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第九話 見つけたのに、名乗れない



 ゼインは、光の中に立つ彼女を知っていた。


 その記憶は、現代日本のものだ。


 最初から全部を覚えていたわけではない。むしろ最初は、妙な既視感しかなかった。人混みの中で、ふと誰かを探してしまう癖。白い花を見ると胸がざわつく感覚。夜更けに見る夢の中で、月明かりの差す窓辺に立つ少女の横顔。


 それらが何を意味するのか分からないまま、彼は現代を生きていた。


 名前も違う。家も違う。職業も違う。生まれた環境も、過去のどの人生とも似ていない。普通に学校へ通い、普通に働き、普通に日々を送っていた。


 それなのに、ずっと胸のどこかに空白があった。


 自分は何かを探している。


 何を、と問われると答えられない。けれど、探しているのだという確信だけが妙に深く、何年経っても消えなかった。


 転機になったのは、ある冬の夜だった。


 仕事帰りの夜だった。特に深い意味もなく眺めていた動画の中で、彼は彼女を見つけた。雪の降る屋上。白いコート。街の明かりを背にして歌う、ひとりの若い女の子。


 最初は、ただ綺麗だと思った。次の瞬間、呼吸が止まった。


 画面の中の彼女が、まっすぐこちらを見る。


 たった数秒。


 それだけなのに、胸の奥で何かが強く引き裂かれたような痛みが走った。


 知っている。いや、知っているという言葉では足りなかった。

 探していた。ずっと。


 その一瞬で、夢の断片が一気に現実味を持った。白い花。夜の回廊。雨の石畳。礼拝堂。雪の日。何度も手を伸ばして、何度も届かなかった人生たちが、時間を無視して心の奥へ押し寄せてくる。


 彼はしばらく、スマートフォンを握ったまま動けなかった。


 動画はもう終わっているのに、指は再生を繰り返すことしかできない。


 コメント欄には「誰この子」「綺麗」「目がすごい」といった言葉が流れていた。だが彼にとっては、そんなことはどうでもよかった。


 やっと見つけた、と思った。

 いや、見つけたというより。


 やっと、目の前に現れた。


 それが天宮ひかりとの、現代での最初の再会だった。


    *


 それから彼は、彼女を追うようになった。


 最初は戸惑いもあった。自分は何をしているのだろう、と何度も思った。芸能人の動画を見返し、出演情報を追い、曲を聴き、SNSを確認する。傍から見れば、ただの熱心なファンに見えたかもしれない。


 けれど本人にとっては、そんな軽いものではなかった。

 人生のどこかにずっと引っかかっていた謎が、ようやく形になりかけていたのだ。


 天宮ひかり。


 その名前を覚えた。声を覚えた。笑ったときの目元を覚えた。画面越しでも分かる、誰かに届いてほしくて仕方がないような必死さを見て、胸が苦しくなることも増えた。


 彼女は、自分を探している。


 そう思ったのは、何度目かの配信を見たときだった。


 視聴者に向けて笑いながら話すその言葉の端に、ひどく個人的な温度が混じることがある。大勢に向かって発信しているはずなのに、どこかでたった一人に手を振っているみたいな気配がある。


 しかも、それが一度や二度ではない。


 ライブ映像でも、インタビューでも、歌の中でも、彼女はずっと何かを探している顔をした。


 そのたびに、彼の中で確信が強くなる。

 ああ、彼女も覚えているのだ、と。全部ではなくても、きっと。


 その確信がどれほど彼を救ったか、本人にも上手く言えなかった。


 これまで自分だけがおかしいのではないかと思っていたのだ。説明のつかない夢、感情、喪失感。どれだけ合理的に考えても辻褄の合わないものを抱えながら、それでも否定しきれない何かを持て余していた。


