表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
416/1925

第416話 放送学園

 受信機テレビ出演のため、セリフが多いです。

「君もついに『おばあちゃん』だな~」

「ふふふ、何を言ってますか、あなただって『おじいちゃん』ですよ」

「そうだな。ふふふ」

「そうですよ。ほほほ」


 先日、ラーシャの妊娠が分かり、王宮内は祝福ムードが漂う。メリッサともこうして冗談が言い合えるのも微笑ましい限りだ。しかし、この僕が『おじいちゃん』ってねぇ……、嬉しいのは間違いないんだけど、違和感がまったく無いかと言えば嘘になる。自分で言うのもなんだが、精神的に常に若いと思っているので、年を取った感じがしないのだ。


 おそらく、これは「若返り」をしているメリッサ、先王夫妻もそうだろう。そう言えば、メリッサの姉、クローネ王妃(ヒルロア王国)も「若返り」をしてから、夫の国王も「若返り」したんだっけ。「若返り」は一般には建前上、隠匿してるが、すでに公然の秘密みたいになってるからな。


 おっと、そう言えば、そろそろ放送学園の放送が開始されるな。

 メリッサと打合せしよう。


――

――――


<内務省内・放送学園>


 これから放送学園の放送が開始される。

 先ずは学園長のメリッサから挨拶だ。ちなみに僕はスタジオの観客席ね。


「皆さん、こんにちは、ロナンダル王国の王妃、メリッサです。この度、放送学園の学園長に就任しました。この放送学園は国王陛下のご意向により、王国全土の皆さんが広く教育を受けることができる機会の提供を目指したものになります」


 うん、いい感じだね。


「自宅にいながら、受信機テレビにより、どなたでも気軽に勉強できる画期的な教育システムで、真面目に取り組めば、クライスナー学園の卒業レベルに到達することも可能です。皆さんの教育水準を高め、王国の貴重な人材として活躍することを期待します。ぜひ頑張って下さい」


