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生徒会室に呼ばれた日の放課後、俺は部長から勉強を教わっていた。
「えっ、生徒会に選ばれたの? それは凄いね」
「はい、何故か成り行きで……」
部長が俺の為に作ってくれたプリントに目を通す。
生徒会に選ばれたのに、何で勉強教わってんだ?なんて野暮な質問をしない部長、流石です。
「それで、初の生徒会はどうだった?」
「……は、はははは」
「何なの、その意味深な笑いは」
言葉を濁す俺に先輩が思わず突っ込む。
いや、もう本当に…あの後は凄く大変だったんです。
まず、ハトリ先輩とユズキ先輩に何故か懐かれてしまった俺と天逢坂は、ひたすら2人に質問攻めにあった。
どこに住んでるとか、何が趣味だとか、嫌いな食べ物は何かとか。伊織をまだ知り尽くしていない俺は、変に答えない方が良いかと思って曖昧に返事をしていたが、今度はそこに、沙雪先輩や生徒会長まで参戦してきて……。
結局チャイムが鳴るまで解放されず、ドッとやつれた俺と天逢坂は何故か奇妙なアイコンタクトを交わしてしまった。
あんなに顔が死んでる天逢坂は初めて見た。
そして教室に戻った途端、今度は鷹司軍団の皆様から思い切り睨まれた。仕方ない、なんたってあの憎き外部生が初めて生徒会委員に選ばれてしまったのだから。
嫉妬なのか嫌悪なのかは分からないが、様々な思いの混ざりあった視線が、痛いほど全身に突き刺さる。
鷹司の周囲から話が広がり始め、最終的にクラス中の生徒から注目を浴びてしまい、俺は居た堪れない気持ちになった。やがて、蛇に睨まれた蛙のごとく席からほとんど動けなくなって……。
そんなこんなあって一日でドッと疲れてしまった俺は、やっとの思いでこの放課後を迎えたという訳だ。
「嬉しい……って顔してないね」
「いや、はは……」
生徒会の面々は、皆個性は強いけど悪い人達ではない、と思う。ただ、今後を考えると頭と胃が痛いってだけで。
「私、この部室が一番安心します」
「奇遇だね、俺も」
フッと部長が笑う。ここのメンバーは個性が強すぎないから、俺のペースに合うんだよな。
学園内で心落ち着く、唯一の休憩所みたいなものだ。
「沙雪にも逢った?」
「はい、逢いましたよ。とっても美人で……それに元気一杯な方でした」
「そっか」
どうしても名前で呼んでほしいと言われたので、今は沙雪先輩とお呼びしている。返答を聞いた部長が柔らかく微笑んだ。
呼び捨てするとは、もしかして沙雪先輩と結構仲良し? あれだけフレンドリーな人だから、あり得るかもしれない。
「沙雪も、春樹君も凄く頭が良くて優秀だから、色々学べると良いね」
「はい……あ。でも、三年生で一番成績が良いのは部長なんですよね?」
「勿論だよ」
じゃなきゃ特待生やってられないしね、と笑う部長。おおお、部長がかっこよすぎる!!
どのゲームでも漫画でも、秀才キャラって結構好きなんだよな。この余裕ある感じとか堪らん。
「さ、お喋りはこのくらいにして、そろそろ勉強に入ろうか。プリントに要点を纏めて置いたから、そこから勉強していこう」
「はい、お願いします!」
放課後の勉強を終え自宅に着くと、玄関で楓が待っていた。
「楓さん? た、ただいま帰りました」
「……お帰りなさい、姉さん」
明らかに不機嫌な表情を浮かべている。初めて見るな、こんな楓の顔。
「どうしました? 楓さん。何かあったのですか?」
答えないまま俺の顔をしばらく見つめると、ピリついた雰囲気を少しだけ和らげた。眉を下げ、小さい声で呟く。
「……姉さんは何も悪くないのに」
「え?」
「何でもありません。今日の夕食は姉さんの好きなミートパイだそうですよ。早く行きましょう」
俺を待っていたんだろうに、今度はくるっとターンしてリビングへ引っ込んでしまった。
楓が情緒不安定っぽい。不機嫌だったり、しゅんと落ち込んだり。
何かあったのかもしれないし、今度それとなく聞いてみよう。
お風呂を済ませ、寝る前に部長から渡されたプリントを解く。一週間分あるから、毎日一枚でも二枚でも解いてみて、と言われたものだ。
部長の教え方は、どの先生よりも遥かに上手だった。大事な要点を的確に纏めていて、かなり昔に習って忘れ去られた記憶達がずるずると引きずり出される。
段々俺の解くスピードが速くなってくると「あんなふうに頼み込んでくるから、どれくらいヤバイのかと思ったけど…悪くないと思うよ」と言ってもらえた。なんと部長は褒め上手でもあったのだ!
理数系も、特に問題なく復習が出来た。この調子であと一か月、頑張って10位以内を目指すぞ!




