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部活見学も無事終わり、俺は帰宅した。普通に下校しようとしたら、他の3人に「聡ん家の車で送ってもらうから、一緒に乗ってきなよ」と言われ、お言葉に甘えて家まで送り届けてもらった。

坊城先輩はかなりのボンボンであることは間違いない。専属運転手が校門の前で待ってるわ車の中は部屋くらい広いわで目玉が飛び出そうになった。


家では既に母親が夕食の準備をしていたので、手伝いを申し出る。「伊織さんは本当に食べるのが好きね」と言われたけど、もしかして伊織ってばかなりの食いしん坊キャラ?


メニューは昨日と打って変わってザ・洋食だった。

じゅわじゅわ肉汁が溢れ出るハンバーグに、じゃがいもがゴロゴロ入ったポテトサラダ、バターライス……おっと、ヨダレが出そう。


今日は父親も早くに帰ってきたので、一緒に食事が出来そうだ。因みに、詳しくは聞けなかったが父親の職業は貿易関係らしい。だから楓が経済新聞読んでたのね、納得。


19時近くになり、全員ダイニングへ集まった。席に着くと全員で手を合わせる。俺の前には父親が座っていて、隣には楓、その前に母親が座っている形だ。

いただきますと言った後、早速ハンバーグを頬張り舌鼓を打つ。ああ~、旨すぎてほっぺが落ちる~。



「昨日は遅くなってしまって、きちんと話が聞けなかったね。それで、新しい学園はどう? 伊織」


ゆったりと食事を始めると、父親が俺に問いかけた。


「クラスメイトも皆さん親切にして下さって、凄く楽しいです」


「そう、それは良かった」


優しい微笑みを俺に向ける父親。まあ、99.9パーセントくらい話盛ってるんだけどね。そもそも親切にされる程会話も出来て無いし。

そんな話をしていると、あっと母親が声を上げた。


「そうそう。私、保護者説明会でとっても褒められたのよ! 伊織さん、外部入試の結果が1番だったみたい」


そう父親に説明する母親。

なぬ?! 伊織ってそんな頭良いの?!


「そうだったのかい? 流石だね、伊織。楓も学年成績毎回3位以内だし、2人とも優秀だ」


「姉さん程じゃありません」


楓が褒められて嬉しそうにしている。



ぎええ、プレッシャーが凄い。そうだよな、そもそも外部から入試受けるくらいだもん、そこそこ頭が良くなきゃ入れないはずだ。雫ちゃんだって、入試の前日まで必死に勉強したって言ってたし。

ってことは、あの部長ってとんでもない秀才?特待生なんてもはやレベルが違うんじゃ……



「勉強の事はあまり心配してないよ。それより、新しい環境で何か不便とか不都合があればすぐに言いなさい。出来る限りサポートはするから」



いえ、俺としては勉強が一番心配です。



「姉さんは昔から友達も多いですし、天逢学園にもすぐに慣れますよ、きっと」


もう友達も出来たみたいですし、ね?と楓に言われてしまった。勿論、雫ちゃんや桜子ちゃんは友達カウントしていいだろうけど……それより各方面から目を付けられてしまっている現状の方がマズイ。


「そ、うですね…心配ありません」


虚勢を張ってしまった。心配させるより良いかなと思って……。

そう言った俺に対して父親は


「そうかい、それは良かった。自分のやりたい事はきちんとやっておくんだよ。勉強でもスポーツでも遊びでも。きっとそれは、将来役に立つからね」

と言ってポン、と頭に手を置いた。





……うん、やっぱり恥ずかしいんだけど……同時に凄く安心する。

母親もそんな俺達を見て優しく微笑んでいた。

……少し、ほんの少しだけ……本当の西原伊織が羨ましく思えた。


「今も将来も、伊織のものなんだから。時間は大切に使うことだよ」

そう言って父親は食事を続けた。


俺、やっぱりこの人が憧れだ。








食事を終え、片付けを手伝った後リビングへ向かう。父親は書斎で仕事をするみたいで、すぐに居なくなってしまった。

リビングでは楓が机に向かって何かを書いている最中だ。


「楓さん、何を書いているんですか?」


「学校の挨拶運動の記録です。僕、風紀委員なので」


そう言われて、今朝方楓が早くに飛び出してった事を思い出す。



「風紀委員や生徒会は、成績上位の人間しかなれないんです。僕は自分から志望した訳じゃなくて、入学時勝手に決められてました」


と少しだけ嫌味っぽく話す楓。

話を要約すると、つまり初等部入学時の試験で成績上位だった者が、生徒会や風紀委員に抜擢されるって事?

そんな幼稚園児に毛が生えたくらいの年齢で何が分かるのか甚だ疑問ではあるが。

中等部と高等部に関しては、進級の際の試験結果で選出されていくらしい。


「初等部入学時、筆記試験の他に面接があったんです。成績優秀者の中でも、風紀に向いてるか、生徒会に向いてるかはその面接で決められるそうですよ」


ふーん、成程。楓は風紀委員に向いてるって判断されたわけか。

確かに、4年生とは思えないぐらいしっかりしてるもんな。


「あ、でも安心して下さい。外部入学からは基本的に選ばれませんから」


「そうなんですか……それはまたどうして?」


「さあ、よく分からない学園のこだわりでもあるんじゃないですか?」


楓は少しだけ怒っているように見えた。あー、外部生はあまり良い顔されないもんな。学園内でカースト的なものが横行してるわけね。見えないところで。

つっても、委員会なんて面倒だし、全然気にしないよ俺は! むしろ放課後とか朝とかゆっくり出来るからモーマンタイ!


「それなら仕方ありませんね、残念ですけど」


少しも残念じゃないが、建前として一応言っておく。

委員会か……俺は保健委員とかが良いな、楽しそうだし。


「姉さんに生徒会なんて入ってもらいたくないので、僕は凄く喜ばしいですけどね」


そう言うと楓は、トントンと資料を丁寧に揃えホチキスで留めた後「お風呂へ行ってきます」と言って出て行ってしまった。


んん?何で生徒会に入って欲しくないの?ていうか楓は何をそんなに怒ってるんだ?

俺は頭にハテナを浮かべたまま、その後ろ姿を見送った。

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