 でも、彼女も同じなら。

 彼女が、あんなふうに大勢の前で光になろうとしているなら。


 それはきっと、探しているからだ。


 だったら自分も、もう目を逸らせない。


    *


 彼が原作小説を知ったのは、ひどく拍子抜けするようなきっかけだった。


 移動中に流れてきた、ひかりのSNS投稿。


 最近読んだ本。

 悪役令嬢が意外と好きでした。目立つ子って、案外いちばん不器用だったりするよね。


 添えられていた写真には、読みかけらしい文庫本と温かそうな飲み物が映っていた。


 普段なら、彼はそういう投稿をそこまで深く受け取らなかったかもしれない。好きなものを紹介するのは自然なことだし、芸能人のSNSにはよくある投稿だ。


 けれど、その日はなぜか妙に気になった。

 ひかりが「悪役令嬢が好き」と書いたことも、どこか引っかかるものがあった。


 だから、何気なく本を買った。本当に、それだけだった。


 書店で平積みされていた原作小説を手に取り、電車の中で読み始める。軽い気持ちで読み始めたはずだったが、意外と人物描写が丁寧で、読み進めるほど彼は静かに眉を寄せることになった。


 ルミナリア・フォン・エルセリア。


 誇り高い公爵令嬢。強く、美しく、目立つ存在。主人公の前に立ちはだかる悪役令嬢ポジション。


 名前を見た瞬間、理由のない既視感があった。


 読み進めるうちに、その感覚はさらに強くなる。彼女の不器用さも、言葉の選び方も、強がり方も、ひかりが投稿でわざわざ触れた理由も、妙に胸に残った。


 気に入った、というより、忘れられなかった。


 もし彼がそのとき、もう少し器用な人間だったら、「ひかりのおすすめだから」と軽く流せたのかもしれない。だが彼は、そういう偶然を無視できない質だった。ひかりが触れたものを、自分も知りたかった。彼女が少しでも好きだと思った何かを、自分も追ってみたかった。


 後から思えば、それが伏線になっていた。


 まさかその本の世界へ本当に転生することになるとは、そのときの彼は当然思ってもいなかったが。


    *


 ドーム公演の夜、彼は客席の後方にいた。


 チケットを取るのは容易ではなかった。人気公演だったし、仕事の都合もつける必要があった。それでもどうしても行きたかった。画面越しではなく、同じ空間で彼女を見たかった。もし本当に、何度も探し続けてきた相手なのなら、直接この目で確かめたかった。


 会場は信じられないほど大きく、熱に満ちていた。

 照明が灯り、歓声が上がり、ひかりがステージに現れた瞬間、彼はひどく静かになった。


 光の中に立つ彼女は、綺麗だった。


 現代の服を着て、眩しいライトの下で歌っているのに、なぜか昔の記憶たちと少しも矛盾しない。王女だった頃の面影も、祭りの夜にすれ違った少女の気配も、全部そこに重なって見えた。


 やっと、と思った。やっと見つけた。


 どれだけ時間がかかったのか分からない。何度失って、何度遠回りしたのかも数えきれない。それでも、この瞬間だけは確かだった。


 彼女はいる。


 ここに、いる。


 視線が重なった気がしたのは、中盤のバラードだった。


 客席の遠さも、スクリーンの光も、周囲の歓声も、何もかもがその一瞬だけ遠のいた。彼女がこちらを見た。いや、正確には客席全体を見たのだろう。それでも彼には、自分を見たのだとしか思えなかった。


