第439話 ダルト王国の連邦参加
これまで、仮想敵国であるエルメス帝国への対策として、徹底的に情報流出を避けてきた。エルメス帝国にダルト王国とロナンダル連邦の情報を流さなければ、こちらの情勢が分からない。これにより情報戦で相当優位に立ってきたと思う。我ながらこの戦略は功を奏してきたと自負している。ふふふ。武力を使わない情報戦は僕と相性ピッタリだ。
それと同時に、ロナンダル大陸の国々にもダルト王国の情報を流さないようにしてきた。これは友好国に余計な混乱と心配をかけたくなかったのが大きい。そのため、先ずロナンダル王国が交流を開始し、問題無さそうなら、少しずつ交流を広げていくようにしたのだが、これまでギルフォード王国も交流に加わり、三国同盟まで締結している。
それで、そろそろ次の段階を考えていたところで、大火災が大きな契機となった。これにより僕の情報がダルト王国に知れ渡ったし、内偵隊がエルメス帝国に一時拘束されたことにより、どうやら僕の情報も一部、向こうに流れてしまった可能性がある。
既に軍船の数はエルメス帝国を圧倒してるし、いつまでもビクビク情報を隠そうとしなくてもいいんじゃないかな? 当然、情報戦は続けるつもりだけど、こちらも向こうの情報を大分把握したしね。それで、いよいよダルト王国のことをロナンダル連邦各国に情報開示しよう考えるようになった。もう、いいかげん、いいだろう。(既に相当流れてるだろうし)
実はダルト王国の情報はエルスラ共和国には内々で開示済み。最近、息子のシルエスと中央議会の関係が良好であり、その雰囲気に乗って、他国に先駆けて教えたのだ。理由は簡単。僕が連邦会議でダルト王国の情報を開示した際に、同調して欲しいからだ。それと王家で家族付き合いをしているヒルロア王国にも根回し済みだ。
さて、準備は整った。連邦会議を招集しよう。
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<ギースの聖王城>
これから連邦会議を開く。出席者は、僕(連邦聖王)
ライナス王(ロナンダル王国)、アレク王太子(ギルフォード王国)
シャイネル公爵(バナン王国)、キリシア王女(ハロル王国)
クローネ王妃(ヒルロア王国)、チルザーレ国王(チルザーレ王国)
シュルツ議長(エルスラ共和国)そしてトーマス宰相(ダルト王国)だ。
今回、ライナスとアレクは連邦会議、初出席だ。緊張するだろうが、慣れて欲しい。そして本日の目玉であるダルト王国の情報開示の議題についてはトーマス宰相にもオブザーバーとして出席してもらっている。
僕「既に一部情報は流れていると思いますが、本日はダルト王国について、正式に情報開示します。この王国は島国で、我が大陸とエルメス帝国との中間地点にあり、防衛の要衝として、地政学的に重視すべき地域です。それにロナンダル王国、ギルフォード王国とも友好的に交流しております。今後は三か国だけでなく、ロナンダル連邦でも交流を深めていければと思いますが、皆さんはどうお考えでしょうか?」
取り敢えず、通り一遍の報告をしてみた。
さて、これでどんな反応があるだろうか?
チルザーレ国王「ダルト王国? 王国ということは王はいるのかな?」
早速、来たな。正直に答えよう。
僕「はい、僕が国王です」
一同「…………」
一同「「「ええええええ!! 聖王陛下が国王!?」」」
既に根回ししているシュルツ議長、クローネ王妃はさほど驚かない。ライナス、アレクも同様だ。本当に驚いたのはチルザーレ国王、シャイネル公爵、キリシア王女だな。しかし、根回し済みで既知の情報でも、こういう場でまわりに合せて、驚いたふりができるのは外交上手と言えよう。シュルツ議長とクローネ王妃はさすがだ。その点、ライナスとアレクはまだまだだな。後で言い聞かせておこう。初会議だからしかたないけど、こういう場所では仮面も被らないとね。
チルザーレ国王「一体、どういうことじゃ?」
僕「実はダルト王国は以前、エルメス帝国の支配地でしたが、僕がその支配から逃れるお手伝いをしたんです。その縁で僕がダルト王国の国王になりました。実際の内政はこちらのトーマス宰相がしきってますがね」
ここでトーマス宰相に自己紹介してもらう段取り。
トーマス「ロナンダル連邦各国代表の皆様方、お初にお目にかかります。私がダルト王国の宰相、トーマス・エルグです。本日は連邦会議に出席する機会を与えて頂き深く感謝申し上げます。これを機に皆様と交流を開くことを切に希望します。どうぞお引き立てのほどよろしくお願い申し上げます」
パチパチパチパチ!
