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第502話 バレシア地方(保護領化)

「な、なんだ! あれはあああ!!」


「そ、空に船が浮いてるぞ!!」


「あれは聖帝国の船か!?」


「バレシア地方は聖帝国側についたのか!?」


「や、ヤバい、逃げろ!!」



また、エルメス帝国の軍隊が引き返していく。


 イグナス教会の保護要請に基づき、バレシア地方の南側沿い(エルメス帝国側)に飛行船を浮かべてみたが、効果抜群だった。境界沿いに飛行船(中)空母型を三十隻ほど浮かべているが、これなら、嫌でも目立つだろう。


 今回は威嚇目的なので、【隠蔽】を解除したが、あまり高度をあげると視覚的に威圧できないと思い、低高度で浮かせている。低高度と言っても、お城のてっぺんぐらいの高さはあるだろうが、目の前の大きな船体はそれだけでも怖く感じるだろう。この世界に空を飛ぶ人工物など存在しないのだから。


 ただ、これだけ低いと大砲の射程範囲になりそうなので、しっかり【結界】は張っている。まあ、その心配をするまでもなく、みんな脱兎のごとく逃げていくけどね。ははは。


 飛行船による威嚇効果をしっかり確認できたので、さらに境界に防壁をつくることを決めた。飛行船はあくまで「初見殺し」だ。慣れれば、攻撃してくるだろうから、その間に必要なことをやってしまおう。


 さて、僕は飛行船の軍事利用、もっと正確に言えば、攻撃利用をしないと決めているが、威嚇についてはギリギリセーフという結論に至った。威嚇は攻撃の準備段階と解釈できなくもないが、まだ手を出していない。ボクシングで言えば、ファイティングポーズを取っただけの状態だ。


 問題はこのファイティングポーズだが、自然界の動物達は防衛本能に組み込まれており、みんな当たり前のように威嚇する。猫は爪を出し、犬は吠え、牛は角を向け、鳥は翼を広げる。これらの行為は攻撃したくて威嚇するというより、攻撃されたくなくて、威嚇する意味が大きいんだと思うんだ。


 ボクシングのファイティングポーズも実は攻撃を防ぐ意味の方が大きいんじゃないだろうか。ノーガードは「殴って下さい」と言ってるようなものだ。威嚇は「攻撃するなら、こちらも攻撃するぞ」という意思表示であり、それにより、向こうの攻撃を防ぐのが目的だ。つまり結果的に戦闘を避けられるのだ。 


 「戦闘するぞ!」と覚悟をすれば、戦闘にならず、「戦闘は嫌だ!」と何もしなかったら、攻められてしまう。平和とは何もしないで得られるものではない。平和を維持する覚悟と具体的な行動が必要なのだ。



 ◇    ◇    ◇



イグナス神父とバレシア地方の南側境界に来ている。


「皆さんを保護するのに防壁が必要だが、境界全部に設置してもいいかな?」


「防壁ですか? ああ、帝国と聖帝国の間にある大きな壁のことですね? 確かにあれがあれば非常に安心ですが、ゼロからつくるのは大変でしょう」


「いや、僕の力があれば、簡単だよ。やろうか?」


「確かに聖帝陛下のお力は存じ上げておりますが、まさか、そこまでは……」




 <<「防壁を【複写】!!!」>>>




一瞬にして、巨大な壁が出現! 


しかも視界の及ぶはるか向こうまで壁が続いている。



「なっ! こ、これは! えっ! な! えええええ!!!」


「防壁の建造は完了したよ。これでバレシア地方に帝国軍が入ることもできなくなり、しっかり保護されるだろう」


「す、素晴らしいいい!! 本当に聖帝陛下は神の使徒だったんですね!!」



そして、イグナス神父が深く頭を下げ――



「……聖帝陛下にぜひ仕えさせて下さい」


「え、いやあ、僕はそんな大した人間じゃないよ……」


「いやいや、ご謙遜が過ぎます。聖帝陛下にご迷惑はおかけ致しません。聖帝陛下の治世に協力したいのが、私の本意なのです」


 イグナス神父はマキシ将軍とも懇意にしてるし、何より避難民の救出に協力してくれてるから、僕らの陣営に加わってもらったが、何とも積極的な人だよなぁ。


「まあ、ほどほどに頼むよ」


 この後、マキシ将軍も加わり、保護領の方針を話し合ったが、ここが保護領となり、安全がある程度、確保されたということで、聖帝国への移民はペースダウンすることにした。その代わり、ここが実質的に聖帝国の保護領となったことを聞きつけて、南のバルン地方から新たな避難民が押し寄せてくるだろうから、その受入れと救援活動に重点を置くこととなった。


 バレシア地方は、ついこの前まで、助けてもらう側だったが、今度は助ける側に回ったのだ。このまま行くと、エルメス帝国は本当に人がいなくなってしまうんじゃないだろうか?


