第435話 連邦内部会議
連邦内部会議は続く。
僕のルーチンワーク(悪想念収納)により、なんと連邦海軍の「殺意」も収納していたよ。そう言えば、定期的に、僕(連邦聖王)達に対する悪想念を収納してきたが、たまに「僕たちに対する」制限を外すこともあったら、そうなるとに連邦全土の人々に範囲が広がり、連邦海軍も当然、含まれてしまうよな。
まあ、長期間、放置したら、また悪想念はじわじわ沸いてくるから、完全に無くなったわけではないけど、防衛に携わる軍人が「殺意」を弱めて大丈夫なんだろうか?
殺意の無い(少ない)軍人……、なんか壮大な実験のような気もするが、取り敢えず大事にしないでおこう。これまでも特に問題は起きてないし。と言うより、むしろかなりうまくいってるしな。
それに僕も、殺さないで敵を無力化する方向に舵を切ってるからね。僕の軍隊がそうなってもおかしくない。よし、そう考えるとしよう。
ロルアス「あの……」
僕「あっ!」
ロルアス「陛下、大丈夫ですか?」
僕「悪い悪い! 考え事をしてた。続けてくれ」
ロルアス「エルメス帝国は武力により、支配地を拡大し、そこから略奪することで成り立っています。そして大陸全土を制覇し、今度は西方を狙ってきたというわけです」
僕「略奪経済か……、絶対に真似したくないな」
前世で習った列強による植民地政策みたいだな。
ロルアス「そうですね……」
僕「バハナ大将、ブリント将軍、今の報告で追加や修正はあるか?」
バハナ「皇帝陛下と側近の二人ですが、いつも皇帝城の謁見の間では、御簾越しに会話します。顔が分かってるのは実務をしてるカバール宰相だけです」
僕「御簾越し? すだれのこと?」
バハナ「そうです」
僕「……」
なんだ、それ? 顔を隠すなんて、何かやましいことでもあるんじゃないのか?
僕「それじゃ、帝国の人は自分達の代表である皇帝の顔を知らないってこと?」
バハナ「……その通りです」
僕「どう考えても、変だよな?」
バハナ「確かにそうですね。今なら、はっきりそう思います」
僕「それじゃ、エルメス帝国の軍人はそう思わないんだろうか?」
バハナ「……私も向こうにいましたが、向こうにいた時はなぜかそれが普通だと思っていました」
う~ん、エルメス帝国の皇帝とその側近、怪しさプンプン丸だよな。
そうだ!いくら御簾越しでも、【隠蔽】【透過】【転移】【念話】スキルのある内偵隊なら、顔を確認してるだろう。皇帝と側近の情報は無いのか?
僕「ロルアス長官、内偵隊は皇帝の城にも入ったんだよな?」
ロルアス「ええと、それがなぜか記憶があやふやらしいのです。入ったような入ってないような……」
僕「なんだ、それは!?」
どう考えても変だろ。
僕「悪いけど、皇帝の城に入った内偵の者をここへ呼んでくれるかな?【転移】できるだろう?」
ロルアス「いいのですか?」
僕「かまわない。直接、僕が聞く」
ロルアス「わかりました。少しお待ちください……」
ロルアスが内偵の者と【念話】をする。
ロルアス「陛下、今、転移してきますので」
しばらくして、内偵の者が目の前に現れた。
んん、なんか表情が虚ろだなぁ……、疲れているのかな。
僕「おい、大丈夫か?」
内偵「……」
ロルアス「おい、陛下の御前だぞ! しっかりしろ!」
内偵「……」
ここで、まわりのみんなも異変に気付く。ここに来てから、この内偵の男は無言、無表情だし、なんか瞳孔がずっと開いてる感じだ。まるで人形のような……
すると内偵の男は表情が一変、不気味な笑みを浮かべだす。
「ぐああああああ!」
剣で切りかかってきた。
しかし――
「剣を【収納】!」 「足を【停止】!」
「がはっ!」
これで丸腰になり、勢い余って床に倒れる。そしてすぐに――
「【精神支配】!質問に答えよ。お前にこの術をかけたのは誰だ?」
「うううう!」
何と、抵抗して答えようとしない。以前にもこういうことがあったな……
あれは魔力の強い魔人相手だった。
でも、あの当時より今の僕は何倍もパワーアップしている。
<<「【精神支配】! お前にこの術をかけたのは誰だ?」>>」
「こ、皇帝の近くの男……」
「皇帝の側近か?」
「そうだ。側近だ……」
この術?魔法?は他人を操るものだな。それなら――
「この男に【状態異常無効】!」
「ううう!」
まだ抵抗するのか!? なんて力だ!
