第三章 再び、あの場所へ ーあの場所へー
「今から全学年対抗女子リレーを行います。選手の皆さんはスタート位置に着いてください」
アナウンスが流れると、早紀の緊張は高まった。
一年前と同じあの場面だ。
早紀が最初にゴールテープを駆け抜ければ勝てる。
最終競技のリレーまで、またも三組と点差は互角。
勝った方が総合優勝する。
最終局面だ。
スタート直前、クラスの自分の席からグラウンドに向かう早紀は、去年は湧かなかった感情で満たされていた。
勝ちたい。
なにより、自分のために!
クラスカラーの赤いはちまきをぎゅっと締めると、心が引き締まる感じがした。
照りつける太陽のせいで、グラウンドはゆらゆらと揺れていた。
負けるもんか。
気合い十分の早紀に、その声は届いた。
「早紀ちゃん、頑張ってー!」
クラスの女子の声に振り返ると、そこにはクラス全員が集合していた。
「せえのっ!」
音頭とともに小さいながらも立派な、早紀の横断幕が広がった。
それとともに巻き起こる、早紀への暖かい声援。
「早紀頑張れよー」
「負けるなー」
「お前ならできる!」
クラスの生徒から口々にかけられる応援の言葉に、早紀の胸は熱くなった。
早紀は無言で右手を上げると、スタート位置に向かって歩き出した。
みんなの声援がこんなにも力を与えてくれることを、早紀は始めて知った。
勝負は再び、三組との戦いになるだろう。
他には三年生のクラスが何組か勝ち上がってきているが、三組と早紀のクラスの実力は秀でていた。
三年のクラスのアンカーには柚木がいた。
柚木は早紀に気づくと、ウインクをしてきた。
「早紀、がんばるんだよ。私も絶対に負けないけどね」
「私こそ、負けません」
早紀がそう言うと、水野は明るく微笑んだ。
「いい顔できるようになったじゃん」
三組のアンカーは、去年と同じバスケットボール部の子だ。
でも、大丈夫。
私には、お姉ちゃんがついてるんだから。
グラウンドの端に居る白ずくめの結衣に目をやる。
結衣はいつものように大きな白い帽子をかぶっているため、顔は見えないが、しかし、確かに笑って応援してくれていると早紀は確信した。
あの青い瞳が私を見てくれている以上、絶対に負ける訳がない!
早紀は静かに、その時を待った。
「位置について、よーい」
パン!
ピストルの轟音がグラウンドに響き渡ると、第一走者が駆け出した。
切り裂く風とともに、全校生徒からの声援が送られた。
そのうねりは稲妻のように早紀の耳に届いた。
第一走者は柔道部の子だった。
三組は陸上部の部員。
明らかに実力に差があった。
それでも、早紀はクラスメイトを信じた。




