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第424話 シルエスの進路

~シルエス視点~


 先日、父上から、将来の進路について話を受けた。いきなりだったので、少し驚いたけど、僕ら王族は将来、王族らしい仕事に就くことは想定していたので、「いつか来るな」とは思っていたんだ。でも、「ちょっと早くない?」だって僕はまだ十才だよ。


 父上の話だと隣国、エルスラ共和国の総督という仕事らしい。父上によるとロナンダル王国を継いだライナス兄様、ギルフォード王国を継ぐ予定のアレク兄様、そしてギルフォード商会を継ぐ予定のミローネ姉様より、ずっと楽らしい。なんでも名誉職みたいなものだとか。(ホンマかいな?)


「そう言えば、父上はエルスラ共和国へ行く頻度が少なくなっていたな」


 昔、エルスラ共和国が建国された頃は忙しかったらしいが、有力貴族が話し合いで国政を担う共和国になってからは、総督の出番も少なくなったとのこと。現在は中央議会に出席する顧問みたいなもので、月に数回、話を聞きにいって感じ。もちろん意見があれば、言ってもいいが、現在は中央議会が自主的に動いてるので、意見を言う必要もだいぶ少なくなってるらしい。


 確かに兄上や姉上の引き継ぎを見てきたから、引き継ぎの大変さは何となく分かるよ。特に長男のライナス兄様は大変だったと思う。最近、王位に着いたけど、本当によくやってるよ。


 父上も母上も「悪い話じゃない」と言ってくれるし、エルスラ共和国は隣国、友好国でもあるので、正直、「まあ、いいんじゃないかな」ぐらいの気持ちにはなっている。


どの道、王族の男子なら、進路というのは分かり切っていたからね。


「僕ら王族の男子は国のため、民のために尽くすことが仕事だ」


 これは父上がよく言っていたっけ。今度、エルスラ共和国に視察に行くことになったけど、その前に親友に相談してみよう。彼らはどう考えるだろうか?


――――

――――――


 王立学園の授業終了後、親友であるタイタスとディオネを誘い、王都の喫茶店に寄った。いつもは馬車で帰るけど、今日は帰宅途中で馬車を止めてもらい、ギルフォード商会系列の喫茶的に寄り道したんだ。ここなら防犯もしっかりしてるし、最近流行りのお茶とお菓子も楽しめる。実はミローネ姉様にお願いして席を予約してもらったんだ。さすが商会の副会長だ。


シルエス「実は二人に相談があるんだよ」

タイタス「なんだい?」

ディオネ「何かしら?」


シルエス「実は父上から、将来の進路について話があったんだよ。エルスラ共和国の総督はどうかって」


タイタス「エルスラ共和国の総督?」

ディオネ「隣国の偉い人かしら?」


シルエス「昔、父上が隣国を助けたことへの報恩で、総督になってるらしいけど、それを息子の僕にも引き継いで欲しいみたい」


タイタス「なるほど、それでシルエスはどうしたいの?」


シルエス「まあ、父上と母上が前向きみたいだし、悪い話ではないと思うけど、一応、検討中といった感じかな」


ディオネ「でも、十才で将来の進路って、早いわよね……」


シルエス「うん、僕もそう思う。だけど、いずれ決めなくちゃいけないし、王族の進路って、だいたいこんな感じになるんじゃないかと予測できてたし……」


タイタス「そうか、シルエスには上にお兄さん、お姉さんがいるからな……」


シルエス「ふふ、君達の兄、姉でもあるけどね。でも、確かに僕は身近に兄姉と接していたから、次は自分の番だという感じは強かったね」


ディオネ「シルエスの進路には反対しないし、うまくいけばいいと思うけど、隣国に行ってしまうのは寂しいわね」


シルエス「ああ、それならたぶん大丈夫だよ。僕らは転移アイテムがあるから、仕事時間だけ隣国に行くことになりそう。たぶんね。実はギルフォード王国の王太子になったアレク兄様も、ギルフォード商会の副会長になったミローネ姉様も朝晩は一緒に王宮でご飯を食べてるし、寝泊まりも王宮だから、向こうに行った感じがしない」


