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第353話 長い付き合い

 ううむ、ライナスの奴、いきなり僕とミアのことを聞いてきて、何なんだ?でも、あの感じだと、ライナス自身の考えというより、誰かから頼まれたんだろうな……


 ライナスにそんなことを頼めるのは一人しかいないだろう。そう、婚約者のラーシャだ。でもラーシャが一体なぜ、そんなことを知りたいんだ?僕がミアをどう思っているかなんて……


 ああ、そう言うことか……ラーシャは自分の結婚後、ミアのことを心配してたんだな。ミアは独り身なのに、娘の自分が結婚するのは申し訳ないような考えも、あるのかもしれないな。


 こういうのは間に何人も人が入るとたいてい行き違いになってしまう。直接、ミアに確認してみるか。


――――

――――――


<王都・ミアの侯爵邸>


 ここは僕が貴族になって、初めて頂いた貴族邸だから、愛着あるんだよな。今はミアの邸宅になってるけど、ここで僕、テネシア、イレーネ、ミアが集まって、内輪話をよくしてるんだよ。今日は例の件を確認したいから、僕だけで来た。


「相変わらず、ここは落ち着くねぇ」


「そうですか?王宮の方がもっと豪華で行き届いてますよね」


「確かに王宮は立派だけど、人が多いし、長くいると気を遣うもんだよ。ここは人の目が無いから、それだけでも気楽だよ」


「ふふ、そうですか」


「君も王宮薬師だから、わかるだろう?」


「そうですね。でも私はずっと王宮にいるわけではありませんから、まだ楽な方です」


「一日の仕事はどんな感じなんだい?」


「先ず、朝夕はヨウス領、エルフ居住地区の世界樹と神木マナスのチェック、日中は、薬草と回復魔法の研究、王立図書館で調べもの、王立療養所で治療、キリク領の薬草畑チェック、ベルム領の植物ダンジョンで薬草採取、ギルフォード王国の薬草畑チェック、回復薬チェック、それと内務大臣の仕事です。ああ、それと連邦放送局のサラの様子や、王国専属芸能人の体調もみたりしますね」


「うっ!……結構、ハードだな……」


「一見、そう見えますけど、【転移】で移動時間はかかりませんし、チェックは要点だけですし、薬草の仕事は私にとって、趣味みたいなものですから、まったく疲れません」


「その中だと内務大臣の仕事が片手間みたいだけど、きちんとできてるのが凄いよなぁ」


「私も陛下を見習って、部下を信用して任せてますから」


「なるほどね……ん」



ああ、そうだ!これじゃ、いつもの会話じゃないか。肝心のことを聞かないと!


「ああ、そうだ、ところで、ミア、ちょっと確認したいんだけど……」


「なんでしょう?陛下」


「最近、ライナスから、君のことをどう思うか、聞かれたんだよ」


「……普段、そういうことは聞かれないのですか?」


「そうなんだよ。突然だったし、何かあるのかな、と思ってさ……」


「……それは、たぶん、うちのラーシャから頼まれたんですね」


「うん、僕もそんな感じがしたよ」


「実は私もラーシャから、陛下のことをどう思うか、聞かれたんです」


「……なるほどね」


「要は二人の子供が親を心配したってところだな」


「……ですね」


「ところで、君はラーシャになんて答えたんだい?」


「えっ!……敬愛してると答えました」


「そうか」


「陛下はライナス殿下に何とお答えになったんですか?」


「あいつには信頼できる側近と答えたけど……」


「ふふ、陛下のお気持ちはみなまで言われなくても、わかります……」


「いや、こういうのははっきり言っとかないとな。信頼してるし、大切だと思ってるし、もう半分家族みたいなものだな」


「……ですよね。私も長い付き合いで半分家族みたいなものです」


「たぶん、ライナスとラーシャは恋愛とか、そういう感じで聞いてきたと思うんだけど、僕たちの関係はそういう男女の色恋とは違うよな」


「ふふ、そうですね。王妃様、テネシアさん、イレーネさん達とは明らかに違いますよね」


 こういうのを前の世界ではプラトニックラブというのかな?いや、それとも少し違うな。うまい言葉が見当たらない


「おそらく僕たち二人の間ではそれで成立してるんだろうけど、知らない人から見たら、よくわからないんだろうね」


「……そうですね。私から見て陛下は尊敬、親愛の対象ですけど、自分のものにしたいとか、そういう感覚はないですね。でも、程よい距離で共に過ごしたいとは思います」


「程よい距離か……」


 おそらく、ラーシャはミアが独り身に見えるから、気にしてるんだろう。まあ、客観的に見れば、確かにミアは独り身なんだけど、形式的にでも夫婦になれば、安心するのかな?


「要は僕もミアも現状で不満はないけど、ミアが独り身でいることにラーシャが心配してると。なら、夫婦という形式をとってみるかい?」


「夫婦という形式ですか?」


「うん、結婚という制度自体が形式だからね」


「陛下は形式にこだわりませんよね」


「ははは、実はその通りなんだよ。でも僕はこだわらなくても、世間やまわりがそうとは限らないからね」


「わたしが陛下と結婚すると、まわりも安心するということですね」


「本当はそんなのは本人の自由なんだけど、君は若返りスキルと世界樹の影響で、実際より若くなってるからね。だから、変な虫を寄せ付けない意味も多少あるかな。ははは」


「そう言えば、以前、パーティーに出た時、よく声をかけられました。でも自分の子供ぐらいの年齢ではさすがに相手にも悪いですし」


「僕の妃ということになれば、男は声をかけてこなくなるだろう」


「ふふ、それは助かりますね」


「わかりました。この件は陛下にお任せしますけど、関係方面への調整連絡は陛下の方でお願いします。王族関係には私には無理ですし、テネシアさん、イレーネさんにも言いづらいですし」


「当然そうなるよな……まあ、今回は結果がどうなっても、ミアと僕の関係は今まで通りだからな」


「ええ、よろしくお願いします」


 しかし、ライナスとラーシャの結婚前だと言うのになんで、こういう話になってるんだろうな?あの二人の意向に沿って動くのは、ほんのちょっと癪だけど、この流れは僕にとって決して悪い流れでないので、そのまま乗ってみよう。ずっとミアのことを気にしてたのは、その通りだからね。


 もし、僕がメリッサ、テネシア、イレーネと結婚せず、独身だったら、とっくにミアと結婚してたと思う。三人と結婚してミアとそうしなかった理由はお互いの距離感が大きいが、もう一つあげれば、切っ掛けがなかったこと。この切っ掛けに乗るのも悪くないだろう。


僕はこういう目に見えない切っ掛けや流れというものを大切にするからね。

 最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました。もし拙作を気にいって頂けましたら、いいね、評価、ブックマークをして頂けると大変有難いです。

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