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第417話 王国視察

 僕は王国視察を度々するけど、だいたいは【隠蔽】スキルを使って、こっそりだ。現地の生の声を聞くには【隠蔽】や【変身】スキルは丁度いいからね。今の僕は王国放送で国民に顔バレしてるから、そのまま行ったら、大騒ぎになってしまう。


 でも今日はあらかじめ関係方面を通じて連絡済みだから、【隠蔽】無しで、視察できる。所謂、公式の視察というやつだ。今まで非公式ばかりだったから、たまには王族らしい格好をして仕事しないとね。


 今回の目的は王国の収入源たる特産品等の確認だ。そして、今日の同行者はいつものテネシアとイレーネでなく、ライナス(王太子)とミア(内務大臣)だ。これには重要な意味があるんだけどね。


僕「それでは行こうか」

ライナス「どうやって行くんですか?」

僕「これだ」

ミア「ああ、飛行船ですね!」


長距離の視察にこれほど便利な乗り物はない。


僕「運転はライナスが頼むよ」

ライナス「わかりました。父上」

ミア「よろしくお願いします」

僕「では出発だ!」


 公式の視察だが、随行の護衛は一切付けない。衛兵達も僕が「護衛が必要な存在ではない」というのは知ってるので、僕から言わない限りは押し付けてこない。衛兵隊長のカイルは古い付き合いで僕の強さを熟知してるからね。それに多人数で現場に押しかけたら、迷惑になるから、なるべく避けたいんだ。こういう時はつくづく自衛スキルの高さに感謝するよ。


――――

――――――


<シバ領・鉱山>


僕「先ず、シバ領の鉱山だな」

ライナス「鉄ですね」

ミア「我が国の一番の稼ぎ頭ですね」

僕「そうだな。鉄はあらゆる物に使われてる」

ライナス「最近だと軍船、大砲、鉄砲、発電所等に使われましたね」

僕「そうだな。ダルト島に送って、代わりにお茶や衣類が入ってくる」

ミア「それで生活が豊かになりました」

僕「今後もいろいろな用途に使われるだろうな」


?「国王陛下、それとミアですか?」


鉱山の前で話していたら、後ろから声をかけられた。誰だろう?


僕「ああ、マザーナスターシャ、ご無沙汰しております」

ミア「マザー、講義ですか?」

マザー「ええ、ちょっと用がありましてね」


 マザーナスターシャはミアが元いたマール教会の責任者で、鉱山の囚人の更生のため、講義をしてもらっているんだった。教会はチルザーレ王国の領土にあるが、『転移扉』により、気軽にここと行き来できる。


マザー「実は国王陛下にご相談したい事がございまして……」


僕「なんでしょうか?」


マザーが相談するとは珍しい。


マザー「私達が何度も講義をしているうちに、更生が進んでいますが、中には将来、ここを出たら、ぜひ教会に入りたいという方もいまして、どう対応したらいいかと……」


僕「ここを出たら、行動は自由ですので、本人の希望に沿う形でかまいません」


マザー「そうですか。分かりました」


僕「しかし、元悪党だった囚人が教会に入りたいと考えるようになるとは、相当な更生度合ですね。感服しました」


マザー「私は人を見た目や肩書、素性等で判断しません。真摯に対応しただけです」


僕「ああ、そうですよね。そうだと思います」


マザー「これからもどんどん更生させていきますからね」


僕「よろしくお願いします」(ずいぶん気合が入ってるなぁ)


更生は大変な作業だが、やはり餅は餅屋だな。

教会に協力を依頼して正解だった。


さて、次へ行こう。


――――

――――――


<サイラス領・炭鉱>


僕「ここで石炭を採掘してるんだ」

ライナス「これは軍船の蒸気機関の燃料になってますね」

ミア「各家庭の貴重な燃料でもあります」

僕「鉄の精製にも必要なんだ」

ライナス「ここの労働者は囚人ではないんですね?」

僕「そうだな。ここは普通の労働者で俸給が支払われている」

ミア「ここもなかなかいい稼ぎになってますね」


 ここは現在、商会が仕切っているが、炭鉱の周辺には商店も増え、周辺もだいぶ賑やかになっている。以前は何もない荒野だったので隔世の感があるよ。やはり郊外に雇用を生み出すのは高い経済効果を生み出すんだな。


