第396話 魔法学園
レネアがもうじき王立学園を卒業するので、それに合わせて、魔法研究所と魔法学園の開設準備を急ピッチで進めている。僕、レネア、リーベ、ロッツの四人のタッグにより受け入れ体制はほぼ完了したので、後は生徒を受け入れるだけだ。
それで王国全土に募集をしようと打合せしていたら、魔法研究所にテネシアとイレーネが乗り込んできた。魔法研究所は王宮にも近いが、ここに彼女達が来るのは珍しい。
「おい、陛下、魔法学園というのをつくるんだってな!?」
「私達にもよ~く教えて下さい!」
「ええ!? 君達には直接は関係ないだろう!?」
まあ、二人にゆくゆく臨時講師を頼もうとは思っていたけどね。
用件はだいたい想像がつくが……
「関係大有りだよ!」
「私達の子供も通わせたいんです!」
「んん? トアラとテセルスだよな。確か王立学園に入学予定じゃ」
「そこより魔法学園の方が良さそうだ!」
「子供に魔法を専門的に教えてくれるなら、こっちが断然いいです!」
「でも王族は王立学園の方がいいぞ……」
「こちらは少数精鋭ですよね。しかも陛下とレネア様が指導されるとなれば、断然こっちがいいです!」
う~ん、王族の入学は想定してなかったぞ。確かに魔法の科目は王立学園を凌駕するだろうが、逆に一般科目はレベルが落ちるかもしれない。王族として、将来、内政に関わる場面も多々あるだろうし、一般科目は重要なんだけどな……ここで言う一般科目とは数学、歴史、地理、政治、文学等、標準的な勉強科目のことだ。
実はなんとなく、こうなる予感があったから、二人には魔法学園のことは内緒にしてたんだけど、この二人に隠し事は無理だったな。どうも、この二人(というか四人の妃全員)は僕の考えを読む力に長けている。だてに長く一緒に過ごしていないよな。
「わかった。少し時間をくれ」
「陛下、ぜひ頼むぞ!」
「お願いしますよ!」
恐らく二人とも一般科目重視の王立学園に多少不満があったのだろう。しかたない。国王の特権を使うか。(たまにはいいよね)
――――
――――――
<王立学園・学園長室>
アポなしで校長に面談する。少しばかり国王モードを強くしたせいか、
校長が緊張してるなぁ。
「あの~ええと、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「早速で悪いが、今度、魔法学園という新しい学校をつくることになってな」
「はあ、魔法学園ですか……」
「それで、一般科目の教員が不足してるんだ。何人か用立てできないかな?」
「人数の空きはございませんが、空いた時間に教えることは可能です」
「ああ、それでいい」
「でしたら、魔法学園の学園長と打合せしましょう」
学園長?!そんなの決めてなかったぞ。
さすがに僕がなるのはおかしいし……
いずれ魔法研究所の所長はレネアにする予定だから、
魔法学園の学園長もレネアにするか……
しかし、十五才で学園長っていうのもなぁ……
でも三十人ぐらいなら大丈夫かな。
彼女は才女だし。
「分かった。後で学園長を連れてこよう」
レネアに早く確認しないとな。
――――
――――――
<魔法研究所・所長予定室>
レネアに先ほどの件を話す。
「ええ!私が学園長ですか!?」
「確かに少し急だけど、いずれ魔法研究所の所長は君になる予定なんだから、その練習にもなるだろう。一般科目の教員も目途もついたし」
「うう、わかりました。ただし、条件があります!」
「(何だろう?)言ってごらん」
「父上がフォローすることです!」
「それは当然だし、もちろん、そのつもりだよ」(なんだそんなことか)
「それから……魔法研究所の方は父上が所長になること!」
えっ! 考えてなかったぞ。
「……う~ん、そうだな。最初だけそうしようか」(参ったな~)
「人数は三十人一クラスに抑えて下さい。少数精鋭でいきます」
「どれだけ集まるか分からないけど、そうしよう」
「先ほど、テネシア元帥とイレーネ宰相がいらっしゃいましたけど、講師を頼みたいです。それにミア内務大臣も」
「それは僕も考えていた。頼んでおこう」(あの三人は優秀だからな)
「トアラちゃんとテセルス君も入園するのですか?」
「元々、王立学園に入る予定だったんだけど、母親に知られてしまったからな……」
「私はいいと思います」
「まあ、しかたないけど、その代わり、一般科目も王立学園並みにレベルをあげる必要が出てきたしまったよ」
「王立学園並みですか?」
「ああ、魔法科目に注力するが、一般科目もおろそかにできなくなった」
「責任重大ですね」
「そうだな。当初は王族が入ることを想定してなかったからな。王族が入るなら、しっかりした科目編成が必要だ」
「どうしましょう」
「後で王立学園の校長と一緒に打合せしよう」
「なるべく向こうの教員をこちらへ分担してもらうわけですね」
「苦肉の策だが、短期間で成果をあげるには既存のシステムを借用するしかないな」
この後、レネアと一緒に王立学園の校長と打合せし、優秀な教師陣に魔法学園も兼任してもらうよう調整した。三十人一クラス予定だから、何とかなった。
ちなみに魔法研究所の方は完全に魔法科目に特化してるから、僕とレネアで十分いける見通しだ。ただ人数の方は二十人ぐらいに抑えようと思っている。よく考えたら研究って、各研究員が個別に活動する時間も多いし、より高度な内容を想定している。魔法学園以上に少数精鋭にした方が良さそうだ。
少数精鋭にこだわったのは僕らの受け入れ能力の問題もあるけど、経営面も考えてなんだ。僕は今回入る魔法学園の生徒、魔法研究所の研究生については学費を徴収するつもりは無いし、それどころか住居、衣服、食事等の面倒も全面的にみるつもりだ。今の僕にとっては大した負担にならないが、最終的に独立採算を目指してるので、過剰な人員を避けたいのだ。
人数や規模を増やすのは小さい成功をしてからだ。元々、レネアに魔法研究をやらせてあげたいという親心から出発しているが、なんとも大きな話になったものだ。
僕もレネアも魔法が大好きだから、それに打ち込める居心地の良い場所をつくりたい。ここまで来たら何としてでも軌道に乗せるぞ!