間髪入れず、クローネ王妃、シュルツ議長が拍手を始め、
つられて、全員が拍手をした。(僕の仕込み)
「皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます」
根回しが利き過ぎたのか、あっけなく受け入れられてしまった。
まあ、友好国が増えるのだから、誰も反対するわけないか。
僕「今後はダルト王国の連邦加盟に向けて、準備していきたいので、連邦会議にもオブザーバー参加を認めてもらいたいのですが、いかがでしょうか?」
一同「「「意義な――し!」」」
今回、ライナス、アレク、そしてトーマス宰相を連邦会議にデビューさせることができて良かった。ダルト王国が早期に連邦に加盟できればいいよな。急ぎ準備していこう。
◇ ◇ ◇
ダルト王国は距離があるが、物資の移動運搬は飛行船を利用すれば、カバーできるだろう。これまでは制限してきたが、速度はいくらでも調整できるので、もっと高速にしよう。高速飛行船にしたら、数時間で移動可能だ。(昔の帆船だったら、どれぐらいかかるか見当もつかない)
それと人の移動については、取り敢えず、国のトップと重役(王族、側近等)、上位役人、上位軍人、各国の指定商人あたりかな。そして移動手段は『転移扉』も併用するつもりだ。但しトラブルを避けるため、『転移扉』の利用可能者は予め制限しよう。『転移扉』のある部屋を転移専用室とし、各国の中枢施設(王城等)に置いてもらうが、全て、連邦の本拠地たるギースの聖王城につなげるようにする。こうすれば、こちら(ギース)で各国の移動のチェック・把握もできるし、万一の危険要因(暗殺者、間者等)も排除できる。
例えば、A国からB国へ移動する場合の経路はこんな感じ。
(一)A国の『転移扉』から入る→聖王城の『転移扉』から出る。
(二)聖王城の転移専用室で転移者のチェック確認
(三)聖王城の別の『転移扉』に入る→B国の『転移扉』から出る
ちなみに『転移扉』が運用されても、連邦会議を開催する際の各国代表招致は、これまで通り、僕が各国へ【転移】でお迎えにいくつもりだ。その方が先方へ礼を尽くせるからだが、初期の頃は、意識的に会議の前後で僕のチートスキルを実体験してもらうことにより、僕と言う人間を理解してもらう意味合いもあったんだよね。スキルの説明は言葉より実体験が楽だ。
これを地道に続けてきたからこそ、僕が実現困難な提案をしても、一笑に付されることなく、「聖王陛下なら可能じゃないか」と理解させる方法に働いたんだと思う。つまり普段から僕のチートスキルに慣れてもらうってことだ。
実はダルト王国のトーマス宰相や五人の有力者達も、少し僕へ警戒があったようだが、あの大火災の対処と復旧作業を通して、一気に警戒が溶けたようだ。以前は形式的な国王という感じが拭えなかったが、あれ以来、本当の国王になった感じがする。ダルト王国の民衆と接したのも大きいな。
やはり信用を築くには日頃の地道な行動が必要だ。
ただねぇ……僕があまりダルト王国のトップで出過ぎるのも不味いと思っているんだよ。ここは元々、トーマス宰相と五人の有職者達がしっかりしてるからねぇ。それに見たところ、国民の水準も高い。信頼を築きつつも、一歩二歩引いた感じで国政に携わりたいかな。
僕はいずれフェードアウトする身だし……
国によって、王政の在り方が違うから、国王の露出の加減はなかなか難しい。それにゆくゆくは誰かに王位を引き継ぎたい。そう言えばトーマスはまだ独り身だったな……年齢は三十代ぐらいかな?この世界の人は結婚が十代、二十代と早いので、それに比べたら少し遅れ気味になるのかもしれないな。ただ三十代の独り身の宰相と言ったら、大陸(連邦)なら、引く手あまただろう。ダルト王国という大陸(連邦)から離れた島国だから、これまで騒がれなかったが、今後、情報が流れ出すと、そうもいかなくなるだろう。王侯貴族はその方面に目ざといからね。
これまで女っ気のない研究職をしてきたし、エルメス帝国侵攻時には救国活動に専念してきたわけだから、出会いが少なかったのも頷けるが、彼は間違いなく超有望株だ。誰か良い相手はいないものかな。
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