ええい、
<<「【状態異常無効】!」>>
「うう……」
もっと、集中して
<<<<「【状態異常無効】!!」>>>>
「うっ!」
内偵の男が気を失うが、すかさずテネシアが頬をペチペチ叩く。
テネシアはこういうのが得意だよな。手慣れたものだ。
「おい!起きろおお――!」
「あっ、私は……」
テネシアのバカでかい声で目を覚ましたようだ。
「おお、目を覚ましたか」
「へ、陛下、ここは……」
「ギースの聖王城だ。今までのことは覚えているか?」
「はい、私はエルメス帝国の城に潜入しましたが、皇帝のいる謁見の間に入り……」
「そこからの記憶があいまいなんだな?」
「そ、そうです」
ここで、全員の方を見る。
「彼は敵に記憶を消され、あらかじめ僕らを襲うように術をかけられていたようだ」
イレーネ「術って魔法でしょうか?」
僕「状況からたぶんそうだな。僕の魔法にも抵抗するぐらい強かったし」
バハナ大将、ブリント将軍が思案顔になる。
僕「皇帝の側近には宰相ともう一人、謎の男がいるようだが、この魔法を使ったのはその人物の可能性が高そうだな……」
バハナ「そうですね。皇帝や宰相は考えにくいですし、もう一人の側近の仕業と考えるのが自然でしょう」
その後、執事のバイアスを呼び、内偵の男に休息を取らせるよう指示を出す。しかし、これまで内偵隊の活動は順調だったが、返り討ちにあったのは初めてた。敵城内の内偵は厳しそうだな。
◇ ◇ ◇
休憩後、会議再開
途中、予定外のハプニングで、大立ち回りがあったが、取り敢えず敵の情報が掴めたので、結果オーライとしよう。さて、会議を再開するぞ。
僕「会議前に軍船の数を計算したんだが、ロナンダル連邦は二百五十隻に対し、エルメス帝国は五十隻だ。単純に五倍も差がある。むろん、これは、バハナ大将の報告が正しいのと、その後、向こうの軍船が増えていなければの話だが」
バハナ「私の報告は以前の数字ですので、その後、軍船が増えていれば、変わってきますね」
僕「やはり、そうだよな。最近まで向こうにいたブリント将軍は軍船の数が分かるか?」
ブリント「私が向こうにいた時は確かに五十隻ぐらいでした。増やすにしても、すぐには無理です。どんなに急いでも数年はかかるでしょう」
僕「……と言うことは現状なら、こちらが軍船の数で圧倒的に有利ということだな」
一同、考え込む。そして――
バハナ「確かにそうですね」
僕「今後の方針だが、二択だ。一つは現状のままで、こちらからは一切攻撃せず、来たら有難く仲間に受け入れ続ける」
一同、静かに聞き入る。
僕「もう一つは、この戦力差の情報を向こうに流し、圧倒的兵力の差を認識させ、戦意喪失させること。但し、本当に戦意喪失するかどうか確証はない」
本当はもう一つあるんだが、これは言わないでおこう。それは圧倒的戦力により、敵を先制攻撃すること。しかし、連邦軍は防衛のための軍隊であり、先制攻撃を目的としない。第一、先制攻撃は僕のポリシーに大いに反する。胸の内だけにしまっておこう。
ブリント「陛下、帝国は急ピッチで軍船を建造中です」
僕「そこで、この戦力差を聞いたら、どう出るかな?」
ブリント「それでも戦力を増強して、攻めてくると思われます」
僕「う~ん、それじゃ最初の案、これまで通りで行くか?」
バハナ「当面はそれしか無さそうです」
会議の結果、今まで通りの方針で行くこととした。つまり、こちらからは攻撃しない。向こうが来たら防衛するが、なるべく殺さず仲間にする。ということだ。
しかし、技術優先の国と思っていたが、
皇帝の側近に魔法を使える者がいるとは……
技術だけでも厄介なのに、魔法が加わるとはな。
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