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それからも競技は順調に進んでいき……。


桜子ちゃんの居る白チームは、二回戦目で紫チームに敗退。うちのクラスから鷹司が出ている黄色チームは決勝で青チームと戦い、僅差で負けてしまった。

でも、出だしから二番なら上々の結果だ。素晴らしい!


「残念でしたわ、響様」


「お互い全力を出した結果ですから。仕方ありませんわね」


戻ってきた鷹司は自分の椅子に座ると、優雅に水を飲んだ。

取り巻きの子達が両サイドから扇子で風を送っている。ここだけ異国の空気が流れてるぞ。


さて、次の競技は……借り物競争か。そういえば花ちゃん先輩が出るって言ってたな。

参加する人達の列を見ると……。


「(あ、雫ちゃんだ!)」


赤チームの場所に、雫ちゃんが並んでいた。

そういえばどの競技に参加するかちゃんと聞いて無かったな……借り物競争に出場するのか。


「(そうと分かれば、全力で応援するしか無いよな!)」


俺はワクワクした気持ちになった。

競技が始まると、次々に人や物が借りられていく。

花ちゃん先輩の出番がやってきた。

紙を広げた花ちゃん先輩は、”眼鏡”の借り物だったらしい。笑いながら青チームに居る部長の眼鏡を奪い去っていった。

クラスでも人気者なのだろう。その眼鏡を掛けてチームに投げキッスを送るというファンサービスっぷりにドッと笑いが起こって、そのまま一番でゴールしていった。自分で得意と言うだけあって、滅茶苦茶足が速かった。


そして次は雫ちゃんの出番!

スタートすると、すぐに紙を拾いに行く。広げた紙を見てバッとこっちを振り向いた雫ちゃん、え、一体なんだ!?


『赤チームの借り物は……おっと、これは!?』


アナウンスが喋り切る前に、俺の方へ走ってくる雫ちゃん。


『好きな人! これは王道だーーー!!』


雫ちゃんが目の前に来た瞬間、放送で流れた言葉に俺は目を丸くした。

好きな人、って俺の事かよ!?


「伊織ちゃん、一緒に来て!」


手を繋がれ、全力で走る。

途中、足がもつれそうになったけど、どうにか立て直して必死にゴールする。


『赤チーム、一番でゴールだ! 選ばれたのはお友達の女の子です!!』


拍手が起こる。良かった、何とか一番でゴール出来た。


「伊織ちゃん、ありがと……」


「いえ、お力になれて良かったです」


少し息を切らした雫ちゃんに答える。

”好きな人”の紙を見て、真っ先に俺を選んでくれるなんて、嬉しすぎる!

俺は笑いながら手を振って、自席に戻ろうと振り返った。すると青チームからとんでもなく強い視線を感じる。


「(ウォ、何だ!?)」


ゾワッと悪寒がして視線の先を見れば、天逢坂が険しい顔して俺を見ていた。お前か、この悪寒の正体は!!

天逢坂の周りの生徒も、あまりの形相にビビッて近寄れなくなってる。

大方雫ちゃんの好きな人に自分が選ばれなかったのが悔しいんだろう。へへ、何だかちょっと楽しくなってきたな。

俺は敢えて挑発するように微笑み、天逢坂へお辞儀をした。途端、悪鬼のような顔になる天逢坂。

ははーー!ざまあみろ!初めてアイツに勝てた気がするぞ!!はははは!

俺はルンルンと自分の席に戻った。


借り物競争の総合順位は、花ちゃん先輩が活躍した白チームが一歩リードしていた。

それからも綱引き、仮装リレーが順々に行われていき大いに盛り上がった。

綱引きでは坊城先輩が緑チームとして出場。必死に綱引きを頑張っていた。マスコットキャラクターみたいに可愛らしい見た目だからか、うちのクラスの女子達が「あの方、何だか可愛らしいですわね」なんてヒソヒソ話していた。そうだろうそうだろう。坊城先輩は結構可愛い顔してんだぞ。


そして仮装リレー。花ちゃん先輩は二つ目の競技だというのに、元気いっぱい仮装していた。眠れる森の美女として登場した先輩は、全校生徒の笑いを掻っ攫っていく。

説明の通り、順位を競うのでは無く盛り上がりを競う種目なので、花ちゃん先輩がトラックのど真ん中でレーンを妨げるように寝転んで眠りはじめた時は、全校生徒大盛り上がりだった。間違いなく今回のMVPだろう。

他にもスーツやメイド服(しっかりヴィクトリアン調だった)そして国民的アニメキャラのコスプレ等様々な衣装が登場して、見ていてとても楽しかった。


そんな時、事件が起こる。


「どうしました!?」


「……結城さん!?」


ドサリと大きな音と共に、結城さんが真っ青な顔で倒れたのだ。

救護班が来て、結城さんがテントへと運ばれる。原因は貧血だった。


「ごめんなさ、い……競技が……」


「そんなの気にしないで下さい。今は体の事を考えて……」


血の気が引いた顔をしている結城さん。とても気の毒だ。

6月とはいえ、少し暑かったからな……。

無理しないで早退するよう勧めたが、とりあえず様子を見る事になった。


「(うーん、どうしよう)」


気にするな、とは言ったものの。実際二人三脚に出るには相手が居なきゃ始まらない。

今からもう一人探すにしても、クラスで俺と会話したことのある人物は限られているぞ。

それに背丈だって。伊織は165cmくらいだから、最低でも身長が160cm無いと厳しい。

俺は悩みながらチームの方へ戻っていると、ある人物と目が合った。


「(あ)」


……そうだ。俺と話をした事があって、背丈が同じくらい。ピッタリの人物が一人いるじゃないか。

目を逸らさずに、その人物の目の前に立った。


「鷹司さん」


声を掛けられた鷹司は、驚いたような表情で俺を見上げている。


「実は、私と一緒に二人三脚に出場する予定だった結城さんが体調不良で倒れてしまいまして……。代打として、私と二人三脚に出場してもらえませんか?」


正直目立つとは思うけど、もうこの人以外思い浮かばなかった。

取り巻き達がどよめきながらヒソヒソと会話をする。クッ、居心地悪いがここは我慢するしかない!


「……結城さんが倒れたのは存じています。ですが、それで何故私に?」


「色々考えて、鷹司さんしか居ないと思ったからです」


俺は真剣な面持ちで目を見つめた。

背丈も勿論大事だけど、外部生ってだけで敬遠されてる俺に、他と差異無く接してくれるのはきっと鷹司くらいだと思ったから。

……まあ、鷹司も外部生を嫌ってる事に変わりはないんだけど。


「お願いします!」


俺は深々と頭を下げる。

鷹司は黙っていた。もしかして、断られるかな……?


「…………よろしくてよ」


「響様!?」


「その代わり、私と出るからには全力で頑張りなさい」


「は、はい。有難うございます!」


お礼を言うと、ホッと胸を撫で下す。

もしかしたら断られるかもって思ってたから、良い返事が聞けて安心した。


「午後のプログラム、二人三脚は二番目ですわね。ランチを食べ終えたら私の元に来なさい。教室でお待ちしておりますわ」


そう言い残すと、取り巻き達を連れて行ってしまった。

もしかしなくても、練習してくれるつもりなのかな?


「伊織ちゃーん! お昼食べよー!」


鷹司を見送っていると、遠くから雫ちゃんが手を振って歩いてきた。

色々あってバタバタしてたけど、もうそんな時間か……。


「今行きます!」


俺達は昼食を取るため、中庭へ向かった。

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