20日目②
綾瀬を電話で呼び出した。綾瀬は既に家に帰っていたらしく、到着までは時間がかかるらしい。早く来てほしい。
「凪沙ちゃんは綾瀬とそういう関係じゃないにしても、綾瀬がわたしたち以上に夏祭り一緒に行くのを優先する仲なわけじゃない?」
「ですね」
「どこでそんな仲良くなったの?」
横で小林先輩、柊先輩がうんうん、と首を縦に振っている。
「入学してちょっと経ったぐらいに図書室で会って、そっからです」
「図書室で会って、それでそんな仲良くなるもんか?」
綾瀬が来るまでは聴取は回避できそうだ。
「桐生先輩が急に話しかけて来たんです」
「会話厳禁」
それはほんとにそう。
「うちの学校そんな図書室に人がいないのでまぁ、って感じです。それにそのとき隅の方だったんで声がそんなに通らないんですよ」
「そんな場所あったんだ」
「ね、二年目だけど初耳」
「そもそも私たち図書室行かないしねー」
わはは、と笑うギャルたち。私は苦笑いをするしかない。
「てか、なんで綾瀬は図書室行ったんだろうね」
「ねー。一年の時とか校内見学のときでしか行ってないのにね」
綾瀬ってやっぱり図書室に縁がないタイプの人間だったんだ。解釈一致。
「それも含めて聞けばいいでしょ」
「───待った?」
「来た来た。ささ、こちらへどうぞ。温めておきやしたぜ」
「苦しゅうない」
噂をすればなんとやら、綾瀬が変なやり取りを済ませて席に着く。
心強いとも言い難いし、不安だとも言い難い気持ちになる。どうか思いが同じで合ってくれと願うばかりだ。
「綾瀬を呼び出したのは他でもない、そこの凪沙ちゃんとの関係を洗いざらい話してもらおうか!」
頼む……ッ!
「え?と、友達だヨ?」
勝ったッ!追及編、完!解散だ、野郎ども!
「いやいや、嘘くさいって」
「素直だねー、綾瀬。そゆとこかわいいぞー」
わかる。
けどよくない。和泉先輩も言っているが、嘘くさかった。
「嘘なんて言ってないよ。ただの友達だよ。それ以上でもそれ以下でもないよ」
「桐生先輩もこう言ってることですし、もういいじゃないですか」
「……桐生、先輩?」
小声で綾瀬が何か言った気もするが、気にしない。
「綾瀬、どうかした?」
やはり障害は小林先輩か。ほか二人と比べて纏っている雰囲気が達人のそれだ。
私は全力で、かつバレないようにアイコンタクトで伝えることを試みる。
「いや、なんでもない」
なんとか通じたのか、車のように危険を察知したのか。どちらでもいいが、ナイス。
「さっき凪沙ちゃんと綾瀬が出会った時のこと聞いてたんだけどさ」
急に小林先輩が話題を変える。私含め、和泉、柊も不思議そうにしている。
「うん」
「そのときなんで図書室行ったの?去年とか自主的に行ったことないじゃん」
「よくわかんないけど、予感が在ったから?」
何言ってるかよくわかんない。
「わたしらに聞かれても……。予感って?」
「予感は予感だよ。勘と言ってもいい」
「最初っからそう言ってよ、わかりづらいなぁ」
勘で理解できたの?ちっともわからない。運命ということにしておこう。
「じゃあ次ね。高頻度で行ってたのは凪沙ちゃんに会うため?」
なにがしたいのか、小林先輩は私たちの馴れ初めを綾瀬に聞いていく。私的には綾瀬視点で楽しめて、楽しい。
「そうだよ」
「それは、なぜ?」
「無性に気になったというか、なんというか。ハズイね、これ」
「詳しく教えてよ」
興味しんしんそうに柊先輩が口を開く。
「ん~。ほら、凪沙ちゃんってかわいいじゃん。だからかな」
凪いでいた私の心に衝撃が走る。私、かわいいって。我慢しないと表情が緩んでしまいそうだ。
「やっぱ、綾瀬と凪沙ちゃん、付き合ってるよね」
別の衝撃が走る。それとこれは互いを強めあう。
「凪沙ちゃんの顔もなんか面白いことになってるし」
心外な。私のかわいいお顔のどこが面白いって?
「……。ターイム!外の空気吸ってくる!凪沙ちゃん、行くよ!」
「は、はい!」
急だったから変に高い声が出た。
私に手を差し出した綾瀬の手を取って一緒に外へ出る。
☆☆☆
「これさ、もう無理じゃない?」
「マジ?」
「おおマジ」
「その心は」
「まず、小林はもう確信してる。こうなったら私か凪沙ちゃんがボロを出すまで付き纏ってくる」
そんな執念深いタイプだったんだ、あの人。
「次に、柊がめちゃめちゃ興味持っちゃってる。あとは小林と一緒」
こっちは予想できた。目のうちが光ってる感じがしたし。
「だから、もう無理だよ」
ガチトーンで綾瀬が告げる。冷や汗が止まらない。
「学校中に広まっちゃうのかな」
「それはないと思う。ちゃんと言えば和泉が二人を止めてくれるはず」
私としては和泉先輩がそうしてくれる確信はないが、ここは綾瀬を信じよう。
「和泉先輩って、やさしいね」
「だから、もうよくない?」
「……いっか~」
白状するということで話がまとまったところで、店に戻る。
「ただいま」
「おかえり。じゃ、結論をどうぞ」
小林先輩はどこか見通しているような雰囲気を感じる。こわい。
「その前に、絶対秘密にしてね」
前提を伝えなくては伝えられない。
「それが答えみたいなもんだけど、いいよ」
「わたしもそれでいいよ。もともと広める気ないし」
柊先輩はコクコクと頷いている。この人は話が聞ければ何でもよさそうだ。
「私たち、お付き合いしてます」
「いつから?」
ちゃんと目を輝かせながら柊先輩が私たちに尋ねる。そして私たちはある程度のことを話した。
どうでもいいことですが、アカウント名を「山中山冲」に変更しました。憧れから来るものです。




