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2.神の呪い?罰当たり? いえ、これは「インフラ整備」です

翌朝。

私が目覚めたのは、豪華な天蓋付きのベッドではなかった。ギシギシと悲鳴を上げる硬い木の板の床の上だった。天井には穴が空いているため、夜明けの空がよく見える。床板は腐りかけていて、歩くたびにカビの匂いが舞った。家具は壊れた机が一つと毛羽立った毛布が1枚。今が、春で良かったと心底思う。


「まぁ、前世のブラック自治体時代の泊まり込み研修よりはましか。あそこはエアコンが壊れた真夏のプレハブだったもの。」


鏡(代わりの水盆)を見て、ボサボサの下記をテキパキとまとめ、昨日の引きちぎったドレスに村長から借りたボロボロの皮のブーツを履いて、重い腰を上げた。今日もやることはたくさんある。


井戸の場所へ向かえば、早朝だというのにゼノはすでに私を待っていたようで、私が近づくと何かを投げてよこした。


「朝摘みだから新鮮でうまいぞ。」


その言葉に手の中を見れば、それはリンゴだった。それを見た瞬間に機能から何も口にしていない体が急に空腹を訴えてくる。


「しばらくは、何かしら山で取れた食べものを恵んでやるよ。」

「……どうして…?私にそこまでしてくれるのよ。」


私の質問にゼノは意地悪そうに笑う。


「王都の温室育ちのお嬢様にはこんな辺境の村で食料を確保するだけでも大変だろうからな。俺がしかたなく恵んでやるだけだよ。」


その言い方には少し腹がたったが、背に腹は変えられないので小さく礼を言って美味しくいただいた。そして、全てを食べ終えた私を待っていたかのようにゼノは昨日書いた地面の図面の前に立つ。


「よし。腹ごしらえが済んだら早速これを教えてくれ。」


その瞳は、新しいおもちゃを目の前にした子どものように輝いていて、私は思わず笑ってしまった。


「わかったわ。ただし、簡単じゃないからね。」

「望むところだ。」


そして、私たちの戦いが始まった。

ゼノの指先から淡い青色の魔力が放たれ、錆びた鉄屑が生き物のように形を変えていく。内壁を鏡面のように磨き上げたら、私が指示する位置に、ミリ単位の精度で弁を取り付けていく。この作業が難しかった。


「そこ、あと0.5ミリ削って。気密性が命よ。」

「注文が細かいんだよ、この元令嬢……!」


口では毒づきながらも、ゼノの制御は完璧だった。

前世の役所で培った「現場監督」の視点。そして、この世界で疎まれていた彼の「緻密な魔力」。二つの異分子が、泥まみれの広場で一つに組み合わさっていく。


数時間後。完成まで一週間を予定していたそれが脅威的なスピードで出来上がった。古びた井戸の横に、無骨だが美しい、銀色に輝く【魔法式手押しポンプ】が完成した。


「そういえば、村人を3人集めてって昨日お願いしたはずなんだけど。」


完成した手押しポンプを前にゼノに聞けば彼は少し気まずそうに視線をそらした。


「声はかけたが、今日誰も来ていなかったことを思えば、それが答えなんだろう。」


その言葉は静かに私の心に響いた。

確かに王都から来た世間知らずの令嬢の言う事を聞こうって言う村人のほうが珍しいか。……村人との関わり方も考えないといけないわね。

しんみりした空気を感じたのかゼノが手押しポンプに手をかけた。


「おい、いつまで待たせるんだよ?」

「……よし。ゼノ、動かして。」


ゼノが半信半疑のまま、レバーを上下させる。

スカ、スカ、と虚しい空気が抜ける音。遠巻きに見ていた村人たちが「やっぱりダメか」と諦めの溜息を吐きかけた、その時――。

 ――ゴボッ、という重い振動が、地面から伝わってきた。


「……おい、これ……!」

「続けて!」


勢いよくレバーを押し下げた瞬間、蛇口からドッ!と、透明な水が噴き出した。濁りのない、冷たくて清らかな地下水。それが日光に反射して、宝石のようにキラキラと輝きながら、乾いた大地に降り注ぐ。


