぶさまになってきたようだな。


そして、こういう小休止は会議の流れを変えたりするんだよな。

今回もそうさせてもらおう。


「それで、イグナス教会代表、僕個人の名前は勘弁してもらいたいわけなんだが、その代わり、この国の名前を使うのはどうだろうか?」


 反論した場合は必ず、代案を用意する。これが建設的な会議進行法だ。ただ反対するだけでは会議はまとまらないからね。反対だけなら難癖と同じだ。


「国の名前ですか?」


「そうだ。ルカレシア聖帝国だから、ルカレシア聖教会なんて、どうだろう?」


「ルカレシア聖教会……、なるほど、これならルカレシア聖帝陛下も同時に思い浮かべますし、よろしいかと存じます」


「これなら、僕の子供が継いだ時も違和感が少ないと思うんだ」


「なるほど……」


まわりも賛同の雰囲気のようだな。

それでは、これで決めるかな。



採決を取ろうとした。その瞬間――



ビイネス財務官がゆっくり手をあげる。何かあるのかな?


「私もルカレシア聖教会への名称変更は賛成です。国名を冠することにより、国威発揚にもなりますし、エルメス帝国の分断統治でバラバラになった民衆を一つにまとめるには強力な旗印が必要です。ただ一つ確認しておきたいのですが、その……政治と宗教との距離感です。


 国名を教会名に入れるということは、政治と宗教の密接な関係を意味しますが、それでも宜しいのでしょうか? すいません。反対してるわけではないのですが、宗教が力を持ちすぎると厄介な事例もあるようですので……」


 ビイネスはビイネス商会の長であり、この大陸の大商人でもある。宗教からみで嫌な経験でもあったのだろうか? 少し突っ込んで聞いてみよう。


「僕もとりわけ、宗教が好きというわけではないが、イグナス教会の教義は大まかに、良い事を言っている。だから民には教義の良い所、エッセンスを参考にしてもらいたいと思っているんだ。でも、これは盲目的に付き従うことを意味していない。何事もそうだが、ケースバイケースで対応すれば良いと思うんだが、何が心配な点でもあるのかな?」


「ええと、これはイグナス教会、いえルカレシア聖教会のことを言ってるわけではないのですが、教会の信徒は清廉潔白、清貧を旨とする者が多く、中には、私達のような商人を金の亡者と蔑む者もおります。まあ、これは教会というより、個人の資質の問題かもしれませんが、金儲け、つまり経済活動を阻害する考えが高まると、間接的に国家運営にもマイナスになるかと……」


 僕も商人だから、経済活動を重視するビイネス財務官の気持ちはよく分かる。しかし、警戒心が強すぎる感じもするなぁ。母国のギルフォード商会はマール教会の教義を取り入れて、嘘を言わず、誠実な商売を心がけているし、慈善活動も力を入れてるが、繁盛する一方だぞ。


「イグナス教会代表、教会の教えでは金儲けは禁じているのかな?」


「いえ、正当な手段で働き、その対価を得るのであれば、なんら問題ありません」


「そうだよな……」


「問題があるとすれば、相手を騙したり、奪ったりする行為です」


「まあ、それも当然だよな」


「ビイネス財務官、商人達はそんなやましいことはしてないよな?」


「はい、少なくとも、私はしていません」


「真っ当な商売をしてれば、教会の教えは経済活動を阻害しないと思う。むしろ、おかしな商売をしてる者を排除するので、経済活動は健全化されるんじゃないだろうか」


「そう、言われれば、そうですね……」



ビイネス財務官は納得してくれたかな?

すると今度はバハナ大将が手をあげる。

今度は何だろう?



「私もルカレシア聖教会の樹立に異を唱える者ではありませんが、少し確認したいことがございます」


「なんだい?」


「はい、おそらく教会の教義では暴力や殺人は禁じられてると思われますが、その辺りは聖帝国として、どうお考えでしょうか?」


バハナ大将は僕の考えを熟知してるだろうが、改めて再確認したいのだな。


「僕も基本的に暴力や殺人は避けるべきだと考えている。この点は教会の教義と変わらない。だが、現実問題、こちらが攻撃しなくても、向こうから攻撃してくる場合というのが往々にしてある。その際、教会の教義に縛られて、思考停止になり、黙ってやられる選択肢は無い」


「すると教会の教義は絶対という基準ではないのですね?」


「その通り。日常的にそれが守れる環境下にいる間だろうな。簡単に言えば、平時の場合だ」


 すると、少しイグナス教会代表の表情が曇る。まあ、あからさまに教義が絶対でないと言われれば、そうなるのも自然だろう。少し補足するか。


「間違ってはいけないのは、これは教義を疎かにするという趣旨ではない。平時は教義を守ることができるのだから、平時をできるだけ長くすればいい話だ。そして、その平時を長くすることこそが僕らの仕事だ」


 この言葉を聞いて、イグナス教会代表は表情が明るくなる。うん、わかりやすい人だな。でも、こういう人は付き合いやすい。



 ◇    ◇    ◇


 

 最終的にルカレシア聖教会の樹立が決まり、国名を冠することから、事実上、国教のような扱いになった。政教分離の反対、つまり政教一致だ。政治と宗教の代表を僕が兼任する形だね。


 但し、政教一致とは言え、宗教の権限が強くなり過ぎないよう、教えを民に強制しないこと。それと、非常時は教義に縛られない国家運営をすることが確認された。


平時  ― 教義に沿う生き方(任意)

非常時 ― 教義に縛られない対応


 その後、聖帝の保護の元、事実上の国教となったことにより、地下活動が中心だった教会は布教活動を正常に行えるようになり、信徒を増やしていくことになるのであった。



※参考※


教会名   ルカレシア聖教会

崇拝対象  神、神の使徒(聖帝)←主人公の意向により、個人崇拝を控える。

教会責任者 イグナス教会代表

教義    『真』『善』『美』に基づく生き方(理論より実践)

教会本部  ルカレシア地方の聖帝城近くに本部を新設、

      尚、バレシア地方の拠点も布教活動のため増設。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