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と、いう訳でやってきましたよ!おしゃんな服屋に。
きょろきょろと辺りを見回しながら、店内を物色する。
うわあ、可愛い服がいっぱいで、何だか俺場違いな気がしてきた。
「おい、時間はどうする?」
「そうですね……15分くらいでいかがでしょう?」
「構わん」
天逢坂はやる気満々なようで、さっさと行ってしまった。
すげえ。店員から客まで、すれ違う女の子達ほぼ全員見惚れちゃってるよ。
いやいや、奴に構っている暇など無い。俺も早速始めるとしよう。
店内をぐるりと歩きながら、目を付けていた服やアクセサリーをポイポイ選んでいく。
その間雫ちゃんはと言うと、俺と天逢坂を心許無さげに見つめていた。ごめん、雫ちゃん。でも俺アイツに負ける訳にはいかないんだ!
そんなこんなで、お互い目当ての服を選び終えた。正味15分も掛からなかったな。
選んだ服を雫ちゃんに手渡す。ファッションショー宜しく、どちらの服も雫ちゃんに実際着てもらう事になった。
試着室に入っていった雫ちゃん。まずは天逢坂の番だ。
「自信の程は?」
「愚問だな。俺が負けるわけ無いだろう」
試着室の前で横に並んだ俺達は、腕を組みながらバチバチと横目で睨み合う。
余裕かましてられるのは今のうちだぞ。
暫くして、ガチャっと試着室の扉が開くと、中から雫ちゃんが出てきた。
「ど、どうかな……?」
俺は思わず黙ってしまった。
……めっちゃ可愛い……!!
「伊織ちゃん? 何か変だった……?」
「……っ! いえ、全然! その逆です!! とっても……よくお似合いです……」
悔しいかな。天逢坂が選んだ服は、雫ちゃんによく似合っていた。
落ち着いたくすみピンクのサマーニットに、黒のマーメイドスカート。小物に大きめな眼鏡を掛けて、足元には黒のショートブーツ。
ニットは袖口と首元がフリルになっていたが、決して可愛すぎず、女の子らしさを強調していた。いつもの彼女より、数段大人っぽく見える。
「どうだ? 雫は柄物の服が多いからな。たまにはこういったシックな服装も良いだろう」
「うん。普段あんまり着ないけど……凄く大人っぽく見えて、私じゃないみたいで新鮮!」
フフン、とドヤ顔する天逢坂。既に勝った気でいるらしい。雫ちゃんもかなり高評価みたいで、ニコニコと笑顔だ。
くっそーーー!悔しい……でも、俺だって負けてないぞ!!
「それじゃあ、今度は伊織ちゃんの服に着替えてくるね」
そう言って試着室に戻る雫ちゃん。
「一体どんな服を選んだのか、楽しみだなあ西原?」
ニヤリと口の端を上げる。確かにセンス良くてちょっとばかり驚いたけど、俺は絶対に負けない自信がある。
「着替えたから、出ても大丈夫?」
「ええ、どうぞ」
着替えを終えた雫ちゃんが、おずおずと出てきた。
……うっひょお!!やっぱ可愛い!!
「この服、私凄く好き! 伊織ちゃんどうしてわかったの?」
俺が選んだのは、淡いライトグリーンのシャツワンピース。膝丈くらいの長さで、サイドにはレースがあしらわれている。
靴はブラウンのローファーで、アクセサリーはシンプルにネックレスのみだ。
「ふふ。何となく、ですよ。雫さんには淡い色合いが似合いそうだったので」
ま、何となくでは無いんだけど。
実は……ゲームの中で、雫ちゃんが私服を買いに行くイベントがあるのだ。好感度の高いキャラクターと、映画館デートをする前の日に。
さっきこの店の前を通った時、偶然にもその時雫ちゃんが選んでいた服を見つけていた俺は、その流れで天逢坂に勝負を仕掛けたという訳だ。
決してズルでは無い。こういう時の為の予備知識ですよ、予備知識。
「どうですか、天逢坂さん?」
「……まあ。悪く無いな」
嘘付くな。ガッツリ見惚れてた癖に。
「レースがとても女の子らしくて、でも甘すぎないのでとても可愛いと思います。これに帽子など合わせても良いかもしれませんね」
「この帽子はどうだ?」
ひょい、と近くの棚に並べられた帽子の中からベレー帽を取った天逢坂は、それを雫ちゃんの頭に乗せた。
「とっても可愛いですね!」
「そ、そうかな?」
「ええ! 流石天逢坂さん。良いセンスです」
あ。思わず天逢坂を褒めてしまった。
でも仕方ない。だって本当に雫ちゃんに似合ってるから!
俺と天逢坂は視線を合わせると、フッと笑い合った。
「西原」
「はい、天逢坂さん」
これはもう、認めざるを得ないな。
「良く分かってるじゃないか」
「天逢坂さんこそ」
俺達はガシッと力強い握手を交わす。雫ちゃんは「え?え?」と戸惑っていた。
「この勝負、勝ち負けは決められませんね」
「ああ、良い勝負だった。……雫、それ全部買うから早く着替えろ」
「えええ?! む、無理だよ、そんなにお金無いし!」
「俺が出す。気にするな」
「私も半分出させてください」
「伊織ちゃんまで~!」
雫ちゃんに滅茶苦茶止められたが、選んだ服を全て会計に回した。
自分の選んだ服を雫ちゃんにプレゼント出来るなんてな!嬉しすぎる!
「もう、2人とも強引だよ……」
「すみません。どうしても雫さんにこの服を着てほしくて……貰っていただけませんか?」
「拒否権は無い。今度はこれを着て来い」
ズズイッと紙袋を目の前に差し出すと、雫ちゃんは「今度絶対お礼させて貰うからね!」と言って受け取ってくれた。
……ふう。何だか一仕事終えた気分だ。
俺は満足した気持ちで微笑む。すると、天逢坂が急に向き直って俺に小さな袋を渡してきた。
「これは……?」
「今日は邪魔したからな。やる」
「えっ?」
あまりの衝撃に、ポカンと口を開けてしまった。天逢坂が俺に、お詫びの品だと……?!
「早く受け取れ。腕が疲れる」
「……受け取る前に、一つだけ。これに他意は無いですよね?」
「お前、俺に対して遠慮が無くなってきたな」
手を出したら最後。互いの思考に相違があるといけないし、後から色々イチャモン付けられたら困るので、質疑応答は大事だ。
だって、あの天逢坂が俺に申し訳無いと思うなんて、奇跡以外の何物でも無いじゃん!
「変な意味は無い。雫の服を選んでもらったからな、その礼も兼ねてる」
「そ……うですか」
何故俺が雫ちゃんの服を選んで、こいつに礼をされるのかは甚だ疑問だが、細かいところは気にしないでおこう。
袋を受け取って口を開くと、中にはシンプルなパールのバレッタが入っていた。
「それなら、お前の服装でも付けられるだろ」
「わあ~、可愛いバレッタ! 伊織ちゃんに凄く似合いそう!」
「当たり前だ。何たって俺が選んだからな」
「……有難うございます。大切に使わせていただきますね」
俺は丁寧に頭を下げた。お詫びの品とはいえ、俺の服装を考えて選んでくれたらしいし……物に罪は無いからな。それに、天逢坂のおかげで雫ちゃんの珍しい姿も見る事が出来た。ここは有難く受け取っておくとしよう。