「出た……。本当に出やがった……!」


ゼノの声に私たちを遠巻きに見ていた村人たちの表情が一気に明るくなる。

村の中に、地鳴りのような歓声が沸き起こった。子供たちが駆け寄り、溢れる水に手を入れてはしゃいでいる。村長が、震える手でその水を掬い、一口飲んで涙を流した。

私はふと、隣に立つゼノを見た。彼は自分の大きな掌を見つめ、呆然としていた。


「……俺の魔法が、壊すんじゃなくて……人を笑わせるために使われたのか。」


その横顔には、初めて皮肉ではない、少年のような戸惑いと感動が浮かんでいた。

魔法は武器ではない。人々の生活を支えるための、最高の道具――私の確信を、彼はその腕で証明してくれたのだ。やがて、狂乱のような喜びが落ち着くと、村長が私の前で深々と頭を下げた。


「アイリス様……。この御恩、一生忘れません。あなたは……ただの令嬢ではないようだ」

「村長さん……。私はこの村を世界一幸福度の高い村にするために来ました。これだけじゃない。ここから村は一気に変わります……いえ、変えてみせます。」


村長は私の言葉にただ笑顔で頷くだけだった。そのまま、村長の肩越しに後ろに視線を向ける、村長の言葉に感謝はあった。けれど、周囲の村人たちの視線は、まだどこか冷ややかで、怯えていた。


 『どうせ一時的な気まぐれだ』

 『貴族が本当に俺たちのことを考えるはずがない』


そんな疑念が、彼らの瞳の奥に張り付いているのが分かった。

いいわ。信頼なんて、一朝一夕で築けるものじゃない。公務員の基本は『実績の積み重ね』よ。水が出た。次は、この不潔な環境を変えていかないと。


「ゼノ、休んでいる暇はないわよ。」

「……あ?次はなんだよ。また変な設計図か?」


 私は、まだ悪臭の漂う村の路地を見据え、不敵に微笑んだ。


「水の次は、出口よ。――この村から『呪い(病)』を根絶する。世界一クリーンな『魔法式・下水道革命』の始まりよ!」


私の言葉にゼノはただ首をかしげるだけだった。


昼過ぎ。

村の中心に向かうとポンプの周りに人だかりができていた。昨日までの絶望の沈黙が、僅かな水の音で上書きされかすかな幸せを乗せている様に見える。


「お嬢様よ、朝も言おうと思ったんだが、その格好は王都の流行りか?それとも、いよいよ発狂したか?」

「これは作業着よ。それよりも、これから村の外周を回るわ。測量紐と記録用の板は用意してくれた?この村の勾配をすべて把握するわよ。」


ゼノは朝に私に言われたものをしっかりと用意していたようで、鉛筆代わりに炭も持っていた。この村では紙もインクも高級品か。本当なら測量機とか欲しいけど……まぁ、あるものでなんとかするしかないわよね。


それから二人で村の路地を隈無く歩く。私は村の景色や風景ではなく足元の汚れだけを追っていた。数メートル歩いては立ち止まり測量して記録を取る。それを何回も繰り返している私たちを村人の冷たい視線で見ているがそんなことは気にしていられない。日が暮れるまでの残り数時間ですべての測量を終えなければ。これからの作業を考えながら足を動かしていると泥水に足を取られてしまった。なんとか踏ん張って片足を抜けばもう一本が泥に埋まる。そんなことを繰り返しているうちに、どんどん体が泥まみれになっていった。


「ほら見ろ、村人たちに笑われてるぜ?」


ゼノのからかうような言葉に周囲を見れば、遠巻きに村人たちがヒソヒソと笑っている。「令嬢が泥遊びをしている。」そんな言葉が聞こえた。


「お高く止まった貴族が泥を凝視して何になる?掃除ならガキどもの仕事だ。」


私はなんとか泥から抜け出して、ドレスに付いた泥を払った。笑いたければ笑えばいい。そんなことよりもやっとこの村の呪いと悪臭の原因がわかった。


「……ゼノ、あなたは家々から出た排泄物や汚水はどこに流れて消えるか、考えたことがある?」

「あ?地面が吸うか、雨が降るのを待つだけだろ?」

「それが、無能な管理の極みよ!水は消えないし蒸発までにはかなりの時間がかかる。水は留まって、腐って、私たちを蝕む。この村の標高差、村の中心から北の崖まで1.5メートル。十分だわ。」