ディオネ「ええっ、そうなの!?」


シルエス「うん、僕らは別々の王宮に住んでるし、その件は緘口令を敷いてるから、あまり公になってないけど、僕の兄弟姉妹は全員、仕事場が違うだけで、一緒に住んでるんだ」


タイタス「僕は何となく、そんな気はしていたよ」


シルエス「そうかい?」


タイタス「だって、父上だって、王位を退任して、ギースに移ったはずなのに、頻繁に王宮で見かけるからね。母上テネシアも毎日、戻ってきてるし」


ディオネ「言われてみれば、母上イレーネも毎日、普通に戻ってきてました」


シルエス「父上が言うには転移アイテムがあれば、距離はまったく関係無くなるらしい。頭では理解してたけど、本当にそれを実行してるのを目の当たりにすると理解が追い付かないよね」


タイタス「確かにね」


シルエス「だから、僕がエルスラ共和国の総督になっても、たぶん、ここに住むと思う。だから君達との友情にきっと影響は出ないよ」


 厳密に言うと僕ら三人は兄弟だけど、同じ年だし、母親が違うので兄弟という感じがしない。昔からなんでも本音で話せる関係だ。二人と話して、だいぶスッキリした。


さあ、エルスラ共和国を見に行くか。


――――

――――――


~アレス視点~


 今日は僕、メリッサ、シルエスの三人で、エルスラ共和国に向かっている。いきなり転移で到着することも可能だが、今回は息子にエルスラ共和国を知ってもらうことが一番の目的なので、飛行船に乗っている。これなら上空から、国の様子を生で見ることができる。まさに視察だね。


 今回は僕が飛行船を運転している。予定時間より早めに出てきたので、エルスラ共和国の上空を見て回る。この飛行船なら海から山、中心街から郊外まで簡単に見渡すことができる。


シルエス「わあ、港が見えてきましたね」


僕「あの港はエルスラ共和国東部のマレイス領だ。総督領の一つで、ロナンダル王国のギース港、ギルフォード王国の港との三角貿易で発展してきたんだ」


シルエス「あの港町が総督領なんですか」


僕「現在はベイシアという代官に任せているから、大変なことはないな」


シルエス「そうなんですか。しかし、たくさん船が入ってきてますね」


僕「この港はエルスラ共和国で一番の貿易港だからな」


シルエス「へぇ、そうなんですか」


僕「さて、西側の内陸に行くぞ」



 ◇    ◇    ◇



飛行船が内陸部の上空を飛んでいる。


シルエス「内陸も発展してますね」


僕「ああ、あそこが中心地区だな。昔、王都があった場所だ。あそこにも領地があるんだ」


シルエス「総督領は港町の他に中心部にもあるんですか?」


僕「そうだ。中心部はサンダ領と言って、この国の一等地だ。昔、王族の領地だったらしい。立派な屋敷もあるぞ」


シルエス「へぇ~凄いですね。あれっ! 通り過ぎましたけど?」


僕「ああ、屋敷は最後に行く。その前に西側の郊外、自然地区も見てもらいたくてな」



 ◇    ◇    ◇



シルエス「だんだん、家が少なくなって、畑や自然が多くなってきましたね」


僕「このあたりは昔、亜人種族が多く住んでたようだが、今は人間ばかりになったみたいだな」


シルエス「亜人種族ですか。歴史の時間でウラバダ王国時代に差別、迫害が酷かったと習いました」


僕「そうだな。苛烈な迫害で、多くの亜人種族が他へ避難したんだ」


メリッサ「でも、その悪い王様をお父様が成敗したんですよ」(自慢げ)


