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云々蒐集短譚  作者: 里崎
29/30

星空の吸血鬼

[星空に棲む吸血鬼の少女♀×片想いしてる浴衣姿の眷属♀]


#ファンタジーワンドロライ 参加作品

お題「吸血鬼」、「アンデッド」、「星空」


#キスの日 記念


夜風を含んで大きく膨らむ、白いレースカーテン。大理石のタイルの上をひたひたと進んできた白い素足が、赤い鼻緒を引っかける。桐材の下駄が、カラコロと小気味よくウッドデッキを鳴らす。


鼻歌と共に丸いガラステーブルに置かれたのは、二つのワイングラスとステンレス製のワインクーラー。葡萄畑の描かれた古いラベルの赤いボトルが氷を押しのける、涼しげな音。


ガラステーブルの天板に落ちた丸い水滴に細い指先が触れて、戯れにまっすぐ引き延ばした。


2人掛けのカウチに腰かけた浴衣の女性が、濡れたままの赤い髪を無造作に掻きあげた。毛先からぽたりと垂れた水滴が、浴衣のすそに描かれた大きな撫子の花に染みて、すぐに消える。


彼女の頭上に大きく広がるのは、真っ暗な星空。赤みを帯びた一等星が楽しげにまたたく。

それが、ふと消えた。


闇空がカーテンのように揺らめいて、真っ黒なレースワンピースが浮かび上がる。闇の空から溶け出るように姿を現したブロンドヘアの少女が、黒いワンピースをひらひらと踊らせながら、ベランダの手すりに金色のハイヒールを乗せる。鈴を転がしたような声で、夜の挨拶をひとつ。

音もなく、流れるような動きで浴衣の女性の隣に座りーー


衣紋えもんの抜かれた白い首筋に吸い寄せられるように、白い牙を立てた。


重なり合う二人の背後で、白いカーテンがふわりと揺れる。


黒い革製のチョーカーを付けた喉元がゆっくりと上下する。満足そうな笑みを形作った薄い唇が首筋を離れ、ごちそうさま、とささやいてーーそれを追うように、綿絽めんろの袖がするりと伸びて黒いチョーカーをなぞり、細い肩を抱き寄せる。


ゆっくりと、二人の唇が重なった。ピンクゴールドのチェーンピアスがしゃらりと鳴って、ふっくらとした頬の上を滑る。


星空に向かって、白いカーテンが大きく広がる。


「……これ・・は、必要ないんだけど?」


吸血鬼の少女は、離れていく唇を見つめ、虚を突かれたような顔で呟く。


楽しげに笑う赤毛の女性が、衿を整えながらごちそうさま、とささやき返した。「わたしには必要」


「……酔ってるね?」


「酔ってません」


「酔っぱらいは、みんなそう言う」


ラメ入りの金色のヒールがウッドデッキに落ちて、硬質な音を立てる。カウチの手すりに肘を載せた少女は、しなやかに身をのけぞらせて広い空を見上げた。


木々のざわめき。遠くから鈴虫の音。

吸血鬼の少女がぽつりと言った。


「……ねぇ、私のこと恨んでる?」


赤い髪を掻き上げて、からっと笑った女性が、

「まぁ、二郎系食べたいときだけね。それに、」

たもとを押さえながら赤いボトルとワインオープナーに手を伸ばす。ワインクーラーの氷がぶつかり合う音。


「自分の生まれ年の酒が、こうやって100年モノの熟成状態で飲めるし」


「……古今東西、酔っぱらいってどうしてこう」


澄んだ音で打ち鳴らされたワイングラスの向こうで、赤みを帯びた一等星が楽しげにまたたく。


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