――――
――――――
魔法学園の生徒と魔法研究所の研究生の募集を王国全土で告知した。今回も各領地の掲示板と王国放送を活用したが、値下げにより受信機が大衆に広まり、広告効果も以前より大きくなった。それから、問い合わせ窓口の管轄は学問省に頼んだ。以前の学問省なら、余計な仕事を嫌がって避けただろうが、既に組織は刷新されており、好意的に協力してくれるのが嬉しい。
<魔法学園・学園長室>
応募状況をレネアと確認する。
「募集は魔法学園三十人、魔法研究所二十人だったが、何人ぐらい応募してきたかな?」
「今、数えましたが、魔法学園に六百人、魔法研究所に千人ぐらいでした」
「なっ!なんでそんなに多いんだ!?」
「……たぶん全員学費免除だからですよ。しかも衣食住の負担もないですし。こんなの普通ありえないです」(呆れ気味)
「しかし、王立学園でさえ、こんな競争率にならないぞ」
「王立学園は学費が高いですし、平民は避ける傾向にありますから」
「う~む、しかし、凄い倍率になってしまったな」
「でも、それだけ優秀な方を選ぶことができます。こちらにとっては良い話です」
「それなら試験は難しくするしかないな」
「そうなりますね」
「両方とも試験は、学科試験、実技試験、面談の三つにしよう」
「先ずは学科試験ですね」
「君が作ってくれるか?実技と面談は何とかなるが、さすがに学科は君が適任だろう」
「えっ!私がですか!?」
「大丈夫、大丈夫、みんなフォローするし、やってやれないことは無い」
「わ、わかりました。まさか私が学園長になるわ、試験問題まで作成する羽目になるとは思いませんでしたが」
「人生なんて、そんなものだ。僕だって、昔はまさか国王になるなんて思っていなかったからなぁ」
「ふっ、父上が言われると妙な説得力があるから困ります。とにかく分かりました。やれるだけやってみましょう」
「頼むぞ! それと、あとは試験場だな。ここでは無理だし……」
「休日の王立学園を借りましょう」
「うん、それしかないな」
さて、いよいよ試験問題の作成だ。ちなみに僕の子供、トアラとテセルスにも同じ試験を受けてもらうつもり。彼らの学力なら間違いなく王立学園に合格するはずだが、魔法学園の方も高い倍率で相当な難関になってるから、予断を許さない。
後でテネシアとイレーネにはきちんと説明しておこう。
魔法学園 募集三十人 応募六百人 倍率二十倍 未成年(六才)
魔法研究所 募集二十人 応募千人 倍率五十倍 成年(十五~二十才)
しかし、魔法学園もそうだけど、魔法研究所の倍率がトンデモないね。魔法学園は魔法研究所の付属施設として発案したんだけど、付属だから魔法学園の卒業者はエスカレーター方式で魔法研究所に上げる予定だ。魔法学園は来年以降、一クラスずつ上級クラスを作っていく予定だから、最終的には三十人×九クラス(六~十四才)=二百七十人になる予定だ。
六才の子供が成人(十五才)するまでに、九年かかる。分かり切ったことなんだけど、この間の負担を王国負担とすると結構大変だ。ミア内務大臣とも相談するけど、不足分は僕のポケットマネーで補填しよう。それと魔法学園でお金がかかる分、魔法研究所で稼ぐ必要性がより高まったな。レネアとも打合せしよう。
しかし、改めて思ったが、夢というのは実現させるには、いろいろ手間がかかるものだな。将来の収支を考えると課題はあるが、これをクリアするのも面白いものだろう。
取り敢えず目前の試験だ! いい人材が集まるのを期待しよう。
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