 その瞬間、胸の奥に残っていた断片がほとんど全部繋がった。


 月夜の窓辺。白い花。

 必ず見つける、という誓い。


 何度生まれ変わっても変わらなかった、たった一人への感情。


 彼は思わず一歩、前へ出ていた。


 そこで事故が起きた。


 照明が揺れ、悲鳴が上がる。スタッフが動く。彼も反射的に走り出しかけた。だが、客席後方からでは間に合うはずがなかった。


 光が落ちる。


 世界が白く弾ける。


 彼女の姿が見えなくなった瞬間、彼の中で何かが音を立てて崩れた。


 また、間に合わなかった。


 ようやく見つけたのに。


 ようやく届くと思ったのに。


 その後の記憶は、ひどく曖昧だ。何をどうして家に帰ったのかもよく覚えていない。ただ、胸の奥の静かな絶望だけが鮮明だった。


 やっと見つけたと思ったのに、また失った。


 なら次は。もし次があるなら、今度こそ。


 そう思ったところまでは、覚えている。


    *


 次に目を覚ましたとき、彼はこの世界にいた。


 最初は、もちろん混乱した。現代の便利な生活から一転して、中世風の異世界じみた環境へ放り込まれたのだから当然だ。だが、それ以上に彼を混乱させたのは、幼い頃から折に触れて思い出される記憶だった。


 王女。約束。ひかり。ドーム。事故。


 断片だったものが、今度はかなり早い段階で繋がっていった。


 彼は公爵家に仕える家系の分家に生まれ、若くして護衛として鍛えられていた。地位は高くない。だが、武と忠誠を重んじる家で育ったことは彼に向いていた。余計なことを喋らず、観察し、必要なときだけ動く。そういう生き方は、何度転生しても彼の骨に近いところへ残るらしかった。


 そしてある日、幼い頃に読んだ物語の記憶が、唐突に重なった。


 ルミナリア・フォン・エルセリア。


 悪役令嬢。公爵令嬢。


 ひかりのSNSで見た本。


 もしここがその世界なら。


 もしルミナリアが、ひかりなのだとしたら。

 そこまで考えた瞬間、彼はひどく冷たくなった。


 原作でのルミナリアは、決して幸せとは言いがたい。ルートによっては社会的破滅、婚約破棄、断罪、追放。命を落とすほどではないにせよ、相当につらい結末を辿る。


 やっと見つけた相手が、その役だというのか。


 そんなのは、あまりに悪趣味だと思った。


 だが現実は、たいてい皮肉だ。


 彼はその時点でまだルミナリアと接点を持っていなかった。けれど公爵家の事情に少しずつ近づくにつれ、彼女が軽い事故のあと別邸で静養しているという情報を得た。


 ひかりだ、と確信したわけではない。でも、確信に近いものはあった。

 だから彼は、公爵家本邸で働く従者に頼み込み、手紙の伝達役を引き受けた。


 中庭のあの場面で、原作の流れを思い出したからだ。


 彼女が悪役令嬢として動き出そうとしている。


 それが分かった瞬間、身体が先に動いた。


 急ぎでも何でもない家からの手紙を「至急」と言って差し出したのは、今思い返してもかなり強引だったと思う。だが、あの場でエミリアと真正面からぶつかるのを放ってはおけなかった。


 茶会の時も同じだ。


 学園長室への呼び出しを作るため、先回りして職員へ話を通した。ルミナリアの体調を気にかけている、という方向なら不自然ではない。彼女の立場を考えれば十分ありえる。


 階段の時は、さすがに少し危なかった。


 原作を知っていたから、あの時間にあそこを通ればエミリアが転びかけることも分かっていた。けれど予想以上に彼女の足元が危なく、気づけばもう飛び出していた。目立たないよう一瞬で引いたが、完全に隠し通せた自信はない。