シルエス「そうですよね。本で読みましたが、こうやって見ると実感します」


僕「この先は人も住まない奥地になるから、そろそろ引き返すか」


シルエス「しかし、この飛行船は速いですねぇ」


僕「普段はここまで速くしないが、今日はかなり速度をあげたんだ」


この飛行船は僕がつくったものだから、製作者の権限で速度制限を解除可能だ。


僕「よし、中央議会の議事堂に向かうぞ」


もうシュルツ議長ら、議員達は到着しているかな。少し急ごう。

速度を上げると、どんどん景色が変わっていった。


――――

――――――


<中央議会議事堂>


「総督閣下、お待ちしておりました!」


 入口で中央議会のメンバーが出迎えてくれる。ここはいつ来ても歓迎ムードなのが気に入っている。普段は部屋の入口ぐらいだが、今日は建物の入口で待っていたので、気合を感じてしまう。


「シルエス王子殿下ですか? 初めまして、中央議会議長のシュルツと申します」


「シルエスです。こちらこそよろしくお願いします」


 シルエスが議会のメンバー全員と挨拶を交わす。まだ十才の子供だが、我が子ながら、さすが王族教育を受けてきただけはある。こういう場面でも決して物怖じしない。


「さあ、どうぞ中へ」


 シュルツ議長に促され、議事堂に入っていく。ここは元々、王族施設だったが、現在は会議場になっている。以前、ウラバダ王の時代に贅沢を尽くしたらしく、旧王族関係施設はみんな豪華につくられている。確かに暴君だったが、残された建築物は歴史的価値があると言っていいだろう。僕は坊主(暴君)が憎くても袈裟(けさ)(建物)まで憎まない主義だ。これらの建物は大切に使わせてもらっている。


シルエスがあたりを見渡しながら――


「父上、立派な建物ですね……」(小声)

「前の王様の贅沢な置きお土産だよ。ふふ」(小声)


 シルエスとコソコソ話していたら、会議場に到着した。ここでいつも重要会議を開くんだが、まあ、僕の仕事場みたいなものだな。


「父上はどのくらいの頻度でここに来るのですか?」(小声)

「だいたい月に二、三回ぐらいかな」(小声)


「さあ、どうぞおかけになって下さい」

「ありがとう」


ドサッ


みんなで椅子に座る。


「ふぅ~」


思わずメリッサが息を吹く。

そうだ。メリッサも来てたんだな。忘れてないけど、

シルエスの方に意識を集中し過ぎていた。ははは。


「あっ、飲み物を用意します」


近くにいた職員が足早に準備に向かう。


 ここは現在、王族がいない国になっているので、対王族への緊張感が少なくなってる。でもそれは悪いことではない。ウラバダ王国時代のように暴君を恐れ、過度にピリピリした雰囲気より、少し気が抜けたまったりした雰囲気の方がはるかにマシだ。


メリッサ「あらっ、なんだか気を使わせてしまったみたいね」


シュルツ「いいえ、そんなことはございません」


ある議員「それにしても、いつ見ても、飛行船は凄いですね!」


その後、飛行船の話題で、ひとしきり盛り上がったので、聞いてみた。


僕「そう言えば、先日、シュルツ議長はギース城に来訪された際は船で来たのですか?」


シュルツ「いえ、ギルフォード商会の飛行船に乗ってきました」


僕「ああ、そうだったですね」


シュルツ「何度か利用しましたが、あの飛行船は本当に速くて便利です」


僕「そう言ってもらえると嬉しいね」


シュルツ「しかし、飛行船を利用すると隣国との距離をまったく感じませんでした。本当に近いです」


僕「まあ、そうですね」


シュルツ「両国はお互いに連邦国家ですが、特にロナンダル王国とエルスラ共和国の間は長い国境で接していますし、お互いに交流も多いです。昔から身内のような関係だと思っています」


僕「それは僕も同感です。友好的な関係を維持したいと思います」


シュルツ「現在、両国の絆を強めているのは“総督“です。ぜひ聖王陛下の代で終わることなく、シルエス王子殿下の代にも引き継いでくださるよう()()望みます」


僕「シルエスは見ての通り、まだ子供だし、これから将来のことも考える必要がある。まあ、検討はしていくだろうが、最終的に判断するには、もうしばらく時間が欲しいかな」


シュルツ「それでしたら、今後、聖王陛下がこちらへお越しになる際、シルエス王子殿下も同行されたら、いかがでしょうか? それでしたら、こちらの国情等もより分かると思います」


なるほど、判断するにしても判断材料が必要だからな……


よし、【念話】だ。


(シルエス、聞こえるか?)

