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第四章 明日へ続く世界 ー同居ー

「おつかれさま」


 部活が終わった早紀を、結衣はいつものように待っていてくれた。


「たまには私がお姉ちゃんを迎えにいきたいな〜」


 早紀は結衣の横に並んで歩き出す。


「よく頑張ったね。体育祭も、友達も」


 結衣は恐ろしいほど早紀のことを何でも知っていると、早紀は心の中で下を巻いた。


「うん」


 うつむく早紀の頭を、結衣はぽんぽんと叩いた。


「良かったね」


「うん……!」


「次はいよいよ、インターハイだね」


 結衣は自分のことのように言葉に力を込めた。


 早紀はそんな結衣を笑って茶化した。


「もう、お姉ちゃんがでるんじゃないんだから」


「でも……」


「私はもう、誰にも負けなよ! お姉ちゃんにもね!」


 そう言って駆け出した。


「競争だよ! 私の家まで競争!」


「あー。もう、早紀ちゃんずるい」


 そう言って追いかけてくる結衣を見ながら、早紀は、いつもの河原でかけっこをしたいつかの暖かい思い出を思い出していた。




 先に家についたのは、いつものごとく結衣だった。


 フライングを決めただけあって、途中までは早紀が優勢だったが、いつのまにか結衣に追い越されてしまっていた。


「早紀ちゃん。遅いよ」


 玄関で結衣が手を振る。


「もう、お姉ちゃんが速いんだよ。次は負けないから」


 早紀は肩で息をしながら門扉を開けた。


 二人はいつの日からか早紀の家でともに住むようになっていた。


 両親の暗黙の配慮もあって、早紀の家には父は帰らなくなっていた。


 二人は、両親が離婚する前と同じように、二人で寝て、起きて、勉強して、まるで両親の離婚など無く、ずっとそうしていたかのように自然と暮らした。


 朝は誰よりも早く起きて、結衣の特別メニューの朝練をして、それぞれの部活の朝練に繰り出す。


 夕方家に帰ってからも結衣の特別メニューの練習をこなし、二人で勉強をして床につく。


「早紀と一緒に勉強するようになってからさ、私、苦手だった物理の成績良くなったんだよ」


「そうなんだ」


 一緒に勉強をして成績が良くなっているのが早紀だけじゃないことに、早紀は少し驚いた。


「でも、苦手って言っても、別に赤点とったりしてたわけじゃなでしょ」


 思わずつっこむ。


「そうだけど」


 ペンをくるくる回しながら結衣は唸った。


「でも、苦手だったんだよー」


「はいはいわかったわかった」


 早紀は結衣の頭をなでなでして落ち着かせる。


「どうどう」


「もうっ」


「私のおかげだねっ」


 早紀はぺろっと、下を出してウインクした。


「そろそろ寝よっ」


 早紀はノートをぱたんと閉じて結衣を促した。


「うん」


 二人で同じ布団で寝るところまで、昔のままだった。


「お姉ちゃん」


「ん?」


「手、繋いで」


 早紀は、昔と変わらず、それまで会えなかった時間の分まで結衣に甘えた。


 結衣もそんな早紀を受け入れ、言うがままにさせていた。


 結衣は早紀を。


 早紀は結衣を、心から必要としていた。

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