↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/47

33

卓上旅行研究部の部室に足を運んだ俺は、今日の議題である「沖縄旅行」についてのプレゼンを丁度終えたところだった。


「三味線作りとは中々渋いね」


「沖縄は何度も議題に上がっているかと思いまして……少しニッチな部分を攻めさせていただきました」


パチパチと拍手を送られ、俺は椅子に座り直した。この瞬間だけは、何故かいつも気恥ずかしい。


「沖縄は観光名所が固まってるし、一日遊び尽くせて楽しいよね!」


「そうですね。反対に行きたいところが多くて目移りしちゃいますけど」


初心者の俺に合わせて、最初のうちは観光しやすい都道府県を選んでくれていた。少しずつ慣れたら、今度は海外にも旅行する予定だ。あくまでも机の上で、だけど。


「食事はもっと冒険しても良いと思うよ、西原さん」


「坊城先輩的には何がオススメですか?」


「僕は無難にソーキそばが好きだよ。でも、折角沖縄に行くなら普段は食べないようなヤシガニとか……豆腐ようなんかも挑戦してみると良いかもしれないね」


アドバイスをくれる観点が皆違うので、会話がとても面白い。

坊城先輩は主にグルメについての意見が多いし、花ちゃん先輩は、大人数でワイワイ騒いで楽しめるような旅行が好きみたいだ。

……発表を聞いていて一番意外だったのが桐ケ谷部長。凄く驚いたけど、なんと部長はデートコースのプランが多かった。真面目そうな顔して……いやはや、ようやりますなあ。


「来週の旅行先は……そうだなぁ。昨日テレビで特集してた仙台なんてどう?」


「良いね! 仙台も楽しそう!」


「牛タン美味しいですよね~」 


どうやら来週の予定は仙台に決まったみたいだ。ふむ、仙台か。一度も行ったこと無いから、調べるのがとても楽しそう。

そうしてしばらくその話で盛り上がると、全員沖縄旅行の発表は終わっていたので、今度は机を囲んで雑談モードに入る。話題は勿論、今度の体育祭についてだ。


「そういえば、俺今年は3種目出場するんだ!」


「3種目も? それは凄いな」


「花ちゃん先輩運動神経良さそうですもんね」


「運動出来る人間は良いよな……俺はあんまり得意じゃないから、今から憂鬱だよ」


「西原さんは何の競技に出るの?」


「私は二人三脚に出場します」


俺は敢えて運動神経について触れなかった。理由は簡単、これ以上俺のせいで伊織の株を下げたくないからだ。


「二人三脚か~。良い線いくね」


「皆さんはどの競技に?」


「俺は騎馬戦。と言っても騎馬の方だけど」


「僕は綱引きに。本当はパン食い競争に出たかったんだけど、ジャンケンで負けちゃって」


人気だもんな、パン食い競争。にしても、体育祭ですら食べ物関係とは、何とも坊城先輩らしい。

部長は騎馬戦か。確かにそこそこ背丈もあるし、体格も悪くないから騎馬としてはかなり優秀だよな。


「俺はねぇ、騎馬戦の騎手と、借り物競争と……あとは仮装リレー!」


「……仮装リレー?」


そんな競技あったっけ?と思っていたら、坊城先輩が説明してくれた。


「アニメのキャラクターとか、着ぐるみだとかの仮装しながらリレーするんだよ。速さよりも、どれだけ盛り上げられるかが大事なんだ」


「そーそー! 俺今回ドレス着るんだよね、眠れる森の美女の!」


「……お前正気か? それ見て誰が得するんだよ」


へえ……そんな変わった志向の競技もあったんだ。種目決めの時は必死だったから、ちゃんと見れてなかった。

花ちゃん先輩は「面白ければ良いんだって」と言ってケラケラ笑ってる。そっか、この学園にもユーモアを取り入れようという気持ちはあったんだ。いや、お笑いじゃ無くて至極真面目だったら逆に凄いけど。


「にしても、今年の体育祭はどうなるかねえ」


「また理事長の息子君が大活躍だろうな。同じチームだったらラッキーだけど」


ここでも天逢坂の話題か。こんな噂になるってことは、毎年注目されてるんだろうなあ。

すると、時計をチラリと見た花ちゃん先輩が「あっ!」と目を見開いて、勢いよく立ち上がった。


「そういえば俺これから用事あるんだった! そろそろ帰るね!」


慌てて鞄を手に取る花ちゃん先輩を見て、部長が「ああ」と言った。


「それじゃ、今日はこれで終わりにしよう。俺は待ち合わせがあるからここに残るよ」


部長はそう言うと、机の上の地図を片付け始めた。

花ちゃん先輩に続くように、坊城先輩も立ち上がって鞄を持つ。


「僕もそろそろ帰ります。西原さん、送って行こうか?」


「……いえ、私もこの後友人と待ち合わせておりますので大丈夫です。わざわざ有難うございます」


そうお礼を告げると、花ちゃん先輩達はそれじゃあまた来週、と言って教室を出て行った。

2人を見届け、扉が最後まで閉まったのをよく確認する。……よし、ちゃんと2人とも帰ったな。


そうして俺は、部長へ勢いよく向き直った。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。