ゴキブリクエスト
王は、鎧と剣を装備した。
「勇者よ、待たせたな。さあ、行こう!」
王がそう言った時だった。
「うわぁー!!」
「キャー!!」
どこからか、悲鳴が上がった。
「何事!?」
「厨房からじゃ、行くぞ!」
王と一緒に城の厨房に飛び込んだ。
「料理長、どうしたのじゃ?」
「申し訳ありません。私としたことが、この部屋にゴキブリを出してしまいました……」
「そなたが、そんな失敗をするのは珍しいな? 数は?」
「一匹だけです」
そう答えたのは、メイドだった。
「一年半と3日前に、王様が王妃様の24番目にお気に入りの椅子の下で仕留めて、王妃様にバレないように一緒にいた兵士と大臣に箝口令を出した時のやつより、一回り小さかったですわ」
「あっ、でもあの時、大臣が一人で泣きながら後始末していて、手洗い30分もして手荒れしていたので、できれば綺麗に仕留めてあげたいところですね」
王は頷く。
「そうか。気を付けよう」
「待て待て待て。何で、牢屋にいるはずのあんたが、ここにいるんだ!?」
王がメイドの存在をスルーするのを、全力で止める。
「お腹すいたから、来ちゃった! 料理長のご飯、盗み食いするの大好きなの。今日は、隠し味にとかげの尻尾を入れてたわ。あっ、ちゃんと後で牢屋に戻るから、安心して」
「いやいやいや! そもそも、どうやって牢屋から抜け出したんだよ」
「……」
「何で、いつも喋りまくるのに、黙るんだよ!」
「さあ、それよりゴキブリ退治よ。数が増える前に、何とかしないと……」
辺りを探すが、見つからない。
「見失ってしまったのう」
「それなら、ワンちゃんに探してもらうのはどうでしょう? 王様、王妃様のハンカチを勝手に借りて、なくしてワンちゃんに13回探してもらってますよね?」
「そうか! その手があったか!」
庭にいた犬が、厨房に連れてこられた。
「ワン」
王はしゃがんで、犬と目線を合わせて、話す。
「クーン! キャンキャン、ワン!」
「ワン!」
犬は頷き、冷蔵庫の裏を示して、一声鳴いた。
「おお! もう見つけたか!」
ゴキブリが姿を見せた。
「気をつけて! ヤツは速いです」
料理長が、叫ぶ。僕はすぐさま飛び出した。
「それなら、僕が! 速さには自信あります!」
「ほっほっほっ、遅いわい」
僕が手を出す時間もなく、王が光の速さでゴキブリを仕留めた。
「これで、43回目のハントですね」
メイドはニコニコと拍手をする。
「ツッコミ、追い付かない……」
【知らなくても困らない話・メイド再投獄】
一通り片付けた後に、大臣が調理場にやってきた。
「王様、遅れてすみません。客人の相手をしておりまして……」
大臣はそう言いながら、メイドと目が合う。
「……何で、お前がここにいる?」
「来たかったから」
「牢屋の鍵は、ワシが持ってるんじゃが?」
「いつでも釈放待ってます」
「ふ、ざ、け、る、なー! また、牢屋行きだ。まったく、どうやって抜け出してるだか……」
大臣は再びメイドを、牢屋に放り込んだ。




