第三章 再び、あの場所へ ー「行くよ!」ー
「どんなに離されていても、最後は必ず私が抜き返すから、みんな、安心して走って欲しい」
競技前、早紀はリレーに出場する三人を集めて話し合った。
三人とも運動部に所属しており、クラスではトップクラスのランナーだったが、それでもやはり他クラスの走るのが専門の陸上部員に勝てるはずがないと引け目を感じていた。
それを感じ取った早紀は、みんなの意識を奮起すべく呼び集めたのだった。
こんな行動を自分がとれることに早紀は自分で驚いていた。
これも、柚木が言っていたキャプテンの素養というものなのだろうか。
早紀は三人に、自分を信じてほしいと繰り返し伝えた。
「ただし、半周以上離されると、さすがに厳しくなる。だから、半周の距離は死守してほしい。大丈夫、みんなならきっとできる。それで、後は私にまかせて」
まかせて。
そんな言葉が言えるようになるなんて。
早紀は自分の成長を確かに感じた。
「わかったよ。早紀がそう言うなら、私は自分のできる限りのことをするよ」
最初に口を開いたのは第一走者の柔道部の子だった。
胸をどんと右手で叩いて、まかせて。と力強く言ってくれた。
それにつられて、他の二人も瞳の輝きを取り戻したように思えた。
「わかったよ。水野さんが言うなら、勝てる気がする」
第二走者の子が言うと、第三走者の子もそれに続いた。
「今年こそ、総合優勝だね」
四人は、小さいながらも円陣を組み、気合いを入れ合った。
「いくよ!」
早紀が叫ぶと、三人が 「おう!」 と声を合わせる。
かすかに空気が震えたように早紀は感じた。
いける!
早紀は確信していた。