 おお、いいね。やはり王族が学園長というのは引き締まる。僕が社会人教育にかける本気度がみんなに伝わればいいけどな。


――――

――――――


 ある農村の声


「前に聖王様から頂いた農作業アイテムで畑仕事が早く終わるようになって、楽になったのはいいんだけど、釣りや狩りも飽きてきたなぁ」


「それなら受信機テレビを見たらどうだ?」


「ああ? あれって高いんだろ? 俺なんかにゃ無理だって」


「いやいや、かなり値下げして、今じゃ金貨一枚(十万円)だぞ」


「えっ! そうなのか!? やけに詳しいな」


「実は先日、買ったんだよ、へへへ」


「何だよ、羨ましい、俺にも見せてくれよ。娯楽番組を見たいわ~」


「う~ん、娯楽番組もいいけど、今は教育番組かな」


「教育ぅ~? 家で勉強するのか? 俺たち大人だぞ?」


「その考え方はもう古いって。聖王様は社会人教育を推進されてるんだ。大人も勉強した方がいいってね」


「しかしなぁ~ 大人が勉強しても意味が無いんじゃないか?」


「世の中には俺らの知らないことがたくさんあって、それを学ぶのは面白いらしいぞ。年齢は関係無いって」


「例えば?」


「そうだな。例えば、どうして物が下に落ちるか、答えられるかい?」


「えっ、そんなの考えたこともないぞ、理由なんて無いだろ!」


「それから、なぜ人間は息をするか、分かるか?」


「ええ? そんなの生きるためだろ」


「じゃあ、なぜ生きるために息をするんだ?」


「いやあ、それは……」


「勉強すると、そういうことも分かるようになるらしい」


「へぇ~ そうなんだ」


「良かったら、夕方、うちに来いよ。一緒に受信機テレビを見ようぜ」


「そうだな。試しに見てみるか」


「この前の講義で、なぜ植物に水が必要か、分かったぞ」


「そりゃ、植物も水を飲むからだろ?」


「それじゃ答えになってないんだよ。じゃあ、なんで飲むんだよ?」


「う~ん、さっぱり分からん」


「ふふふ、光合成だよ」


「な、なんだ、コウゴウセイって!?」


受信機テレビを見たら、教えてくれるよ」



~【隠蔽】スキルで農村視察中~


 庶民(平民)の大部分は農民(村民)だから、農民が勉強(村民)するようになることが、実は社会人教育の本丸なんだよね。以前、農業アイテム『草刈機』『耕運機』『水撒機』『刈取機』を支給して、農作業は半分以下の負担になってるはずだから、自由時間は相当増えているはずで、その時間を利用して勉強できるだろう。


 農民(村民)受けしそうな、生物、気象天候、自然科学あたりの科目も充実させないとな。この世界の文明は前の世界の中世ヨーロッパぐらいだったが、僕の知識も少し加えたんだ。それに僕は理論だけでなく、実用性も重視するから、農業の熟練者を番組に呼んで、畑作のうまいやり方を講義してもらってもいいかもしれないな。


 貴族が卑下する農民(村民)達が貴族なみに知識、教養を身に着けたら、さぞかし驚くことになるだろう。教育は一部の特権階級のものじゃない。歴史を紐解くと、あくどい権力者は愚民化政策に走りがちだったが、僕は賢民化政策を推し進めたい。


 現在、王国の人口は一次産業(農林水産業、畜産業)が大多数だけど、今後、知識と技術を高めて、二次産業(加工、生産、鉄鋼業、製造業、建設業等)の人口を増やしていきたいと思っている。だけど、三次産業(流通、販売、サービス、情報等)は程々でいいな……


 食料でも物でも、生産業こそ主役だ。非生産業を否定する者ではないが、

 少なくても主役顔するのはおかしいと思うのだ。


――

――――


<内務省内・放送学園>


 今日は質問に答えるため、番組に出演する。

 

「それでは聖王陛下、質問を読み上げます」


「はい、どうぞ」


 颯爽と語り部(司会)に応じる。


 語り部は王国専属芸能人だが、すでにニュース、現地リポーター、ナレーション等、どの番組でもなくてはならない存在になっており、この日も司会進行役をしている。ちなみに僕は庶民向けに話すときは丁寧口調になるからね。受信機テレビ向けなら猶更。


 語り部が質問を読み上げる。


「聖王陛下は憎しみを持たないことを強調されてますが、自分はそう思っても、相手から憎まれることがあります。その場合はどうしたらいいでしょうか? 相手から憎まれると、その相手をどうしても憎くなってしまいます」


 ああ、これはよくある話だな。答えてやろう。


「相手が自分を憎むと、自分も相手が憎くなるということは、その相手と自分が鏡のようになってるからだ。いいかい? 球を壁に投げると返ってくる。また投げると返ってくる。自分が投げるから返ってくる。だから自分が憎まなければ、相手からの憎しみは減る。たぶん相手が先に憎しむのをやめて欲しいと思ってるんだろうが、それを期待してはダメだ。まず自分から憎しむのをやめること。それが第一歩だな」


 ここから、語り部と僕のやり取りが続く。


「相手を憎しむのをやめると、相手もこちらを憎しむのをやめるようになるんでしょうか?」


「人は自分を憎む者を憎む傾向にある。逆に自分を何とも思わなければ、同じように何とも思わなくなる。鏡と同じだよ」


「しかし、中には一方的に憎んでくる者もいるようですが?」


「確かにこちらが何もしてないのに、一方的に憎んでくるケースもある。その場合、相手はまともではないのだ。まともでない者は相手にするだけ無駄だ。だから相手にしない」


「なるほど、でも憎まれるのは気分が良くないですよね?」


「ふふふ、それを気にするからいけないんだ。憎まれてビクビク、イライラするのは修行が足りない。何もしてないのに、一方的に憎んでくるなら、相手がおかしいということだ。おかしい者に意識を向けてビクビク、イライラするのは人生の無駄だな」


