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何で天逢坂が俺の名前知ってるんだ?雫ちゃんから聞いた?


いや、何でも良いけどこの人どうして怒ってんの?しかも、どう見ても俺にキレてるよね?!

額に薄ら青筋を浮かべた天逢坂と思い切り目が合う。






「俺を忘れて、2人仲良く帰るとはなぁ」





タンッタンとリズム良く地面に足を叩きつける天逢坂。

……もしかしなくても、昨日置いて帰ったことめちゃくちゃ根に持ってる感じ?

すみません、あれって俺が悪かったんでしょうか?



思い切り見下ろされた俺は蛇に睨まれた蛙のごとく動けなくなってしまった。ひぇえ、美形の怒った顔怖いよぉ……。

因みに、さっきから俺は卵焼きに手を伸ばしたまま固まっている。そんな姿を見て天逢坂は「ん?」と呟き、すぐに合点がいったのか「ああ」と何かに納得した。……何だろう、そこはかとなく嫌な予感がするのは気のせいか?




雫ちゃんは慌てて「昨日も説明したけど、忘れてたのは私だってば! 伊織ちゃんは何も悪くないの!」と言ってくれているが、多分天逢坂には聞こえてない。だって、今も俺の顔見て笑ってるから。目だけはずっと笑ってないけど。


いや、俺も確かに忘れてたけどさ、雫ちゃん家知ってるんだから帰ってから行けば良いだけの話じゃん。そんなに怒るような事じゃないよね…


そう思って身構えていた次の瞬間。






天逢坂は、ひょいと卵焼きを摘まみ上げるとそのまま口に放り込んだのだった。






……!?










ぎ、

ぎゃあああああああああ!?



こ、ここここっ、こいつ、折角俺が貰った雫ちゃん特製の卵焼きを


あ、あ、あろうことか目の前で食いやがったあああ!!



思い切り前のめりになって、先程まで卵焼きの乗っていた蓋を見つめる。

俺は信じられない半分、あまりのショック半分で「あ、あ」という言語しか話せなくなってしまった。壊れかけのロボットみたいに。

雫ちゃんも信じられないという顔で天逢坂を見ている。



「何してるの!?」


「は? お前の作ったものだろう。食べて何が悪い」




天逢坂はすっとぼけた顔でしらばっくれていたが俺には分かる。

こいつ絶対悪意の塊だよ!悪魔だよ!







「い、伊織ちゃんごめんね、卵焼き好きだって言ってたのに……あ、そうだ! あの、違うおかず交換しよ! ね?」


「………………いえ、良いんです。それじゃあ雫さんの食べるものが無くなってしまいますから……」



下唇を血が出そうな程噛みしめ、今にも爆発しそうなのを我慢して言う。本当はちっとも良くないけど、俺が我儘を言ったって雫ちゃんが困るだけだ。


多分雫ちゃんは、俺が卵焼きを好きだからこんなにショックを受けてると思っているだろうけど!違うよ、雫ちゃんの手作りだから食いたかったんだよ、俺は!




天逢坂はしてやったりという顔で笑っていた。

こんのクソガキャ……こっちが大人しくしてればいい気になりやがって!いつかお前をギャフンと言わせてやるからな…!

そのままスッキリとした顔で「邪魔したな」と言って笑いながら去って行った。本当に邪魔だよ、もう二度と俺の前に現れないでください!!



雫ちゃんは本気で悲しそうな顔でごめんね、と呟いた。

君は何も悪くないよ~、悪いのはあのジャイ〇ンみたいな男だよ~!

俺は雫ちゃんを悲しませたり、困らせたりしたい訳じゃない。ここは大人の対応だ!うん。




「卵焼きが食べれなかったのはとっても残念ですが、ランチは明日もありますから…また、おかず交換して下さいますか?」


そう、物悲しげにほほ笑むと、雫ちゃんはパアッと顔を上げて「勿論だよ!明日はもっと美味しいの作ってくるね!」と頷いてくれた。どうだ、さっきは少し取り乱したが俺には大人の余裕ってやつがある!ここはそれで場を収めようじゃないか。


雫ちゃんは「伊織ちゃんって、本当に大人で凄いなぁ。尊敬しちゃう」と言った。ふふ、そうだろうそうだろう。

どうだ、天逢坂。お前はせいぜいそうやって子供みたいな事をしているが良いさ!はーはっはっは。

と、既に居なくなった天逢坂に心の中で悪態を吐いたのだった。

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