よし、次へ行こう。


――――

――――――


<サイラス領・農業省倉庫>


ライナス「ここは何ですか?」

僕「ここは塩だな」

ミア「凄い量の塩ですね!」


 以前、海水から水を分離して、雨を降らした時に副産物で塩ができたんだが、それを内陸部で流通している。海から遠い地域は時間と経費がかかりがちだけど、ここの倉庫に塩を納めてから、内陸部の住民に塩の安定供給ができるようになった。


僕「他国の内陸部にも売ってるから、いい収入源になってるよな」

ミア「そうですね」

ライナス「塩がお金になるんですね」

僕「ああ、内陸部で塩は貴重品だからな」


 ちなみにこの海水から分離した天然塩だが、【収納】の分別分解機能で調べたら、多くのミネラルが含まれていた。これは健康にも良さそうだな。


さて、次へ行くか。


――――

――――――


<王都・内務省倉庫A>


ライナス「うわっ! これは凄いですね!」

僕「これは竜素材だ」

ミア「以前、陛下達が討伐された竜ですよね」

僕「そうそう、僕、テネシア、イレーネで倒した竜だ」

ライナス「しかし、こんなに大量の竜素材があるとは……」

僕「いっぺんに売ったら市場が混乱するから、少しずつ流通させてるんだよ」

ミア「お蔭で内務省のいい収入源になっています」


ライナスの奴、大量の竜素材に驚いているな。こういう反応は面白い。ふふふ。


 この世界で竜の素材は最高レベルの貴重品だ。竜の鱗、爪、骨、牙、肉等、全身が利用できる。特に鱗は強靭であり、武器や防具に重宝されるんだよな。竜の肉だけは別の場所で保管してるけど、たまに王宮料理で出て来る。だいたいは子供の誕生日祝い等、お祝いの時のメインディッシュなんだけど、確かにあれは美味しい。


よし、次に行こう。


<王都・内務省倉庫B>


ライナス「これは受信機テレビですね」

僕「そうだな。これを商会に卸してる。いい収入源だ」

ミア「最近は受信機テレビの値下げで売り上げが急上昇してます」


僕「元々、儲ける気は無かったんだけど、結果的に大儲けしてしまって申し訳ない感じなんだよな」


ミア「でも、それだけ、いいえ、それ以上の価値があるから、相応の代価を頂いて気にする必要はないと思います」


僕「それなら、いいけどな」


ミア「それより、国内で価格を下げたから、他国から問い合わせが増えています。どうしましょうか?」


僕「国内の値段を下げたのは、国内の放送教育(放送学園)を普及させるためなんだよな」


ミア「いっそのこと、他国にも放送教育(放送学園)を広げますか?」


僕「う~ん、確かに各国は連邦になったけど、基本、内政は干渉しないことになってるからね。教育はまさに内政の範疇だから、現状では難しいかな」


ミア「それなら、教育無しで、値段だけ下げますか?」


 それも難しい問題だな。本音で言えば、他国の人にも値段を下げて販売してあげたいが、受信機テレビはうちが主導してる製品で、連邦放送局も抑えている。つまり必要以上に他国に売り込むとオーバープレゼンス(目障り)になりかねない。前世でも「貿易摩擦」ってあったもんな。あの状況は極力避けたいね。


 本来、買いたい人、売りたい人がいれば、商売は成立するが、それが国家間だと、そう単純な話で終わらない。うまくやらないとな……


僕「少しずるいけど、他国の人から、こちらへ要請があった場合は、先ずはその国の代表に要請するよう言ってもらえないかな?」


ミア「……なるほど、その国の代表を通して、値引き要請があれば、堂々と値引きできますからね。でも直接、陛下が向こうの代表に言われるのは難しいのでしょうか?」


僕「確かにそれもできなくはないけど……、僕が言ったら、僕が売りたいから言ったようにも聞こえかねないだろ? この件では僕は第三者ではないからね」


ミア「ずいぶん、面倒な話なのですねぇ」


僕「売り手の僕が向こうに値引きしますと先に言うのと、向こうが自分の国民に言われて、向こうから僕に値引きを要請してきて、それに答えるのとでは、同じように見えてまったく違う。前者は僕の借りになるけど、後者は向こうの借りになる。この違いは大きい」