「しかし、陰で悪く思われるには気になりませんか?」


「もし本当に気になるなら、自分にやましい点があるからだろう。その場合はそれを解消しないといけない。しかし、一切やましい点がないのに、悪く思われるなら、それは相手の思い違いだろうから、気にする必要はない。気が弱く優柔不断だと、心が揺れるだろうが、修行して不動心を身につけるしかないな」


「不動心ですか?」


「そう、自分にやましい点がないなら、気持ちをまっすぐ保てるはずだ。それにそんなくだらないことに意識を向けるなら、もっと有意義なことに集中した方がいいだろう?」


「確かにそうですね……」


「どんなに悪く思われても、自分に非が無いなら気にする必要はない。堂々としろということだ。そうすれば、相手が放った悪想念は回り巡って相手に返っていくだけだしな」


「わかりました。ありがとうございます。それでは次の質問です」


「はい、どうぞ」


「聖王陛下のお蔭で国が豊かになり、暮らしが楽になりました。本当に感謝しております。こんなこと言うと笑われるかもしれませんが、自分は遊んで暮らしたいのです。それでもいいのでしょうか? まわりが勉強しだしてるので少し気が引けます」


「遊んで暮らすというのが具体的にどういうことか分からないけど、自分の好きなことで、他人に迷惑をかけないなら、いいんじゃないかな? ポイントは他人に迷惑をかけないことだ。だけどね、他人に喜ばれることなら、もっと楽しいぞ。例えば釣りをするにしても、自分の分だけ釣って、自分だけで食べるより、多めに釣って、まわりの人に余分な魚を配って喜ばれたら、何倍も楽しくなる。そのためには自分の適性、つまり自分の得意分野が分かると楽しみやすくなるんだ。そして勉強はそれを見つける早道でもあるんだ。気が引けるということはたぶん勉強に興味があるんだろう?」


「なるほど、つまり遊んで暮らすというのも、内容次第ではOKなわけですね?」


「遊ぶというのは楽しむということだからな。仕事が楽しければ、仕事イコール遊びになる。まあ、現実的にはそこまでいかないだろうが、近づけることは可能だ」


「それには自分の適性、得意分野を把握することが重要ということですね?」


「理屈はその通りなんだけど、そのためにはいろいろ経験しなくてはいけない。それだけで時間がかかってしまう。だけど勉強すればその時間を短くすることが可能だ」


「なるほど、勉強って大切なんですね」


「実際、勉強し始めて分かる、初めて気付くことが多いからね。勉強をすれば、広い視野を持てるから、ぜひ勉強して欲しい。年齢も職業も種族も家柄もまったく関係ない」


「聖王陛下から有難いお言葉を頂きました。ありがとうございます」


 ここで、収録が終わる。昔は生番組しかできなかったが、今では編集やら時間調整やら機能も増えた。あとはうまく使ってくれよな。スタッフたちに労いの言葉をかけて、現場を後にしようと思ったら、隣のスタジオでテネシアが出てるじゃないか。ちょっと見ていくか。



 ◇    ◇    ◇



 番組収録中


「テネシア元帥閣下、相手がこう来たら、どう受けますか?」


「ああ、そう来たなら、こっちから、こうだな」


 テネシアと語り部が向かい合って実演する。


 これは護身術の講義だな。テネシアが剣じゃなくて、木の棒を使ってるのが笑えるが。いやいや笑ってはいけないな。最初は一般科目だけを考えていたが、自分で自分を守る術を会得した方がいいと思い、庶民向けの護身術の講義をテネシア、イレーネらに頼んでいたんだった。


 真剣はさすがに危ないので、木の棒にしたんだ。これでも獣や悪党ぐらいなら撃退できるだろう。僕は全国民に自衛意識を高めてもらいたいと思っているんだ。


 おっ、テネシアと語り部のやり取りが続くぞ。


「テネシア元帥閣下、棒を振ってると腕が痛くなりますね」


「それなら、素振りだな。一日千回ぐらい振れば気にならなくなるぞ」


「い、一日、千回ですか……」


「何を驚いている。自分は今でも一日、一万回ぐらい振ってるぞ」


「えええ! さすがにそれは冗談ですよね?」


「なんだと! なら、今からやるから数えてみろ!」


「いや、テネシア元帥、いいですって、えっ、ええええええ!?」


 テネシアが素振りを始めてたが物凄いスピードでまったく手の動きが見えない。あまりのスピードでスタジオ内に強風が巻き起こる。


 バアアアアアアア―――!!


