第418話 初孫誕生とマール教会 ※子供達の年齢付き
ついにラーシャが出産した。子供は男の子、名前はリベルトになった。
僕はラーシャから見たら義父なので、気を使い、出産には立ち会ってないけど、出産の報告を受けて、すぐお祝いの言葉をかけた。初孫であるリベルトも抱かせてもらった。
「子供は何人も抱いてきたけど、孫は初めてだよな。なんか不思議な感じだ」
「どうしてです?」
すぐ隣のメリッサが聞いてきた。
「ええと、何というかさ、孫は子供の子供だよな?」
「ええ、そうですね」
「つまり、自分の直系の血族なんだよな?」
「? ええ、そうですね」
「でも、ほら、子供の時と違って、自分は当事者じゃないのが不思議でさ」
「つまり、何もしてないのに、赤ん坊がいるって感じですか?」
「そうだな」
「だけど、可愛いですよね?」
「うん、凄く可愛い!」
僕らがニコニコ笑いながら、赤ん坊をあやしていると、ライナスがラーシャに言葉をかけていた。ラーシャはよく頑張ったが、ライナスもよく気遣いができている。妊娠出産期の女性は繊細な状態だからな。男性の僕らが気を使うのは当たり前だ。これは庶民も王族も関係無い。こういう場面でも僕の教育は間違ってなかったと実感するよ。
国によっては子供が生まれても、使用人任せで抱きもせず、遠目でしか見ない王侯貴族もいるとかいないとか。そんなしきたりがあったら、僕なら絶対に改革する。王族だから子供を抱けないなんて、ありえないからね。幸い、我が国ではそんな悪習はないから良かったよ。(あっても変えるが)
「名前はリベルト・ロナンダルか」
王家の初孫誕生のニュースはすぐ王国中に伝播され、
しばらくの間、祝賀ムード一色だった。
しかし、ついに自分がお爺ちゃんか……
と言っても、若返りのお蔭で二十代の外見だから、
知らない人からはまったくそう見えないだろうけどね。
――――
――――――
<王都の離宮>
ミアのところで、初孫誕生の話をしている。
「そう言えば、君にとっても初孫ってことになるよな」
「ええ、そうですね」
「まあ、僕ら自体が夫婦だけど、これで一層つながりが強くなったな」
「ふふふ、そうですね」
「お父様」
そこへメルーシャが現れる。僕とミアの娘だが、可愛いい盛りだ。
「おお、メルーシャ、こっちにおいで」
「はい」
素直に膝の上に乗ってきたので、そのまま抱っこする。
「そう言えば、メルーシャは三才になるよな」
「そうですね。早いものです」
「ということは、そろそろ幼児教育の開始だな」
「前から言われてた小さい子供向けの勉強ですよね?」
「メルーシャは王女だから、王族として恥ずかしくないよう、勉強を始めたいが、場所はここでいいかな?」
「はい、かまいません」
「それでは、ここに家庭教師が来るよう手配しよう」
「……私からも提案があるのですが、よろしいでしょうか?」
「んん? なんだい?」
「私は小さい頃、教会で育てられましたが、メルーシャも空いた時間に教会で講義を受けてもいいでしょうか?」
「教会と言うと、マール教会のマザーナスターシャだね」
「はい、お母様の教えは素晴らしかったので、メルーシャにも受けさせたいのです」
「君がそう思うなら、僕は反対しないよ。好きにしたらいい。その代わり、家庭教師の勉強もしっかり頼むよ」
「わかりました」
ミアは【転移】が使えるので、マール教会へ気軽に行けるし、別にかまわないだろう。何しろ、ミアを育てた人物なら、間違いない。
「メルーシャ、三才になったら、お勉強を始めるんだよ」
「お勉強?」
「そう、お勉強をしっかりして立派な人間になるんだ」
しかし、この子を抱いていると、体が熱くなってくるな。
単に体温の熱でない。これはエネルギーだ。
「この子の魔力?なのかな?エネルギーが強そうだね」
「そうですね。抱いてると体がほてってきます」
「教会にはどれぐらいの頻度で通わせるつもり?」
「とりあえず、週一回のマザーによる定例講義に行く予定です」
「へぇ、そんなのがあるのか。僕も行っていいかな?」
「ええ、誰でも参加可能ですよ」
そう言えば、教会で直接、マザーの講義を受けたことはなかったな。
一度、聞いてみるか。
――――
――――――
<チルザーレ王国郊外・マール教会>
今日は、ミア、メルーシャと教会に来ている。
「あれっ?人がかなり増えたな」
「ええ、なんでもシバ領鉱山出所者がここに来てるようです」
「なるほどねぇ」
教会のまわりは畑が広がっているが、ブラザー(男性修道員)達が一生懸命、作業していた。以前はシスター(女性修道員)が大半だったが、シバ領鉱山の労役後、ここに来てるのか。
施設に入ると、マザーが出迎えてくれた。
