第419話 連邦再編
王国内の全土に受信機を活用して、誰でも気軽に教育を受けられる『放送学園』を開始してから、しばらくして、チルザーレ国王から、連邦会議開催の要請が入った。
「ふふ、やはり連絡が入ったな……」
誰でも気軽に教育を受けられる画期的なシステムだ。いずれ他国にも情報が流れるとは思っていたが、思ったより反応が早かった。この反応は完全に予定通りだし、そして今後の流れも既にいろいろ考えている。さ~て、会議の準備をしよう。
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<王城・会議室>
これから連邦会議を開く。
出席者は僕、シャイネル公爵(バナン王国)、キリシア王女(ハロル王国)
クローネ王妃(ヒルロア王国)、チルザーレ国王(チルザーレ王国)
そしてシュルツ議長(エルスラ共和国)だ。
チルザーレ国王「聖王殿、『放送学園』というのを受信機で始めたらしいな」
僕「ええ、始めました。国中に教育を広めたかったですからね」
チルザーレ国王「国中に教育を広めるとな!? 平民達もか?」
僕「ええ、平民こそ国の宝ですから、彼らが教育を受け、優秀になれば、それだけ国が栄えると考えました」
チルザーレ国王「う~む……」
各国の代表達も腕組みしたり、思案顔になる。しかしこれも予想通りだ。ふふふ。
チルザーレ国王「聖王殿の言わんとすることは分かる。確かに民が優秀になれば、それだけ国も栄えるじゃろう。理屈はそうじゃ。だが……、我ら王侯貴族への反抗を企てる力も育ててしまいぞうじゃが、それはどうお考えじゃ? 諸刃の剣になりはしないか?」
諸刃の剣、鋭い指摘だな。でも……
僕「諸刃の剣、まさにその通りです。教育は民の力を強めますし、それは王侯貴族の怠慢や不正を見抜く力も強めるでしょう。でも不正さえしなければ、民は正しく判断してくれると思います」
チルザーレ国王「う~む……」
され、ここで、少し持論を展開するか。
僕「そもそも、自分達の権力を維持するために、民に教育の機会を与えないというのはあまりに器が小さすぎます。国家指導者なら大きな器を持つべきではないでしょうか? 民が優秀になるなら、それ以上に自分達が優秀になれば済む話なのです。逆に民に教育を与えず、愚かな状態にさせて、それに胡坐をかいて王侯貴族が勉強しなければ、国の発展は絶対にありえません。民も勉強し、それに負けないよう、王侯貴族も勉強することが国の発展に繋がると確信します。もちろん怠慢や不正等は論外です」
一同「…………」(みんな、真剣な表情だな)
チルザーレ国王「しかし、少し、心配じゃのう……」
僕「いえいえ、この放送は僕の国でしか、放送されていませんから、大丈夫ですよ」
チルザーレ国王「いや、そうでない。すでに我が国の民にも、貴国の『放送学園』の情報はかなり来ておってのう。相当な評判なのじゃ。ほとんどが我が国でもやって欲しいとな」
僕「そうですか」
ふふ、予測通り。内心ガッツポーズだが、
ここは顔に出したらいけない。あくまでポーカーフェイスだ。
しばし、沈黙が続く。
そして、各国の代表が口を開く。
シュルツ議長「我が国にも国民から問い合わせがたくさん来ております。ぜひ放送して欲しいと」
シャイネル公爵「我が国もです」
キリシア王女「うちもです」
クローネ王妃「こちらもです」
現在、連邦各国は人、物、金の交流が活発で、経済的な国境が事実上無くなっている。こうなることは予測通りだ。人の口に戸は立てられないからね。
僕「チルザーレ国王のご心配ですが、王侯貴族が怠慢や不正等をせず、民と同じ目線で、王国の発展に取り組むのであれば、まったくの杞憂となりますでしょう」
チルザーレ国王「そうなのか……、なら我が国にも『放送学園』を開始してもらいたいんじゃが、どうしたらいいのかのう?」
僕「『放送学園』を開始すること自体は簡単です。ギルフォード商会を通じて、受信機と教科書を販売しますので、それを購入して、始めるだけです」
チルザーレ国王「おお、なら、そうして欲しい」
僕「……ですが、もう一点、重要なことがございます」
チルザーレ国王「なんじゃ?」
僕「民の大多数は農民ですが、一日中、農作業では勉強どころではありません。まずはそれを改善する必要があります」
チルザーレ国王「う~む、なるほどのう、聖王殿はどうしたんじゃ?」
たぶん、ある程度の情報を入手した上で、確認してるな。
そうでなければ、国家運営等できるものではない。
ここは本音ベースで真摯に対応しよう。
僕「はい、すでに情報が流れていると思いますが、我が国では、私が開発した画期的な農業アイテムにより、従来の農作業が半分以下の労力で済むようになりました。それで空いた時間に勉強をするようにしてもらったのです」
