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中間テストが終わり、とりあえずひと段落したなんて思っていた矢先。
学園生活の一大イベントが俺を待ち構えていた。
「それでは、これから体育祭の種目決めを行いたいと思います」
体育委員のクラスメイトが2人、教壇に立って黒板に種目を書き出している。
6月といえば……そう。青春イベントの一つである、体育祭の季節だ。
「基本は立候補で決めたいと思っていますので、自分の出場したい種目があれば挙手でお願いします」
教壇に立つ男子生徒に告げられ、周囲と相談を始めるクラスメイト達。
……何だか皆楽しそうだな。チクショウ羨ましい。
そんなクラスメイトを他所に、俺はう~んと頭を捻る。
体育祭自体は全然嫌いじゃないんだけどなぁ……。
現実の体育祭では、一つでも出る種目を減らす為、教室で空気と化す努力をしていたくらいに運動が苦手な俺は手放しで喜ぶことが出来なかった。
足もそんなに速くないし、瞬発力もあまり無いから出れる競技って限られるんだよ……。
だが幸運な事に、この天逢学園はそこそこ生徒の数が多いので、運動の出来る生徒以外は基本的に一人一種目で良いそうだ。それは本当に有難い。
「はい、俺騎馬戦が良いです」
「私は借り物競争!」
そんな俺に構わず、クラスメイトはどんどん希望の競技に立候補していく。やばい、出遅れた。このままだと不人気種目に宛がわれてしまう!
黒板に書きだされている種目に急いで目を向ける。俺でも出れそうな競技は……あっ、これだ!
「はい! 私は二人三脚でお願いします」
大きく手を上げると、書記をしている女子生徒が「西原さんは二人三脚ですね」と黒板に名前を書き込んでくれた。
……良かった。
二人三脚なら多少足が遅くても問題無いだろう。大事なのはペアを組んだ相手との掛け合いだし。
それに、個人プレイじゃない方が安心だ。
ホッとして手を下げると、今度は隣の席の鷹司が「はい」と手を上げた。
「私は玉入れに出場しますわ」
フフンと何故か誇らしげに言い放った。すると、教室中から次々におお~と声が漏れる。いや、おお~ってなんだよ。おかしいだろ。
にしても、鷹司が玉入れとはちょっと意外だ。というか玉入れが意外なんじゃなくて、競技に参加する意思があったって事が驚きなんだけどね。
黒板に鷹司響の名前が書かれると、取り巻きの子が瞬時に「響様と同じで!」と勢いよく立ち上がる。やっぱりそこも一緒が良いのね。
全ての競技に生徒の名前が埋まると、種目ごとに確認をするとかで、席を移動させられた。俺が選んだ二人三脚も、男子生徒のペアと、俺と結城さんという女子生徒ペアが出る事になった。
伊織と同じくらいの背丈なので、競技に出るには丁度良さそう。
「西原さん、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
物静かな印象の結城さんは、俺と同じく朝はいつも読書をしているような女の子。おっとりしていて、お金持ち学校の模範のような生徒だ。
「私、あまりスポーツが得意でなくて……もし足を引っ張ってしまったらごめんなさいね」
「えっ。結城さんもですか? 実は私もなんです……」
伊織が苦手かは分からないけど、俺はスポーツ苦手だから嘘は言ってないよな。
「まあ、そうですか。ではお互い、怪我をしない程度に頑張りましょう」
結城さんの意見に全面同意だ。思い出作りとして、無理のないように頑張るくらいで良いと思う。
それに、ほら。
ゲームをしている時から思ってたけど、体育祭といえば物凄い注目を浴びる人物が一人いるじゃないですか。
「それにしても、今年の天逢坂はどの競技で来るんだろうな」
「去年は高等部相手に、お構いなしだったからなあ」
男子生徒間のヒソヒソ話に、まさしく今思い浮かべてた人物の名前が。そう。例のあいつですよ、あいつ。
学年代表リレーのアンカーを、三年の先輩方を差し置いて務めた挙句、さらに一位でゴールするというとんでもないイベントスチルの男。それが天逢坂昴。
もはやあいつの居るクラスに勝とうだなんて到底思えない。勝負を挑もうだなんて無謀すぎる。あいつ一人で一体何種目競技出るんだよってくらい、ゲームでは大活躍だった。
というか、どれだけ神に愛されてんだって話ですよ。この学園の理事長の息子で、その上勉強も出来て、さらにスポーツまで出来るとか。
それに加えて、顔良し、スタイル良しだ。天から二物も三物も与えられすぎて、もはや飽和状態。いや、もしかすると既に限界突破かも。
話を盗み聞きするに、中等部の頃から年齢上下関係無く本気で相手を負かしていたようだ。何て奴。ちょっとくらい年上を立てろっつの。
「西原さん? どうしましたか?」
「え、あっ、いえ。何でもありません」
心の中で悪態を吐きまくっていたので、結城さんの話が耳に届かなかった。いけないいけない。
……まあ、とりあえず俺は俺で精一杯頑張ろう。