私の言葉が理解できなかったゼノは何かを考えるようにしながらも、首をかしげただけだった。私はドロだらけの手で持ってきた板に村の簡略図を書き込む。これは前世のでいえば都市計画図の原型だ。


「この村は全体がすり鉢状になっていて、村の中央に水が集まりやすいの。そして、家畜の排泄物と生活用水が区別なく垂れ流されて、直した井戸の近くに溜まっている。ハエや蚊が異常に発生しているのも小さな子どもたちが体調を崩してなくなっていくのは感染症のせいよ。この村を蝕んでいるのは、呪いじゃない。自分たちが排出した『ゴミ』よ。」


ゼノは私の言葉に驚いたようにまぶたを見開いた。


「ゼノ……そのゴミを魔法の力で外へ押し出すわよ。」

「は?」

「土を掘る準備をして。次は魔法式・全天候型排泄路を作るわ!」

「はぁぁ?!」


この村に到着して驚いたのは井戸のことだけじゃない。圧倒的な栄養失調も目についたが、それよりも寝込んでいる子どもたちの多さだった。ゼノに聞けば、子どもたちはすぐに下痢と高熱を出して倒れてしまう。更に、遠くの街に行って苦労して教会からもらった聖水でもその病は一瞬良くなるだけで、また繰り返すとのことだった。村人たちは「山の神の呪い」だと恐れ祈るだけ。でも、前世の知識を持つ私から見れば、これは明らかに大腸菌だ。


「病気は協会の聖水で治すもんだ。土を掘り返して何になる?」


私の話を理解しきれていないゼノは懐疑的な反応を示すが、私はそれを無視して板に書いた都市計画図に新たに泥で線を書き足していく。


「この村全体をカバーする下水道設備を配置するわよ。」

「下水道?」

「これが完成すれば、村の衛生環境が抜群に良くなるし、病気で倒れる子どもたちも劇的に減少するわ。」

「……嘘だろ?…そんなこと本当にできるのか?」

「もちろんできるわよ。…あなたが協力してくれればね。」


私は板をおいて地面に図面を枝で図面を引いた。そして、ゼノに重力とろ過の仕組みを教えていく。


「下水道処理における重力ろ過・沈殿は重力(自然下流や沈降)を利用して汚水中の固形物や汚泥を効率的に分離する、エネルギー消費が少ない物理的処理手法なの。」

「なんだかよく、わからねぇけど…すげぇ設備ってことはわかった。」

「別にすごくはないわよ。自然下流は管路の勾配を利用して汚水を下水処理場へ流して、重力でろ材を通して懸濁部質を除去するのよ。」


前世のような下水処理システムは作れないけど、この世界でできる下水処理システムとしては最高基準のはず。


「いいゼノ。魔法の火で水を蒸発させるよりも勾配を作るほうが、この村の人間を100倍救えるのよ。そして、ろ過装置を水が通ることで不純物が取り除かれて生活用水や汚水が川に流れても環境を破壊することを最小限に留めることができる。」

「あー!堅苦しい説明はもうたくさんだ!……俺は何をすればいい?」


待ってました。ゼノが頭を掻きむしりながら叫ぶ姿に私はニヤリと口角をあげた。


「ゼノ。あなた徹夜する覚悟はあるかしら?」


こうして私たちの眠れない夜は始まったのだった。




「お嬢様!もうやめてくれ!これ以上村の地面を掘り返すなんて、山の神の怒りを買うだけだ!」


村長に調査結果と作業の許可を取りに行き、村の中央の広場に来れば、鍬や棒を手にした村人たちに囲まれた。どうやら、昨日のゼノと私の話を聞いていたらしい。先頭に立つのは、村で一番の古株の老人だった。昨日の井戸の喜びはどこへやら、彼れらの瞳にあるのは未知の工事に対する根源的な恐怖だった。


