天国と地獄
前回のあらすじ
一目惚れした女の子に告白されたぜ!
以上!
俺たちがあまりにも大きい声を出すので、看護師さんにこっぴどく叱られてしまった。しかし、仕方がないではないか。目を覚ましてわずか20分、一目惚れした女の子から「恋人になってください」なんて言われたのだから。呆然としている俺の肩を叩き、ヨウが「耳を貸せ」とジェスチャーをしてくる。
「お前、何があった?」
「何って...特に何も。強いて言えばハンカチ届けたくらいか(怪物の時のこと覚えてるわけないし)」
「ハンカチくらいで人を好きになるなんておかしな話だよなぁ。お前、別にイケメンでもないしなぁ...」
「余計なお世話だ」
「お前、騙されてるんじゃねぇの?」
俺は「まさか」と呟き、彼女をチラッと見る。不安そうな顔をしていたが、目が合うとにっこりと微笑んだ。こんな子を疑うなんて、とんでもない。
「そんなわけないだろ。大体お前、俺とあの子に失礼だとは思わないのか?」
「すまん、すまん。でも、何にしろ一度あの子と話をしないとな」
そう言ってヨウは、彼女に話しかける。
「なあ、黒崎さん...だっけ?君はムツキのどんなところを好きになったんだ?」
彼女は赤く染まった頬に両手を当て、待ってましたとばかりに勢いよく話し始める。
「はい!私が目を覚ましたときちょうど警察の方がいらして、隣で眠っている男性が自分の身を顧みず私を怪物から守って下さったとお聞きしましたの!私、一目惚れしてしまいましたわ!その方が、ムツキ様ですのよ!」
気絶していたから、その間にあったことなど知らないと思っていたが...。それにしても、なぜ警察が?...いや、そんなことより、彼女は俺に好意を抱いてくれている。こんなに嬉しいことはない。
「ムツキ様、私と恋人になっていただけますか?」
答えは決まっている。悪いな、友よ。「先」で待ってるぞ。
「もちろんだ。俺も、君を大学で見かけた時から、とても気になって仕方がなかった。俺も、一目惚れだったんだ。だから、俺からも言わせてくれ」
こうして話している間も、気が気ではなかった。言葉を発するのを、うるさい心臓の鼓動が邪魔をしていた。スウッと息を吸う。一気に息を吐く。落ち着け。
「俺と…恋人になっていただけますか?」
心臓が今までにないほどバクバク鳴っている。思わず、目をぎゅっとつぶってしまった。恥ずかしさで逃げ出したい。恐る恐る、彼女の方を見ると、泣きそうな表情をしながら、目を輝かせて叫んだ。
「はい、勿論ですわ!」
ダイヤが俺の胸に飛び込んでくる。俺はダイヤをしっかりと受け止めた。嬉しいような、恥ずかしいような気持ちが込み上がってきて、思わず親友の方を向いた。ヨウが目を腫らしている。嬉しいような、悔しいような、複雑な表情をしていた。
しばらく嬉しさを噛み締めた後、お互い手を離す。少し話したいことがあったのだ。
「そういえば、その、俺の呼び方なんだけど」
「はい!なんでしょう?」
満面の笑みで俺を見てくる。だめだ、可愛すぎて直視できない。
「ムツキ『様』ってなんか呼ばれ慣れてなくて落ち着かないから、普通にムツキって呼んでくれないか?」
「わかりましたわ!あ、でも、いきなりは照れてしまいますので、しばらくはムツキ『さん』で。私のことも、ダイヤとお呼びください」
「わかったよ、ダイヤ」
ダイヤがフフッと笑みを溢す。ああ、幸せだ。こんな可憐な子が彼女で本当にいいのだろうか。
幸福感に浸っていると、突然、咳払いが聞こえた。三人が一斉に振り向く。
「お取り込み中悪いんだけど、少しいいかな?」
声をかけてきたのは、若い、けどもどこかがっしりとしている警察官だった。どこか居心地悪そうな顔をしている。それもそうか。
「2人とも、ずいぶんよくなったみたいだね」
「はい、おかげさまで!」
ダイヤが答える。知り合いのようだ。ということは、ダイヤに怪物の話を聞かせたのはこの警察官ということか。ニコニコしていた警察官が、いきなり表情を変え、こちらを向く。
「さて、ムツキ君。君に話がある。署までご同行願おう」
「...は?」
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