 そうやって、彼は小さなフラグを一つずつ潰していった。


 原作の流れを壊しすぎないように。


 でも、ルミナリアの破滅へ直結するものだけは通さないように。


 やっていることは自分でも分かっていた。過保護だし、干渉が過ぎる。物語の流れを知っているからこそできる、ずるいやり方でもある。


 それでも止められなかった。


 やっと見つけたのだ。


 また失うくらいなら、多少みっともなくても何でもいい。


    *


 では、なぜ名乗らないのか。


 その問いに対する答えを、彼自身はずっと上手く言葉にできずにいた。


 理由は一つではない。

 まず、怖かった。それが一番大きい。


 やっと見つけた。ようやく同じ世界にいる。しかも今回は、彼女のそばにいられる。護衛という立場なら、近くにいて、守って、危険を遠ざけることができる。


 それなのに名乗った瞬間、何かが大きく動く気がした。


 運命が、また二人を巻き込んで走り出す気がした。


 そしてこれまでの人生で、そうやって近づいた先にあったのは、たいてい別れだった。


 戦争。敵対。身分差。病。事故。


 ようやく触れたと思った瞬間に失う、その繰り返しだ。


 だから、彼は慎重になりすぎた。


 今はまだ、護衛でいればいい。名乗らなくても守れる。

 彼女が気づかなくても、近くにはいられる。


 恋人になれなくても、せめて生きていてくれるなら。


 そう思ってしまった。


 あまりにも臆病だと、自分でも分かっていた。

 でも、やっと見つけた相手に対して、人は案外簡単に臆病になる。


 それからもう一つ。


 彼はまだ、完全に確信しきれていなかった。


 ひかりの記憶はある。王女だった頃の記憶もある。今のルミナリアが、きっとその全部を内包しているのだろうと思う。


 けれど、彼女自身がどこまで思い出しているのかは分からない。


 もし何も覚えていなかったら。

 もし自分だけが過去に囚われているだけだったら。


 もし「見つけた」と思っているのが自分だけの独りよがりだったら。


 そう考えると、簡単には言えなかった。


 あなたを何度も探してきた、などと。

 どれだけの感情をこめても、相手が受け取る準備をしていなければ、ただ重いだけだ。


 だから彼は、名乗るより先に見守る方を選んだ。

 少なくとも、彼女がどういうふうにこの世界を歩いているのかを確かめたかった。


 その結果、分かったことがある。彼女はやはり、彼女だった。


 悪役令嬢の立場に転生してなお、目立つことを考えている。原作の破滅を恐れるより、「むしろ中央に立てる」と発想する。大人しく身を引くどころか、もっと分かりやすくここにいると手を振ろうとする。


 見た瞬間、頭が痛くなった。


 あまりにも彼女らしい。そして、あまりにも危なっかしい。


「……頼むから」


 ある夜、護衛詰所の窓辺に立ちながら、彼は小さく呟いたことがある。


「今度は、自分から断罪台に向かおうとしないでくれ」


 もちろん、誰にも届かない独り言だった。

 それでも言わずにいられなかった。


 彼女が悪役令嬢として目立とうとすればするほど、彼の心は落ち着かなかった。止めたい。静かにしていてほしい。もっと目立たないでほしい。せっかく見つけたのに、どうしてまた危ない場所へ自分から行こうとするのか。


 だが同時に、理由も分かっていた。


 そうやって手を伸ばし続ける人だからこそ、彼は何度生まれ変わっても彼女を好きになったのだ。


 待つだけではなく、自分から探しに行く。

 見つからないなら、もっと見つかりやすい場所へ行こうとする。


 ひかりがアイドルになったことも、ルミナリアが悪役令嬢ムーブを計画していることも、根っこは同じだ。


 ここにいるよ、と。

 

 大きく手を振っている。


 彼女はずっと、そういう人だった。


 だから彼は、止めることもできない。


 止めたいのに、止めきれない。

 結局また、裏でフラグを折って回るしかなくなる。


 なんとも情けない立場だと思う。


 けれどそれでも、彼女が笑って生きていてくれるなら、今はまだそれでいいとも思ってしまう。


    *


 ゼインとして正式に彼女の前へ立った日のことを、彼はよく覚えている。


 夕方の学園前、傾き始めた陽の色。公爵家の馬車。扉の前に立つルミナリア。蜂蜜を溶かしたような明るい髪と、意志の強さを宿した青の瞳。


 彼女は、ひどく綺麗だった。


 王女の頃とも、ひかりの頃とも違う顔立ちなのに、それでも一目で分かる何かがある。不思議なくらい、変わらない。


「ゼインと申します」


 名乗りながら、内心は穏やかではなかった。


 名前まで同じにしたのは、偶然なのか運命の悪戯なのか、自分にも分からない。彼女がどう受け取るかも分からなかった。もっと強く反応されるかもしれないと、ほんの少し覚悟していた。