「せっかく水が出たんだ。これ以上、余計なことをして罰が当たるのはごめんだ。」

「そうだ!先祖代々、俺達はこうやって生きてきたんだ。よそ者に、たとえ領主様の娘だとしても、村の形を変えられてたまるか!」


怒号が飛び交い、殺伐とした空気が流れる。隣に立つゼノが、忌々しそうに魔導兵装の籠手に手をかけた。


「おい、お嬢様。こいつら話が通じねえ。力ずくで黙らせるか?」


物騒ないいように私は首を横に振る。


「……ダメよ、ゼノ。公務員の強制発動は最終手段よ。まずは説明責任を果たさないと。」


私は一歩前に出だ。それに合わせて村人たちは一歩下がる。ドロだらけのドレス姿だったが、まっすぐに背筋を伸ばした。


「皆さん、聞いてください!神の怒りというのなら、なぜ、子どもたちが熱を出し、お腹を下して亡くなっていくのでしょうか?なぜ、いつも悪臭がしてハエが飛び回るのでしょうか?神は未来ある子どもの命を奪い、劣悪な環境での生活を強いるほど残酷なのですか?」


静まり返った空間に私の声が響いた。


「いいえ、違います。犯人は神ではない。この足元に留まった、腐った泥水です!」


大きく右足を踏み込めばバシャッと泥水が跳ねた。そうだ、みんなに見てほしい。これがすべての根源だ!


「皆さんは習慣という名の放置で病を育ててしまったんです!私はそれを終わらせに来ました。」


深く息を吸い込んでグッとお腹に力を入れた。…少しでも村人に届くように願いを込める。


「皆さんの仕事は、神に祈ることじゃない!明日を生きるために、一歩を踏み出すことです!」


誰も何も言わずに痛いほどの沈黙が広がった。……ダメだったの?私の言葉は誰にも届かなかったのか…。村人の突き刺すような視線を一身に浴びていたその時、群衆の後ろから二人の若者が声を上げた。


「お嬢様!俺に、俺にその下水道ってやつ、手伝わせてくれ!」


進み出てきたのは、痩せこけて入るが眼光の鋭い少年と体格の良い青年だった。


「俺はカイル。俺の妹は、去年死んだ。神様に祈っても、聖水を飲ませてもダメだった!あんたが言うことが本当なら……泥を掘って妹みたいな子供がいなくなるなら、俺はあんたを信じる!」


カイルの悲壮な叫びに青年も力強く頷く。


「俺はナギ。俺もだ。あんたがあのへんてこなやつから水を出した時、初めてこの村に魔法じゃない希望が見えたんだ。俺は魔法を使えない。それでもアレみたいに誰かの希望になれるなら、あんたを手伝わせてくれ!」


二人の思いに胸がジンと熱くなる。この群衆の中のたった二人。でも、ちゃんとこの村の人に私の声は届いている。私は二人の瞳を見てわずかに微笑んだ。


「……カイル、ナギ。その勇気、後悔させないわ。」


二人が頷くのを見て私は群衆を見渡す。それぞれ複雑な表情をしているのがはっきりと分かった。


「皆さんの気持ちもわかりますが……私は工事を強制執行します。この村を世界一幸福にするために私はここに来たのですから。」


視線をゼノに向ければ、彼は不満そうに息を吐いた。


「ゼノ、100メートルにつき1メートルの勾配を忘れないで。急すぎれば水だけが走り、ゆるすぎれば泥が溜まる。この村の運命は、あなたの指先の精密な角度にかかっているの。」

「チッ…!熱いのは苦手だがやるしかねぇか。野郎ども!邪魔だ、どいてろッ!」


ゼノが大きく両手を広げ、地面に膝をつく。次の瞬間、大地が唸りを上げた。


「魔導土木術_溝穿!!」


青白い閃光が走り、村のメイン通りに「溝」という名の芸術が刻まれていく。ゼノの魔力で焼成された壁面はレンガ以上にすべらかで、汚れを一切寄せ付けない。

汚水が向かう先は、村外れに作られた三段階の沈殿池だ。第一の池(腐敗槽)で 重い固形物を沈める。上澄の水だけを次の池に送る。第二の池(沈殿槽)では濁った水をゆっくり流し、細かい泥を沈める。第三の池(濾過槽)でカイルたちが敷き詰めた多孔質石と炭と砂できた魔法ろ過フィルターを抜ければ、悪臭も和らぐはずだ。そして、ろ過フィルターを抜けた水は少し離れた川の下流へと流す様にゼノが溝をつなげた。