ミア「……外交は難しいものですね」


僕「まあな。ちょっとしたボタンの掛け違いで立場がガラッと変わってくるから、慎重にしないとな。みんな親しいけど、だからこそ、いい加減にしてはダメなんだ」


ライナス「勉強になります」


あららっ、思わぬ外交談義に時間を使ってしまったぞ。

今日はまだ予定があるし、急がないとな。


さて、次へ行こう。


――――

――――――


<ヨウス領・エルフの里・地下倉庫>


サレシャ「陛下、殿下、ミア様、こちらになります」


ライナス「これは何ですか?」

僕「こっちは若返りの秘水、そっちは神木マナスの葉だな」

ミア「……」

ライナス「若返りの秘水!? 神木マナスの葉!?」

僕「両方ともこの近くで採取したものだが、“健康“に非常にいいものなんだ」

ライナス「ひょっとして父上、母上、おじい様、おばあ様がお若いのは……」

僕「これは王族だけの秘密事項だが、これのお蔭なんだ」

ライナス「そうだったんですか!!」


 実際は僕のスキル【細胞正常化】のお蔭なんだけど、この二つも若返り効果があるので、嘘は言っていない。それと世界樹の存在も隠しておいた方がいいな。


僕「この二つは“健康効果“が凄まじいため、外見が若返るという副次効果があるんだが、そのまま使うと影響が大きいので、水で稀釈して、効果を調整しながら慎重に使っているんだ」


ライナス「なるほど、だから隠蔽されていたんですね」


僕「一応、パンタ領の温泉やミア内務大臣監修の薬膳料理には少し使われている」


ライナス「ああ! それで実際に若返ったという報告が出てるんですね」


僕「……まあ、そうだな」


ライナス「これは他国に輸出はされないのですか?」


僕「……稀釈して微妙な調整をしながら使用してるから、他国への輸出は厳しいな。その代わり、健康と若返りに興味がある人には我が国に来て温泉に入ってもらうか、薬膳料理を食べてもらうように誘導している。国内で抑えてるからこそ、観光にもなっているということだ」


ライナス「なるほど、他国に売るばかりが能ではないということですね?」


僕「そうだな。観光で来てくれれば、我が国で物を買ってくれるから、輸出同様、稼ぎになるんだ」


 ライナスには悪いけど、若返りの秘密はぼかさせてもらった。巷では美容の延長で「若返り」と喧伝されているが、公式には「健康」による副次的効果を謳っているからね。僕の若返りスキル【細胞正常化】は隠蔽させてもらうよ。その上位スキル【細胞活性化】も同様だ。これらは「若返り」どころか、「不老長寿」に通じるスキルだから、公になったらヤバすぎるのだ。もちろん「世界樹」のこともね。


ふぅ~さて、最後だ。


――――

――――――


<王城・地下室倉庫>


ミア「地下にこんな巨大な倉庫があったんですね!」


僕「ああ、これは食料の備蓄用倉庫だ。小麦が多いが、肉や野菜、調味料、すべての食料が保管されている。実は竜肉の保管場所もここなんだ」


ライナス「物凄い量の小麦ですね……」

僕「ああ、以前の食料不足の経験から、備蓄を積極的に推進してな」

ミア「どのくらいあるんでしょうか?」

僕「全国民一年分は軽く超えてるな」

ライナス「凄いです!」

ミア「しかし、備蓄の割にはずいぶん新鮮ですね」

僕「実はこの倉庫自体が巨大な魔法アイテムになっている」

ライナス「どんな魔法ですか?」


僕「収納魔法の応用だな。倉庫全体が収納アイテムになってるから、その中にある物は時間が進まないから、一切腐敗しない。」


ミア「でも、私達は今、普通に会話できてますよね?」


僕「人が入ったら、収納魔法が解除されるように安全設計してるんだ」


ミア「そんなことがお出来になるんですか!」


僕「それと、こっちを見てくれ」


ライナス「こっ、これは!!!」


ミア「!!!」



キラキラと光り輝く大きな山が目の前に広がる。


目の前には大量の金銀財宝、山のように金貨が積みあがっている。


僕「これは王国の収入から支出を差し引いたもの、つまり余剰分を貯めたものだ」


ミア「それでここへは【転移】で来たんですね……」


僕「そう、途中に通路は無いので、【転移】でしか来ることができなくしている。この場所自体、ごくごく一部の者しか知らないしな」


ライナス「……」


僕「これで、この国の資金獲得手段、備蓄、資金を一通り教えた。将来はライナスが引き継ぐわけだから、頭に入れておいて欲しい。ミア内務大臣も予算決定の際、頭にあれば安心できるだろう。くれぐれも他言はしないようにな。まあ二人なら、そんな心配は無いだろうが」