 人は居心地の良い所に集まり、反対に居心地の悪い場所から離れるものだ。エルメス帝国は自ら、居心地の悪い場所にしてるわけだから、この流れは止まることは無いだろうな。



※エルメス(ルカレシア)大陸の支配地概要※


      【北】

   亜人地域(ルカレシア地方)ルカレシア聖帝国の都

   人間地域(ルーラス地方)ルカレシア聖帝国

【西】人間地域(ガレシア地方)ルカレシア聖帝国【東】

   人間地域(バレシア地方)エルメス帝国 ←★聖帝国の実質保護領化

   人間地域(バルン地方)エルメス帝国

   人間地域(メス地方)エルメス帝国の都 ※通称「本国」

      【南】



 しかし、大した戦いもしてないのに、勝手に領地が増えていくから、内心、ほくそ笑んでしまう。自分が意図したわけではないが、ここまで見ると、「サラミ戦術」のようになっているよな。


 海上で謎の戦力により、帝国近海での制海権を確保できなくなったが、こちらは制空権を確保している。今回、バレシア地方(保護領)とバルン地方(帝国領)の境界に飛行船を浮かべたことで、それを誇示する形になったが、結果的には良かったかもな。ここの境界の防壁には検問所を設置してるから、無害な避難民はどんどん受け入れるつもりだ。


 そしてこれまで、つくった境界同様、聖帝や聖帝国に敵意がある者は近づくと、失明状態になるよう【認識偽装】スキルが組み込まれているため、侵入対策もバッチリだ。防壁にも大砲の砲弾ぐらいなら防げる【結界】を入れてるしね。


しかし、エルメス帝国は民がどんどん流出して、一体、どうする気だろうね?

残るのは狂信的な指導者だけじゃないか? 彼らの行動原理はさっぱり分からない。


――――

――――――


<エルメス帝国・皇帝城・支配者の間>


 皇帝キース・サンドラ、宰相カバール、魔賢者エルライナが円卓を囲む。皇帝は魔王エリシアール、宰相は魔竜カサンドラに憑依されてる状態、目付きが以前より険しくなっている。


エルライナ「カサンドラ殿のお蔭で、忌々しい聖帝国の軍船を追い払えました。これで我が帝国の制海権も確保できたことでしょう」


カサンドラ「アノ程度の船を薙ぎ払うなど造作もないコト、しかし、あれっきり、まったく来なくなってしまったナ。奴らは臆病者カ? もっと楽しめると思ったノニ」


エルライナ「ふふ、聖帝の入れ知恵でしょう。犠牲を最小限に抑えるための。相変わらず小賢しい男です」


魔王「それより、最近、供物が減っておるぞ。どうしたんだ?」


エルライナ「魔王様、実は最近、聖帝が避難民の受入れを強化しており、人が少なくなっているのです」


魔王「なんだと! 奴のせいか!」


エルライナ「しかも、またも我が領地を勝手に奪って、勢力を拡大しています」


魔王「……軍隊はどうしてる?」


エルライナ「それが、空を飛ぶ船に恐れてしまい、まったく役に立ちません。しかも、その間に壁を建造してしまいました。あれは聖帝の力によるものでしょう」


魔王「空飛ぶ船に、壁か……」


エルライナ「空飛ぶ船は情報があまりありませんが、あの壁には結界魔法が付与されています。並みの攻撃では歯が立ちません。いかがいたしましょうか?」


魔王「我の最新兵器が完成するにはもう少し時間が必要だ。カサンドラ頼めるか?」


カサンドラ「魔王様からのご命令とアレバ、喜んでいこう。戦いは望むところダ」


魔王「ふふふ、よく言った。カサンドラよ。必ずや宿敵を倒してまいれ」


カランドラ「承知シタ」



 エルメス帝国の支配者は既に三人とも魔界の者(魔王・魔人・魔竜)となっており、正常な国家の体を為していなかった。薄暗い城内で、三人はいつまでも不気味な笑みを浮かべるのであった。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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