第三章 再び、あの場所へ ー二人だけの特別練習ー
それから毎日、二人は、早朝と夕方、それぞれの部活が始まる前と終わった後に練習を行った。
二人だけの特別練習。
それだけで、早紀は練習の疲れなど感じなかった。
結衣の用意したメニューは楽な代物ではなった。
毎日こんな練習をしてたんだ。
と、早紀は改めて結衣の努力に感心しっぱなしだった。
早紀の家の庭は、庭というには十分すぎるスペースを兼ね備えてた。
二人が秘密の特訓を行うには、うってつけの場所だ。
「はい走る! 足あげて! いち、に、いち、に」
さながら結衣は鬼教官のようだった。
「足さがってきてるよ! 足!」
「はいっ!」
早紀は従順な生徒だ。
「軽くステップを踏むように足をあげて地面に着地させることができるようになれば、早紀はもっと速くなるよ」
等間隔で置かれた、足のくるぶしまでの高さの小さなバーを、早紀は小気味よく何度も何度も往復する。
「はいっ!」
早紀は必死に結衣の指導に従った。
同じことの反復練習。
その大切さを誰よりも結衣は知っている。
結衣の速さの理由。
それは、基礎練習を抜かること無く毎日続けた結果だった。
「はい。お疲れ。少し休憩して、あと一セットやって終わりにしよう」
「はい」
最終セットが終わると、早紀はその場に倒れ込んだ。
手を広げて、大きく息を吸う。
朝もやに包まれた空気は、澄んでいて、吸い込むととても気持ちがいい。
「どうしたの? 早紀? 大丈夫?」
心配した結衣が、慌てて駆け寄って来た。
「大丈夫大丈夫。少し、こうしてみたくなっただけ」
「もう。驚かせないでよ」
そう言って、結衣も早紀の横に寝転んだ。
「う~んっ」
胸いっぱいに空気を吸い込む。
「気持ちいいね。お姉ちゃん」
「そうね」
寝転びながら、結衣は早紀の頭をぽんぽんと叩いた。
「早紀がとても良い生徒だから、私は教えがいがあるよ」
「えへっ」
「さっ。休憩終わり!」
結衣は跳ね起きると、早紀に手を差し出した。
「起きて。続きやるよ」
早紀は結衣の手を取り、元気よく頷く。
「うん!」




