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あの事件が起こってから一週間が過ぎた。現在俺達は雫ちゃんの席で昼食を取っている。選抜の発表が昨日の部活でされたらしく、結果を教えてくれた。


「合格ですか?! おめでとうございます!」


「有難う、本当に良かったよ~!」


雫ちゃんは無事選抜に選ばれたようだ。一時はどうなるかと思ったけど、これで安心だ。


「伊織ちゃんが応援してくれたおかげだよ!」


「そんな、雫さんが頑張ったからですよ」


嬉しさを隠し切れないのか、雫ちゃんがふにゃりと笑う。その笑顔を見て俺も自然と笑みが零れた。


「今以上に練習しないといけませんね」


「うん、発表会に向けて頑張らなくっちゃ」


おお、やる気満々だ。

だけど、発表会よりも先に気にしなきゃいけないことがある。


「そういえば伊織ちゃん。中間テストの勉強進んでる?」


ギクッ。

そう、丁度今それを考えていたところですよ、ええ。


「それなり、といった所でしょうか……雫さんはどうですか?」


「えへへ……私はあんまり」


自信なさげに眉を下げる。いつも遅くまで部活してるもんなあ。むしろ勉強する時間あるのかな?


「あ、でもね。明日から昴が勉強見てくれることになってるんだ」


「天逢坂さんが?」


「うん。中学の時からテスト前はいつも一緒に勉強してるの」


そういえばそんな描写ゲームでもあった気がする。やっぱり天逢坂はめちゃくちゃ頭良いんだろうな。


「天逢坂さんに教わるなら安心ですね」


「スパルタだからちょっと不安だけど……あ、そうだ! もし伊織ちゃんが良ければ、一緒に勉強会する? 口は悪いけど、昴の教え方凄く上手だよ!」


「えっ」


思いがけない提案に、思わず目を丸くする。いやいや、冗談じゃない。雫ちゃんと2人ならまだしも、天逢坂と一緒に勉強なんてしたら、死ぬほど馬鹿にされるのが目に見えてる。

それに、俺には最強の味方である桐ケ谷部長が付いてますから!


「気持ちは嬉しいのですが、門限が厳しくて……」


「……そっかぁ、そうだよね」


落ち込ませてしまった。うう、良心が痛む。でも、いくら雫ちゃんのお願いでもそれだけは無理!

そこで俺はあっ、と思い出す。


「……その代わりと言ってはなんですが。中間テストが終わって落ち着いたら、休みの日にどこかへ出掛けませんか?」


「えっ……それは遊びにってこと?」


「はい。買い物でも遊園地でも映画でも。雫さんと遊びに行きたいのですが……ダメですか?」


この間の帰り道に考えていた事を伝えてみた。もし断られたらどうしようと、少し不安だったけど。


「良いの?! 私も伊織ちゃんと一緒に遊びたいと思ってたから凄く嬉しい!」


「良かった。それじゃあ、今度計画を立てましょうか」


そんな俺を他所に、雫ちゃんも快く賛成してくれた。良かった、これでテスト後の楽しみが一つ出来た!


雫ちゃんとの遊びの為に、俺も一生懸命勉強しなくちゃな……。











「(ウソだろ、おい……)」


中間テストの結果が掲示板に貼りだされる。ザワザワと生徒達が集まる中、俺は呆然と立ち尽くしていた。


「(1位は勿論天逢坂。それは分かり切っていたけど……まさか)」


まさか。西原伊織の名前が……なんと4位に!!!!


「(うおおおお!10位どころか5位以内に入ってんじゃねえか!)」


思わずグッと手に力が籠る。嬉しい、嬉しすぎる!

確かにテスト中かなり手応えはあった。部長から教わった要点がことごとく的中していたし、毎日解いていたプリントの問題がほぼそのまま出題されていたから。

だけど、まさか。まさか4位を取れるなんて!


喜びを噛みしめていると、遠くから名前を呼ばれる。


「伊織ちゃん!」


人混みの中から小さい体をひょこっと出した雫ちゃん。大きく手を上げてこちらへヒラヒラと振っていた。その後ろには腕を組んだ天逢坂がこちらを見ている。

ゲッ、何であいつまで……と思ったが、とりあえず雫ちゃんの方へ向かう。


「雫さん」


「伊織ちゃん凄いよ! 4位だって!」


興奮気味に言う雫ちゃん。俺も心の中では同じ気持ちだけど、表に出すわけにはいかないので大人しく微笑みを浮かべた。


「やっぱり流石だね。外部生で10位以内なの伊織ちゃんくらいだよ」


「そんな…でも、嬉しいです」


口元に手を当ててお上品にうふふと微笑むと、こちらを見ていた天逢坂がフッと笑った。


「ま、生徒会に選ばれたんだから当然だな。むしろ俺の次でも良いくらいだが」


「昴!」


「良いんです、雫さん。天逢坂さんの言う事は尤もですから」


そう、天逢坂の言い分は何も間違ってない。

生徒会に選ばれたのだから、成績上位であるのは当然の事。実際、俺は4位でも十分凄いと思うけど本物の伊織がテストを受けていたらどうだっただろう。2位だったかもしれないし、もはや天逢坂より上だった可能性もある。

慢心してはいけない。伊織のメンツを保つ為にも、俺はさらに上を目指さなければ。

俺は天逢坂に向き直ると目を合わせた。


「次は、必ず」


「……ッハ、」


カーンッ!とゴングが鳴りそうな程、俺と天逢坂の間でバチバチと火花が散った。

雫ちゃんはオロオロして、俺達の顔を交互に見ている。

今はそうやって余裕ぶっこいてろ、天逢坂。次の試験ではアッと言わせてやるからな。



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