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眠れぬ夜の魔法遣い/妖怪の笛/誘拐事件
「世界は泣き虫と怖がりでできてるんだ」
眠れぬ夜。僕の毛布をひっぺがした魔法遣いが、不思議な水晶を見せてきた。
演説前にぶるぶる震える大統領。夜が怖いと泣く僕に似た顔は、幼き日の父さん。
「おっと、ここまで」
水晶を隠す魔法遣いの指の間、カメラの前に笑顔で登壇する、大人になった僕がいた。
***
少女は毎日、広い山のあちこちで、妖怪にだけ聞こえる笛を吹く。覚えていないが昔の恩人らしい。でも、妖怪が現れたことはない。
夕焼けが辺りを包んだころ、「夕飯だよ」と尊が呼びにくる。
「なんで尊は私の場所が分かるの?」
「親子だからね」
「本当の親子じゃなくても?」
「うん。君の両親に守るって約束したからね」
手を繋いで進む帰り道、尊が優しく微笑んだ。
***
夫婦が身代金を払ったが、誘拐された息子は帰ってこない。
数日後、当人から家出して町で暮らしていると連絡が。
なぜ虚偽を?夫婦は泣いた。「あの子は煌びやかな外の世界にさらわれた。金で帰ってくるのなら払いたかった」
少しわかる。先日、娘と赤絨毯を歩いた刑事は、その言葉を飲み込む。