遠慮して半分以下と言ったが、アイテムの利用に慣れれば、十分の一以下になるだろう。それまで十時間かかった作業が一時間以下で終わるようになるから、農業革命と言っていい。我が国の農民達は趣味や娯楽、勉強と思い思いに日常生活を送れるようになった。それでいて納税(物納)は以前より上がってるからね。
チルザーレ国王「なるほど、教育の前に農業改革が必要か、面倒そうじゃのう」
僕「いいえ、まったく面倒ではありません。私がやれば大陸中に簡単に広めることが可能です」
シュルツ議長「おお! でしたら、ぜひ聖王様に、農業改革と教育改革をお願いしたいです」
まわりを見渡すと、みんなも頷いて同意している。
僕「分かりました。私は民の幸せ、特に平民の幸せを考えてますので、『放送学園』により教育改革、農業アイテムによる農業改革を大陸全土に推進していきましょう」
一同「それは良かった!」「有難いです!」「ぜひお願いします!」
さて、ここからが本番だ。
僕「ただ、大陸全土、いえ連邦全土をカバーして動くとなると、連邦聖王としての権限と予算が欲しいところです。この際ですから、そのあたりも話し合いましょう」
クローネ王妃「確かにその通りですね。そうしないと聖王様のご負担ばかり大きくなってしまいますわ」
キリシア王女「聖王様はどうされたいのですか?」
よし、この言葉を待っていた。ふふふ。
僕「はい、これまで連邦各国は経済交流と連邦軍(防衛)の二点が中心で、内政は各国の自主性に任せていましたが、内政事項の一部を連邦(僕)に委託して頂けると有難いです」
シャイネル公爵「内政事項の連邦への委託ですか? どんな内容でしょう?」
僕「はい、経済交流の調整と連邦軍の運用はこれまで通りですが、内政で言えば、今回の議題にありました『放送学園』による教育、各国への農業指導ですね。教育と農業について、連邦(僕)が各国で動ける権限を与えて欲しいです」
キリシア王女「こちら側が頼んでるのですから、それは当然のことですよね」
シャイネル公爵「聖王様は飢饉や竜騒動の時も、連邦各国で活動されたのですから、信頼しております」
僕「ありがとうございます。それでしたら、僕は連邦として、経済の調整、連邦軍の運用、教育改革、農業改革に注力させて頂きます。それと活動のため、各国から連邦職員を集め、連邦分担金を納めて頂きたいと思います」
チルザーレ国王「連邦職員と連邦分担金か。いかほどになるのかのう?」
僕「職員は出向、派遣、交代制等でも構いませんが、各国から二十名ぐらいは欲しいですね。農業、教育、防衛、経済に通じる者がいいです。連邦分担金は主に人件費ですね。連邦職員と連邦軍の人件費になります。連邦軍の人件費はすでに負担して頂いてますので、あらたに増えるのは今回の連邦職員分だけです」
元々、国内でかかっていた人件費が連邦経由になるだけだから、実質、負担増額は無い。僕は中抜き(ピンハネ)なんて一切しないし、明朗会計に努めよう。これ(連邦運営)で儲けようなんて、一切考えていない。前世(地球)では、偽善者面して、そういう組織があちこちにあったからな。
チルザーレ国王「それなら然程の負担にならんな」
各国の代表も費用対効果が分かったようだな。
連邦軍は実質的にロナンダル王国の海軍が占めており、連邦各国の海洋の安全を守っている。今は兼任してるけど、これを機会に連邦軍として専任させよう。
僕「それと僕も、今後は連邦聖王として専任したいと思います。これを機会に王位を息子達に引き継ぐ予定です」
一同「「「えええええ!!」」」「「そんなああ!!」」
僕「あっ、ええと、大丈夫です。皆様が僕を連邦聖王として認めてくれる限り、今まで通り、連邦会議に出席しますし、連邦聖王の任に励みましょう。聖王専任後はギース城を聖王城にしますので、そちらを連邦会議の会場にしましょう」
チルザーレ国王「一瞬驚いたが、聖王陛下の専任なら、連邦各国にとって、悪い話ではなさそうじゃな」
僕「ええ、僕もロナンダル王国、ギルフォード王国の王位にいる間は、どうしても国内の内政を最優先しなければならなかったため、他国の教育改革と農業改革が後回しになったことに対し、後ろめたさを感じていたのです」
チルザーレ国王「なるほど、やはりそうであったか……」
僕「ええ、今後は連邦全土のことをより公平に考えたいと思います。皆さん、引き続き協力をお願いします」
一同「こちらこそお願いします!」「聖王様についていきます!」「よろしくお願いしますぞ!」
こうして、連邦再編の筋書きが僕の想定通りに決まった。
さて、今後は国内だ。
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