ライナス「しかし、なぜこんなに潤沢な資金が貯まったのでしょう?」


僕「いい質問だな。簡単だ。戦争をしてないからだ。いやもっと正確に言うと戦費にお金をかけてないからだな。あれほど無駄なものはない。その上で、華美贅沢をせず、みんなが努力してコツコツお金を貯めていったからだ。そして確実に資金を稼げる特産品を開発したことだな」


ライナス「なるほど……」


ミア「陛下は以前、徹底的に高給取りの怠慢貴族を解任させましたからね。役所もスリム化しましたし、あれも大きかったですよ」


僕「その通り。どんなにお金を稼いでも大きな穴が空いてたら、そこからボロボロこぼれるからな。無駄の削減は確かに大きかった」


ライナス「これらの資金はどう使うのが一番いいのでしょうか?」


僕「……お金の使い方には浪費、消費、投資があるが、一番いいのは投資だな。投資の中でも一番いいのは、おそらく教育への投資だろうな……」


ライナス「それで父上はずっと教育に注力されていたのですね……」


僕「そうだな。教育にかかる費用はほとんど人件費だが、良い教師を集めたり、育てるにはそれなりの費用が必要だ」


ライナス「でも、父上は娯楽にも相当、力を入れてきましたよね」


僕「娯楽は広報(王国の宣伝)とセットだったが、現在は庶民の憩いづくりになってるな。庶民を楽しませれば、王国への好感度につながる」


ライナス「確かにあれで王家への好感度は良くなってますね」


僕「それと教育と娯楽もセットになってるんだ。厳しさと楽しさ、飴と鞭は両方必要だ」


ライナス「なるほど……」


僕「お金をどう使えば、国民が喜んで、国民のためになるのか、いろいろ考えてみるといい。それと先ほど、使い道は浪費、消費、投資と言ったが、無理やり使う必要は一切ない。使い道が決まっていないうちは貯めておくのも賢明な手段だ」


ライナス「……父上、一つ、質問があります」


僕「なんだい?」


ライナス「父上は資産を口外されていませんが、なぜでしょう?」


僕「一つは安全のためだな。巨額資産の存在が公になれば、それだけで狙う輩が出るかもしれない。そうならば余計なことに気を使う必要が出てくる。金を持ってるからと言って、自分は金持ちだと言うのは一時的に誇らしい気持ちになるかもしれないが、まわりから狙われるようになる。そんな心配はしたくないからな」


僕はまだいいとしても、子供達が狙われるのは絶対に避けたかった。


ライナス「う~ん、確かにそうですね」


僕「それと大金持ちはそれだけで、嫉妬されたり、何か悪いことをして稼いだと悪く思われがちなんだ。つまり他人の悪想念攻撃だな。これは極力避けた方がいい」


ライナス「なるほど、お金があるから、尊敬されるだけではないんですね」


僕「庶民(平民)感覚からすると、いろいろ複雑なんだよ」


ライナス「そうすると貴族が平民の前で金持ち自慢しても逆効果ですね?」


僕「ふっ、そうだな。尊敬されるより、かえって嫉妬される方が大きいだろう」


ライナス「よく分かりました」


僕「おっと、まだある。お金はな。自分が金持ちだと自慢したり、吹聴すると、その人から離れるという性質があるみたいなんだ」


ライナス「ええっ! どういうことですか?」


僕「俗に言う金運というやつだな。大金を手にしたときは黙ること。それだけ覚えておきなさい。もしある人が大金を持っていると口外すれば、くれ!寄付しろ!相続人だ!奪ってやろう!騙してやろう!等々、形の違いはあれど、その瞬間から、お金をその人から引き離そうとする力が働き出すんだ」


ライナス「……それは怖いですね」


僕「とにかく資産のことは伏せておく。いいね?」


ライナス「肝に銘じます」


 よし、彼なら大丈夫だろう。でも実は彼に教えた資産は僕が持っている資産のごく一部だ。様子を見ながら追々だな。(メリッサには教えてるけどね)



ライナスには跡継ぎとして頑張ってもらいたいと思う。


彼ももうすぐ父親になるのだから。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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