情報クエスト
薄暗く湿っぽい地下牢への階段を踏みしめる度に、音が反響する。
そして、一つだけ中に人が立っている牢屋があった。
「あなたが、お掃除ロボットの前任者ですか?」
中の人が振り返る。それは、笑顔のメイドだった。
「ええ、そうよ」
「メイドのあなたが、何でこんなところに?」
「大臣が、私のこと気に入らないからって、ここに閉じ込めたのよ」
「そんな理由で……」
あの大臣も横暴だなと、メイドに同情する。
「私に、何か聞きたいことでも?」
「あの、王様と王妃様の喧嘩の原因知りませんか?」
「ああ、それね!」
メイドは頷いて、笑顔のまま話し始めた。
「とーっても、凄かったのよ」
「……」
「あれは、3日前の午後2時57分。王様と王妃様のお二人しか知らない隠し部屋で、秘密のおやつタイムを毎週火曜日にしているんだけど、その日は王妃様の大好きなトコロテンを、王様が用意して良い雰囲気だったの」
「……」
「で、一週間前の朝5時19分に寝室でお二人が話していた、玉座のクッションの話になって、王妃様が青って言ってたのに、王様が注文したのが緑と知って、王妃様イラッとして、右のこめかみに青筋立てたら、王様が君のこの青筋みたいに綺麗な青色だよって言って、王妃様が王様をグーパンしようとしたら、王様がギリギリで避けて、殴らせろ、何でじゃーと言い争いになったのよ」
「……」
「王様、クッションの色間違えたことに気づいてなかったのよ。王様、女性の気持ちわからないのよね」
「……とりあえず僕は、君を牢屋に入れた大臣の気持ちはわかったよ」
早く地下から出たいなと思っていると、メイドは牢屋の柵まで寄ってきた。
「ねえ、教えてあげたんだから、大臣にせめてご飯くらい持ってくるように言ってー。誰も持ってきてくれないのー」
「それは、さすがに可哀想ですね。一応、言っておきます」
僕はまたメイドに少しだけ同情しつつも、逃げるように地下牢を後にした。
【知らなくても困らない話・投獄】
メイドは鼻歌を歌いながら、掃除をしていた。そこへ、大臣が通りかかる。
「大臣、最近白髪増えました? 30年と7ヶ月と6日前は、全然でしたよね? 特に、左のこめかみ付近が右より12本ほど多いですね。その内、2本は根本に色が戻ってきてるので、安心して下さい」
「そんな情報いらん」
「それとも、王様と王妃様の17時間39分前の夫婦喧嘩の件で、頭を悩ませてるんですか? 仲裁するのに、57分時間かかってましたよね。秘密裏に、王様名義で王妃様に花を贈る計画立ててますもんね」
「そんな一気に白髪は増えんだろ。それと、何故その秘密をお前が知ってるんだ?」
「……」
「何故、ここで黙る!」
すると、たまたま兵士が通りかかった。
「そこの兵士、メイドを地下牢に入れてきてくれ」
「メイドをですか?」
「ひどーい!」
兵士は驚き、メイドは抗議の声をあげる。
「メイドが何かしたのですか?」
「気に入らないからじゃ」
「えー、私は何もしてないのにー。ただ、大臣のことを事細かく心配していただけなのにー。それに、私がいなくなったら、誰が掃除をするのよー」
「大丈夫じゃ! 新しくお掃除ロボットがきたからな」
メイドは、大人しく兵士に連れられ、地下牢に入った。




