第400話 魔法研究所(始動)
<魔法研究所・所長室>
光魔法アイテムの商談のため、商会の副会長であるミローネ(長女)が訪問している。対応は僕、レネアが主だが、今後のことを考え、職員のリーベとロッツも同席させている。部下に実際の仕事を見せて、流れを覚えてもらうのは大切だからね。
ミローネ「これが、レネアが開発した光魔法アイテムですか?」
レネア「ええ、そうです。ミローネお姉様」
テーブルには貴族用を意識して豪華そうな照明器具をいくつも並べていた。中には玄関先に吊るすような大きなシャンデリアまである。これは中々凝っている。よくできたものだ。
ミローネ「それで、おいくらなの?」
レネア「え~と、そうですね。製品ごとに違いますが、小さいものは銀貨十枚(一万円)から、大きいものは金貨十枚(百万円)ぐらいです」
ミローネ「どのぐらい持つの?」
何の設定もしなければ、無期限だが、
あえて制限を設けることにしたんだよな。
よく考えたら無限に持つ方がおかしいし。
僕「製品によって違うが三年から五年だな」
これにより、買い替え需要も期待できるが、買い替えしなくても、再設定(有料)すれば使用可能な状態に更新できるようにした。これなら光魔法アイテムを販売した後も持続的に収入が見込めるだろう。
ミローネ「期限を過ぎたら、使えないのですか?」
僕「買い替えるか、再設定すれば使用可能な状態に更新できるようにしよう」
ミローネ「その再設定というのは有料ですか?」
僕「もちろん有料だ。銀貨十枚(一万円)の商品なら、銀貨一枚(千円)という具合に、購入時の一割の料金で予定している」
ミローネ「安いですね。ふ~む、これは中々いい商いになりそうです。貴族達は王城で、会長のおつくりになられた立派な照明器具(光魔法アイテム)を見てますから、関心は非常に高いと思います」
僕「じゃあ、どんどん貴族達に広めて欲しいな。レネアがたくさん準備するから。それに料金を上乗せしてくれれば、特注デザインも検討しよう」
ミローネ「それと相談ですけど、貴族の屋敷の照明は高所が多く、取付工事が大変なんです。しかも王軍隊(陸軍)の作業員が入るのを嫌いますが、どうしましょうか?」
僕「う~ん、それなら取付はうちの研究生に頼もうか」
レネア「えっ!父上、入ったばかりの四人にですか!?」
僕「こういうのは何事も経験だよ。四人には後で説明する。僕に考えがあるから」
僕「ミローネ副会長、照明器具の取付は有料だよな?」
ミローネ「はい、商品販売時に上乗せします」
僕「うんうん、それならいい」
ふふ、良いことを思いついた。
――――
――――――
<魔法研究所・教室>
僕とレネアが教壇、研究生の四人が前の席に座っている。今日から始動だ。
【鑑定】でざっと見るとこんな感じだったよな。
ジリーネ 種族 ドワーフ 性別 女 得意スキル 土魔法 生産職
クーシャ 種族 狐獣人 性別 女 得意スキル 火魔法 妖術
レスティ 種族 ダークエルフ 性別 女 得意スキル 闇魔法 精霊術
ルイーズ 種族 人間 性別 女 得意スキル 電気魔法 冒険者
「改めて、四人を歓迎する。僕がこの魔法研究所の所長、ギルフォードだ。こちらが娘で副所長のレネアだ。これからよろしく」
少人数なので、目の前にいるが、四人とも小さく頷く。
さて、少し長くなりそうだが、一気に話すとしよう。
「魔法研究所の応募は千人いたが、最終的には君達四人が残った。ここの研究所は少数精鋭で優秀な人材を求めているから、君達四人は自信を持っていい」
「本格的な授業は明日以降を予定しているが、今日は魔法研究所で具体的に君達がすることを話しておこう。先ず、レネア副所長から魔法講義を受けてもらう。それぞれの得意分野もあるだろうが、それに限らず全体的に体系立てて学べるから、きっと役に立つはずだ」
「次にレネア副所長の補佐として現場体験をしてもらう。まあ実地訓練みたいなものだが、当面はレネアが制作した魔法アイテムの取付作業を手伝ってもらいたい。具体的には貴族の屋敷を訪問して光魔法アイテムを室内の壁や天井に取り付ける内容だ」
「それからレネア副所長が課題を出すから、自分で研究して欲しい。予定してるテーマは『生活に役立つ魔法』だ」