「これは、国王陛下、わざわざお越しになるとは」
「ええ、ミアの勧めで、娘にも教えを授けて頂きたいと思いまして」
するとマザーがメルーシャに視線を向ける。
「この子がメルーシャですね。ミアに似て、利発そうでしっかりした感じの子ですね」
すぐさまミアが答える。
「ありがとうございます。これから定期的に講義を受けにきますので、よろしくお願いします」
「ええ、どうぞ、どうぞ。メルーシャもよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「まあ、きちんとお返事ができること。やはりしっかりしてますね。さすがは国王陛下とミアのお子ですこと」
そうだ。人が増えていたんで、少し聞いてみよう。
「そう言えば、以前より人が増えたようですね」
「はい、シバ領鉱山の出所者で、こちらに入る方が増えてます。彼らは実に労働熱心ですね。お蔭様で助かっています」
「そうですか。更生して何よりです」
「私のところは自然との共存、自給自足を重視してますから、人手は助かります」
マール教会の教えで、自然との共存は聞いているけど、それを実践しているのは凄い。ミアの薬草療法も自然療法をもとにしてるもんな。
さて、マザーの講義を受けるとしよう。
――――
――――――
大聖堂に入り、僕、ミア、メルーシャの三人でマザーの講義を受ける。まわりにはたくさんの人がいて、みんな熱心に聞き入っている。
「ここでの生活は自然との共存を重視しています。私達は自然の中の一部に過ぎないということ。そして自然の恵みによって生かされているということを理解して欲しいのです」
「私達は自分で考え行動し、集団で生活することによって、進歩してきましたが、やがて自分達は自然を統治している。自然より上の存在だと思い違いをするようになりました。これは大変由々しき事態です」
「私達は自分で物をつくっているつもりでも、実際は何一つつくることはできません。もともと、宇宙や自然にある物を、形を少し変えて利用させてもらっているに過ぎないのです」
「万物万霊は創造の神様によって創られました。自然も、宇宙も、生物も、そして人もです」
創造の神様か……、僕は今まで何度も、神界に行っているので、その存在をはっきりと実感することができる。確かに今、僕がこの世界で、ここに存在できてるのも、創造の神様のお蔭だ。でも僕が神界に行った時には他にも、時空の神様、現象の神様、そして生命の神様もいたよな。
「万物万霊が神様によって創られたと認識できれば、それらを有難いと思うようになるでしょうし、そして、大切に扱うようになるはずです」
人を大切に、物を大切に、というのは
前世が日本人の自分には馴染みやすいな。
「人を大切に扱うということは、人を傷つけないということです。他人は自分が好き勝手にいじめたり、暴力をふるったり、いわんや殺していい存在ではありません」
人に悪意を持たないという僕の考えに通じるな。
「自分も他人も元をただせば、すべて創造の神様から生まれた兄弟のようなものです。相手を思いやり、協調しなければなりません。みんな手を取り合って仲良くすれば、戦争や争いはなくなります」
このあたりは少し微妙かな。言ってることはまったくもってその通りだけど、現実問題として、相手の善意を逆手にとって、卑劣な行動をする輩がいるんだよな。僕の考える善意は相手を選ぶ善意。善意を理解できる人への善意だ。政治をしてるから、擦れてるかもしれないけどね。
でもマザーの言う理想に現実を近づける努力は必要だろうな。そんなの理想論だと諦めたら、そこで進歩は止まってしまう。
横を見ると、ミアとメルーシャも聞き入っている。間違いなく、マザーの教えは僕の考えと近い。こんないい教えをここだけというのは勿体ないな。
※子供達の年齢※
◇メリッサの子供
ライナス 二十六才(王子) ロナンダル王国(王太子)ラーシャと結婚済み
ミローネ 二十三才(王女) ギルフォード商会(副会長)
アレク 十九才(王子) ギルフォード王国(王太子)
レネア 十七才(王女) 魔法学園(学園長)魔法研究所(副所長)
シルエス 十才(王子) 王立学園(学生)
◇テネシアの子供
タイタス 十才(王子) 王立学園(学生)
トアラ 八才(王女) 魔法学園(学生)
◇イレーネの子供
ディオネ 十才(王女) 王立学園(学生)
テセルス 八才(王子) 魔法学園(学生)
◇ミアの子供
メルーシャ 三才(王女) 家庭教師で勉強、マール教会も受講
※孫の年齢
◇ラーシャの子供
リベルト 零才(王子)
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