反対していた村人たちは、その圧倒的な光景に言葉を失い立ち尽くしていた。泥だらけになりながらカイルたちに指示をだす。実績こそが、最大の説得力だ。あとはこれがしっかりと機能するところを村人に見てもらえば納得してくれるはず。


「これで、大方の工事は終了です。あとは溝の上に木の板を置いて封じるので子どもたちが落ちることも通行の邪魔になることがないでしょう。」


私の言葉に村人たちは顔を見合わせるだけで何も言葉を発しなかった。まぁ、その反応は想定内だけどさ。少しの寂しさを感じながら、カイルとナギにあらかじめ用意しておいた板を渡し、ゼノが掘った溝の上に等間隔で置くように指示をだす。ゼノは穴のところで最後の仕上げと私のあるお願いを作り上げているようだ。


「カイル。ナギ。あなたたちにこの濾過槽の管理をお願いしたいの。」

「……管理?」

「俺達に?」


あらかたの作業が落ち着いたところでカイルとナギを呼び止めれば泥だらけになった二人が不思議そうに首をかしげた。


「まず一つは点検口。今板を敷いてもらった村の溝に一定間隔で四角のマスがあったでしょ?あれは下水水道が詰まらない様にするものなの。まずはそれの定期的な清掃をお願いしたい。それから、あなたたちが池に入れたフィルターの洗浄と交換ね。」


私は二人を伴って3連の池の最後の一つにやってきた。


「カイル、この炭の層が黒ずんで水が溢れそうになったら、中の砂を洗って、炭を焼き直して入れ変えるのよ。ゼノが何枚か作ったから掃除している間は代わりのものを使って。管理はナギに任せるわ。」


複雑な表情で私の会話を聞いていた二人にゆっくりと視線を向ける。始まりは私たちでも今後は村人たちが管理できるようにしていかなくては、この下水道は長く続かない。二人にはその最初の一歩を踏み出してほしい。


「あなた達にお願いしたいのはこの村の基礎ともなる重大な部分よ。……できるかしら?」


そう問いかければ、カイルとナギはグッと肩に力を入れて大きく返事をした。


「やります!俺、点検口の掃除もフィルターの交換もちゃんとやります!」

「俺も!毎日この池を見に来ます!点検口の掃除も頑張ります!」


二人の勢いと熱量に感動する。この村は終わってなんかない。自分たちで歩き出す力はちゃんとある。


「じゃあ、任せるわよ。……もし、他の人達が興味を持って、理解をして、受け入れてくれたら当番制にしたり管理基準を定めたり色々できることも増えるから、そのときは教えてちょうだい。一緒にこの下水道を長く、きれいに使えるようにしていきましょう。」

「「はいっ!」」


それから、数時間後。

カイルとナギを家に帰し、体についた泥を払っていれば、全ての作業を終えたゼノが私のところに戻ってきた。昨夜の夜ふかしもあってか、彼の顔にははっきりと疲労の色が浮かんでいる。そして、お互いに泥だらけになりながらどちらともなく笑い合う。


「……あんた、何者だ? 貴族が知るはずのない知識を持ってやがる。」

「私はただ、この場所を『世界で一番幸せな村』にしたいだけよ。あなたのその腕、腐らせるには惜しいわ。私の右腕として、一緒にこの村を作らない?」


私の言葉にゼノは不敵に笑った。


「面白い。あんたのぶっ飛んだ理想、俺の魔法で全部形にしてやるよ、お嬢様。」

「ふふ、よろしくね。」


私が差し出した手に大きくて無骨な手が重ねられ、私たちはしっかりと握手を交わした。



下水道設備や沈殿、ろ過層などはすべて作者の妄想と想像です。実在のものとは関係ありません。

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