「当面はレネア副所長の指示に従い、レネアの補佐的内容が多いが、ゆくゆくは自分達の好きなテーマで研究できる時間も増やす予定だ」
「ここまでで何か質問はあるかな?」
クーシャが手を挙げる。
「ええと、呼び方は『所長』で大丈夫でしょうか?」
「ああ、ここは王城の中ではないから、僕は所長、レネアは副所長でかまわない。堅苦しい作法もいらない」
広義では城壁の中(城の中)ではあるが、この際、固い事は言いっこなしだ。
「ほっ、わかりました。それではお聞きします」
「光魔法アイテムの取付作業ですが、私達でもできるのでしょうか? 工事はまったくしたことがありませんし、貴族の屋敷となると高所もありそうですが」
おお、それに気が付いたか。いい着眼点だな。
「そう思うのも当然だが、この魔法アイテムがあれば、簡単に作業できる」
指輪を見せる。
「指輪ですか?」
「これはただの指輪ではない。これを指にはめると、【飛行】と【接着】のスキルが使えるようになるんだ」
「スキルが使えるようになるんですか!?」
四人とも目もパッと見開く。やはり魔法が好きなんだな。
「取り敢えず、つけてみなさい」
四人がそれぞれ指輪をはめる。
「【飛行】と言ってごらん」
四人「「「「【飛行】!」」」」
ジリーネ「うわっ、浮きました!」
クーシャ「宙に浮いてる!」
レスティ「これは凄いです!」
ルイーズ「所長のお力ですね……」
僕も一緒に【飛行】し、四人にしばし手ほどきする。
ジリーネ「空を飛べるアイテムなんて初めてです!」
クーシャ「いまだに信じられません!」
レスティ「やはり国王陛下のお噂は本当だったんですね!」
ルイーズ「まさかその力を自分も使えるなんて……」
「まだ終わりじゃないよ。照明器具を天井に【接着】と言って取り付けてごらん」
収納から、照明器具を取出し、四人に渡す。
「【接着】!うわっ!くっつきました!」
この作業のために【接着】スキルを事前に【創造】していたんだけど、役に立ちそうだな。
「これなら工事も不要だし、大工道具も不要で、簡単にできるだろ?」
四人「「「「はい!」」」」
四人に光魔法アイテムの取付作業をさせる目的だが、これから魔法研究所のお得意さんになるであろう貴族への宣伝の意味も大きい。魔法研究所の四人が直接訪問すれば、今後の取引にも有利だろう。そして四人が貴族と接することによって、要望も聞くことができる。その要望がさらなる魔法アイテムの開発に役立つはずだ。
それと現場作業を通して、魔法アイテムを使いこなせば、自然と魔法の実地練習にもなる。最終的にはアイテムなしで魔法が使えることを目指すのもいいだろう。とかく研究所と言うと研究室に閉じ困って、社会に隔絶するイメージがあるようだが、僕はむしろ社会と積極的に交流する方向を目指したい。
そして、この取付作業は有料であり、商会経由で取付手数料が入って来る。その一部を四人に後々、支給したいと考えたのだ。ここの研究生は衣食住や生活必需品の心配はないが、あくまで研究生という立場は学校の生徒の延長的性格があり、王国からの俸給はない。つまり無給だ。
保護者もいる未成年の魔法学園の生徒なら、それでもいいだろうが、独立した成年の四人がいくら希望した道とは言え、無給とは心もとないだろう。
しかし、この取付作業をすれば、自らお金を稼ぐことが可能だ。まあバイト代のようなものだが、地道に作業すれば結構な金額になるんじゃないかな? 当面は伏せておくが、一か月ぐらい経ったら、改めて説明しよう。成年なんだから、いろいろ私的に欲しい物だってあるだろうしな。
◇ ◇ ◇
そうだ! 四人に歓迎会の話をしなくては。
「本来であれば、入所式みたいなものを開くべきなんだろうけど、人数が少ないから割愛させてもらった。その代わり、夕方から歓迎会を開くから、予定しておいてくれよ」
ジリーネ「私達のために歓迎会ですか?」
クーシャ「大変嬉しいです!」
レスティ「恐れ要ります」
ルイーズ「ありがとうございます」
成年だから、四人ともお酒は飲めるのかな?皆の話が楽しみだ。
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