(あっ、父上)


(シュルツ議長はこう言ってるけど、取り敢えず僕と一緒に議会に出てみるか? もちろん学校のある日は除いてな)


(聞くだけで大丈夫でしょうか?)


(うん、それで十分だ。君はここに来て、みんなと同じ空気を吸って、同じ雰囲気を感じることから始めればいい。そして、それは決して無駄にならない)


(わかりました。お受けします)

(よく言った!)


僕「え~シュルツ議長、それでは“お試し期間“ということで、次回以降、シルエスを会議に同行させよう」


シュルツ「おお! それは良かったです」


僕「ただしシルエスは学生の身分なので、学校のある日はダメだし、ほとんど聞くだけになってしまうが、それでもいいかい?」


シュルツ「なるべく学校のない日か、授業終了後の時間に調整するようにします」


僕「まあ、議会の方もいろいろスケジュールがあるだろうから、無理しないでね」


 この後、早速、シュルツ議長とシルエス(王子)が開催スケジュールの打合せを始めた。毎回は無理でも、月にニ回ぐらい参加できれば、相当、雰囲気を掴めるはずだ。どういう結果になったとしても、シルエスにとって、いい社会勉強になるだろう。


 僕は学生に社会人経験(労働)、社会人に学生のような勉強を体験させることに賛成の立場だ。視野を広げ、井の中の蛙にさせない効果を期待できるだろう。


 この会合の後、シュルツ議長と二人きりで話をし、「王政復古案」はシルエスに当面伏せておくことにした。理由はまだ決まった話でないのと、シルエスに過度なプレッシャーになると判断したからだ。実際は国王も総督も名前だけの差だが、名前の差が与えるインパクトが大きいからね。


王政復古案は


一、中央議会で権力維持すること

二、権威、象徴としての王。国威発揚

三、保護国時代の名残りである総督という役職名の改善

四、僕(聖王)との関係強化

五、連邦各国は王国が多く、引け目を感じないため

六、暴君時代から時間経過、王政への抵抗感減少


 等の意見によるものらしい。シュルツ議長と腹を割って話しをしたが、議会もまだ、この案に判断を出せておらず、それならいっその事、「国王候補者を見て判断しよう!」となったらしい。実はなんと、「聖王陛下(僕)を国王に!」という意見もあったらしいが、僕がロナンダル王国の王位を退任したのを受けて、一気に「それなら王子(僕の息子)を!」と傾いたようだ。


だけど、一点、これだけは確認しないとな……


僕「一番事情が分かるシュルツ議長が国王になったらいいんじゃないかな?」


シュルツ「もし私が国王になったら、私が自由に政治をできなくなってしまいます」


僕「え、今でもそうなの?」


シュルツ「ええ、ウラバダ王時代の反省から、国王に権力を持たせないというのは絶対条件になっています。それは今でも変わりません」


僕「なるほど……他のメンバーも同じなのかな?」


シュルツ「同じです」


僕「でも、僕が総督に就任した頃は王政復活の話はまったくなかったよね?」


シュルツ「前王政を倒した直後は、みんな王政自体に強いアレルギーがありましたからね。でも時間経過と連邦に加わってから、意識が変わっていきました。特に連邦放送の影響は大きいですね。他の王政国家は前王政とまったく違ってましたから。それで悪いのは王政そのものではなく、ウラバダ王が悪かったと冷静に分析できるようになりました。今ではむしろ、他はみんな王政なのに自国だけ違うことに違和感を持つ者も増えてきました」


 なるほど、意外なところで、連邦放送の影響が出ていたのか。王政と言っても、民のことを守り慈しむ王政と、民を虐げ搾取する王政ではまるっきり違う。やはり中身が大事なんだな。


国の求める国王の在り方について、少し考えさせられてしまった。

シルエス、シュルツ議長らとともにゆっくり考えていこう。

シルエスが成人(十五才)するまで、まだ五年もある。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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