 だがルミナリアは、一瞬ひどく揺れたあと、きちんと令嬢の顔を保って「よろしく」と返した。


 その落ち着きに、彼の方がわずかに息を呑んだ。


 気づいていないのか。それとも、気づいていて飲み込んだのか。

 そこが読めないぶん、ますます名乗るタイミングを失った。


 今だ、と言えない。


 そうしているうちに、さらに彼女の行動が彼を混乱させる。


 寒い日には外套を受け取るときに少しだけ不満そうな顔をする。こちらを観察するような目を隠そうとしない。時々、何かを確かめるみたいにじっと見つめてくる。問い詰めたいのを我慢しているのが分かる。


 ああ、もう気づかれかけているのだろう。

 そう思うと、胸の奥が落ち着かなかった。


 嬉しいのか、怖いのか、自分でもよく分からない。


 気づいてほしい。

 でも、気づかれたら運命が動き出してしまいそうで怖い。


 その矛盾に、彼はずっと引き裂かれていた。


    *


 ある日の夜、公爵家別邸の回廊を巡回していたとき、彼は偶然、ルミナリアの部屋から漏れる声を聞いた。


「……本当に、何なのかしら」


 独り言だった。たぶん、彼のことだろう。


 回廊の灯りは落とされ、窓の外では風が木々を揺らしていた。彼は足を止め、扉の前で立ち尽くしかけて、すぐに自分を戒めた。


 入るわけにはいかない。答えるわけにもいかない。

 今ここで何かを返したら、全部が崩れてしまう気がした。


 だから彼は何も言わず、再び歩き出した。


 情けない、と思う。

 護衛としては正しいのかもしれないが、男としてはひどく臆病だ。


 それでも彼は、自分に言い聞かせていた。


 今はまだ、これでいい。少なくとも彼女は生きている。


 笑っている。


 怒っているし、悩んでいるし、相変わらず危なっかしい方向に前向きだ。それでも、生きている。


 だったら今は、それだけでいい。そう思おうとしていた。


 けれど、その夜、回廊の角を曲がったところで立ち止まり、彼は深く息を吐いた。


 無理だ、と、もう分かっていた。

 これ以上近くにいて、何も伝えずにいられるほど、自分は器用ではない。


 彼女がまた、自分から危ない方向へ目立とうとしたら。

 破滅を恐れず前へ出ようとしたら。


 そのときはきっと、止めなければならない。

 そして止めるなら、たぶんいつか言わなければならない。


 どうしてそこまで自分が必死になるのかを。

 何度見つけて、何度失って、それでも今ここにいるのかを。


 その日が近づいていることを、彼はもう、認めないわけにはいかなかった。


 月のない夜だった。


 回廊の窓に映る自分の顔は暗く、感情も読み取りにくい。そんな中で、彼の胸の奥だけが、静かに疼いていた。


 見つけたのに、名乗れない。守りたいのに、近づくのが怖い。

 けれど、このまま黙っていることも、もう限界に近い。


 その苦しさだけは、何度生まれ変わっても変わらなかった。


 最初の人生で、月夜の窓辺に立ったときと同じだ。


 言えば何かが変わる。でも言わなければ、もっと遠ざかる。


 彼はゆっくり目を閉じた。


 今度こそ、と思う。今度こそ、間に合いたい。


 だからこそ。


 次に彼女が大きく手を伸ばしたとき、自分ももう逃げてはいられないのだろう。



ご覧いただきありがとうございます。

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