「うわあ!これは凄い素振りです!」


 この状況に語り部が驚く。


 んん?なんか焦げ臭いな。あっ、今日は木の棒だったか!


「うわあ、テネシア元帥閣下の手の先が燃えてます!」


「ほら、一万回いったぞ! あれっ、木の棒が燃えてしまったな」


 なんと、テネシアの持っていた木の棒は素振りの空気抵抗で

 火がついて墨のように燃えてしまった! 大気圏突入か!?

 耐熱圧縮棒にでもすれば良かったかも?


「ははは、さすがはテネシア元帥閣下です。良い子の皆さんは真似をしないでくださいね」(冷汗)


 語り部のセリフに、「いや、真似できるか!」と心の中で突っ込みを入れたが、テネシアはこの手の番組ではオーバースキルということが改めて分かった。


「ええと、次はイレーネ宰相閣下から回避術を習いましょう」


 語り部が次の登場者を促す。

 あれっ、イレーネも一緒に出てるのか。


 語り部が大きな棒を持って構えると、

 イレーネが語り部に声をかける。


「それで思いっきり、私を攻撃して下さい。回避しますので」


「えっ! 本当にいいんですか? 大けがしても知りませんよ?」


「ふふふ、私が大けがですって、クスクス、いいから攻撃して下さい」


「ムッ、それなら本気でいきますよ!タァ―――!」


 語り部は素人丸出しの大振りで上段から振り下ろしてきた。

 しかし、イレーネが避けるそぶりを見せない。


「あっ!あぶない!あれっ!?」


 語り部が驚く通り、棒がイレーネにぶつかったように見えたが、残像だけ残して、棒を振り落とした場所にイレーネはいない。


「ここですよ~」


 なんと、素早く、語り部の真後ろに移動していた。

 ええ! スキルを使ってないよな……凄すぎる……

【転移】かと思ったぞ。


 目の前で見たけど、消えたようにしか見えない。

 まさに異次元のスピードだ。


 しかし、これ、放送できるのか……?


 その後もイレーネはまるで瞬間移動のように回避し、最後は語り部が息を切らしてばてていた。やはり彼女もオーバースキルだ。


「おおっ陛下!」

「いらしてたんですね!」


 二人から気づかれてしまった。


「ああ、さっき収録が終わったところなんだ」

「それなら、私らもそうだ。一緒に帰ろう」

「そうですよ。陛下」

「ああ、そうだな」


「陛下、どうだった、私ら?」

「ああ、凄い良かったぞ。というか凄すぎたな。ははは」

「ふふふ、陛下ったら」


 放送学園の護身術の講義を(うっかり)始めてしまったけど、テネシアとイレーネではレベルが高過ぎるので、今度はラーシャかメヌールあたりにしよう。しかし、二人とも練習を続けていたんだな。動きがまったく衰えていない。というより、前より速くなってるぞ。


 ちなみに僕は【身体強化】【身体硬化】【身体速化】のスキルを使えるが、このうち、【身体硬化】だけ、二人にアイテムを渡している。他の二つは無くても素で十分だからね。


 でも、種族特性だけで、こんなに身体能力が上がるものだろうか? いや違うな。二人の場合、個人特性としか言いようがないレベルだ。ひょっとしたら僕の影響だろうか? でもアイテムを渡していないのに能力が向上するってあるのかな? う~ん、疑問だ。レネアの研究テーマに加えてもらうかな。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