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部室の中には、俺と部長2人だけになった。

……よし。


振り返った俺は、部長に向かって流れるように頭を下げた。


「部長、中間テストでは無事、10位以内に入る事が出来ました。これも全て部長のお陰です、本当に有難うございました」


頭をもう一段深く下げる。部長は「え!?」と驚いたように声を上げた。


「……もしかして、それ言うためにわざわざ残ってたのか?」


そう、俺は別に待ち合わせなんぞしていない。部長にテスト勉強のお礼を言う為、部室に残っていたのだ。


「そんなにかしこまらなくて良いのに……発表された日も連絡くれただろ?」


「いいえ、それはそれ。これはこれです」


順位が貼りだされた後、俺はすぐに部長へ連絡を取った。『中間テストの結果、学年4位でした。ありがとうございました』と。

が、しかし。忙しい中付きっ切りで勉強を見て貰ったり、あまつさえ予習のプリントまで作らせたのだ。直接お礼も言わないなんて筋が通らない。

それに、きっと部長に見てもらわなければ秀才ポジとして入学した伊織の立つ瀬が無くなっていたと思う。だから、こんな程度では表しきれないくらい、俺は部長に感謝しているのだ。


「本当に、有難うございました。全て部長がいてくれたお陰です」


「俺はただ、ほんの少しアドバイスしただけだよ」


「それでもです。お恥ずかしい話ですが、一人ではきっとこんな順位取れてなかったと思うので」


どこから手を付けて良いかすら分からなかった俺を、きっちり最後まで面倒を見てくれたのだ。本当に頭が上がらない。

部長は「まあ、西原自身が頑張った結果だと思うけど……一応その気持ちは受け止めておくよ」と笑ってくれた。

やっぱこの人かっこいいな、俺が女だったら多分惚れてたわ……って、今はそんな場合じゃなくて!


「それでですね。これ、感謝の気持ちとして受け取ってもらえませんか?」


俺は鞄をゴソゴソと漁ると、中から箱を取り出した。

深い緑の落ち着いた色の包装紙に包まれている。


「ここの和菓子、とっても美味しくて……部長の口に合うと良いのですが」


母親や藤野さんに、お礼の菓子折りはどこがオススメかをリサーチした結果、駅の近くにある高級和菓子店の詰め合わせが美味しいと教えてくれた。

そして昨日の学校帰りに駅まで出歩き、詰めて貰ってきた。自宅用に同じものを買って食べたが、あまりの美味しさに目が点になったのできっと気に入ってもらえるだろう。


「あ、ここ……」


「本当に美味しいお店なんですよ! 母も凄く気に入っていて、よく立ち寄る和菓子屋さんなんです。良かったらどうぞ!」


俺はグイグイと部長の前に箱を差し出した。受け取って貰えなきゃ困る。


「……分かったよ、有難う。これは気持ちとして貰っておく」


部長はフッと笑って箱を受け取ってくれた。良かった、突き返されなくて。

これで一つミッションが終わった。


「それで、ですね。もう一つお話しておきたい事がありまして……」


「どうしたの?」


「実は……」


その瞬間、部室の扉が勢いよく開かれた。


「秋人~、ごめん、遅くなっちゃった」


扉から現れたその人物は……。



「沙雪先輩!?」


「およ? いおりんだ~!」


俺を見つけて目を輝かせた沙雪先輩は、こちらへ素早く走ってきて、そのまま俺をむぎゅっと抱きしめた。

う、うおおおまたかよ!! し、死ぬ、おっぱいで圧死させられる~!


「沙雪、落ち着けって。西原が苦しがってる」


「……あっ、またやっちゃった! ごめんねいおりん~!」


部長が止めてくれたので、またしても俺は死なずに済んだ。

沙雪先輩のスキンシップは激しいな……。


「って、いおりんは何でこんな所に居るの?」


「言ってなかったか? 西原は卓上旅行研究部に入った唯一の一年生だ」


「え、いおりんこの部活だったの?! 聞いて無いよ!」


すまん、と部長が沙雪先輩に謝った。……って、ちょっと待て。もしかして……。


「あ、あの……」


「どうしたの? いおりん」


「沙雪先輩は何故この部室に……?」


「ああ、待ち合わせしてたんだよ。俺と」


疑問が確信に変わっていく。これってもしかしなくても……。


「……つかぬ事をお伺いしますが、部長と沙雪先輩の関係って」


「うん? 付き合ってるよ」


や、ややややっぱり~~~!!!

んなサラッと言われると思わなかったから驚いたけど!! やっぱそういう関係だったのかよ!?

だから生徒会の報告した時、あんなに親し気に名前呼んでたのか!!


「特別言う必要も無いかなと思って。驚かせてごめん」


「秋人言葉足りなさすぎるって~! いおりん混乱しちゃってんじゃん」


目の前でバシンと部長の肩を軽く小突いた沙雪先輩。何だろう、付き合ってるって事実を知るとイチャイチャしてるようにしか見えないな……。

つーかこの空間、俺ただのお邪魔野郎じゃん!


「そうとは知らず、残っててすみませんでした! 私そろそろ帰ります!」


俺は慌てて鞄を引っ掴むと、頭を下げ「また来週、お願いします!」と言って出て行った。

本当はもう一つ言いたい事あったんだけど。まあ、まだ時間はあるし次回でも良いか……。


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