天使クエスト
「いやー、ゴキブリ退治まで付き合ってもらって、ありがたいのう」
王の間に戻ってきて、王様が労ってきた。
「僕……、何もやってません……」
納得いかなかった。
「さて、そろそろ行くか!」
王が扉に向かおうとした時、その扉から兵士が飛び込んできた。
「王様、大変です!」
「どうしたのじゃ?」
「天使令嬢が、城の上空でドローンに衝突したようで、庭の木に引っ掛かってます!」
「それは大変じゃ! 天界に恩を売るために、助けるぞ」
「御意」
二人は、慌てて庭に走っていった。
「……恩を売るために?」
兵士は梯子を使い、枝に引っ掛かっていた天使を救出した。
「助けていただいてありがとうございます」
「いえいえ。あなたが無事で良かったです」
兵士はそう言って、天使の頭をポンポンとする。天使は顔を赤らめた。
「是非! お礼にお茶でも……」
「私はまだ仕事がごさいますので」
「仕事の後は!」
「交代は深夜なので」
「では、明日は!?」
「明日は訓練がありますので」
「じゃあ、別の日は!?」
「しばらく休みが取れないんですよ。どうぞ、お気になさらず。あなたに怪我がなかったのが、一番ですから」
兵士は優しく微笑み、背を向けて歩いていった。
「……」
天使は弓矢を取り出し、兵士に狙いを定める。
「待て待て! その弓矢で何をする気だ?」
「止めないで下さい! これで、あのお方のハートを撃ち抜くだけです」
「それ、物理的にだろ!?」
「あのお方に、私のことを刻まないと!」
王が、天使の前に立った。
「天使令嬢よ。あの兵士の連絡先、知りたくはないか?」
「知りたいです!」
「実は、天界の神にお願いがあるのじゃが……」
「お父様に交渉します!」
「ふむ。ならば、教えてやろう」
「いや、個人情報!」
僕のツッコミは二人に無視されたが、王がニヤリと笑ったのは見逃さなかった。
【知らなくても困らない話・天使】
「それで、連絡先は!?」
天使令嬢が、王に詰め寄った。
「ポケベルで良いか? たしか、あやつあれしか持ってなかったからのう」
「ポケベル?」
「相手に暗号化した数字を送って、連絡を取るのじゃ」
「二人だけの暗号!」
「114106で、愛してるじゃ」
「114106! 私、ポケベル用意します!」
天使令嬢は飛んでいってしまった。
「ポケベルって、いつの時代……てか、異世界にあるのか?」
「ワシも、使ったことはない」




